キングとペンギン-7-
ゴドウィンの報告によれば最近巷では、ペンギンを飼うのが密かなブームらしい。
その火付け役となったのが俺と『遊星』らしい。
もっとも多く飼われているのが小型のペンギンらしい。
小型のペンギンでもフェアリーペンギンが人気らしいくイワトビペンギンは、攻撃的な性格が災いしてか余り
飼われていないらしいが俺の熱烈なファンは、飼っているらしい。
しかも飼われている理由が
「ジャックの様に荒々しい所が素的なのよ〜vvvv」
が多く。これは、男女問わずらしい。
「ジャックが飼っているから」
とか
「イワトビペンギンの別名が『ジャンピング・ジャック』って言うんだろう?なんかジャックが傍に居るような気が
するんだよなぁ」
らしい。
俺が『遊星』と一緒に住んでいる理由なんど一般市民には、御凡そ解る筈も無い。
瞳の色こそ違えぞ髪の毛の跳ね具合。
所々にあしらわれた黄色のライン。
強気な所。
クールそうに見えて攻撃的(熱い)な所。
何処をとってもサテライトに残して来た我が愛しき不動遊星を思い出させる。
もしココに遊星が居たなら両手に花状態だろう。
・・・が惜しい事に不動遊星は、この俺の誘いを断って今尚サテライトに住んでいる。
早く一緒に住みたいのに。
「遊星 俺の元に来い。お前しか俺を満たせるヤツなど居ないのだからな。」
自分の名前を呼ばれたと勘違いしたのか『遊星』がペタペタと歩いて来る。
「アーラ アーラ」
羽をばたつかせる『遊星』に
「別にお前を呼んだワケでは、無いのだがな。」
苦笑してしまう。
「お前は、俺が呼んだら来るのにアイツは、俺が呼んでも来ない。お前の様に来てくれたらどんなに嬉しい
か・・・」
『遊星』は、小首を傾げながらジャックの方を見る。
『遊星』は、ジャックの心を満たす事が出来ても躰を満たす事が出来ない。
サテライトに居る遊星は、ジャックの心も躰も満たしてくれる。
「お前がアイツだったら・・・」
ふと口を吐いて出た言葉。
ジャックの本心なのだろう。
だがジャックの言葉を理解していない『遊星』は、ジャックの顔を見ているだけ。
そんな『遊星』が可愛くて愛おしくて遊星以外見せた事の無い優しい笑みを浮かべながら
「やはりお前は、アイツと似ているな。」
頭を撫でてやると気持ち良さそうに目を細めている。
(ああ・・・昔アイツもこんな表情をしていたな・・・)
遊星と一緒に住んでいた頃の事を思い出す。
「アイツがココに居たら俺は、更に良いのにな・・・。」
遊星を『遊星』に重ねる。
重ねた所で遊星と『遊星』では、全く異なるというのに。
改めて自分中にある【女々しさ】を実感してしまった。
だがこの【女々しさ】を決して恥ずかしいモノだと思っていない。
自分が女々しくなる時は、決まって遊星絡みの感情から来るからキングでありエンターテイナーである時の
自分とは、異なるのだ。
少しジャックが悲しそうなイヤ寂しいと言うべきなのか・・・そんな目をしたので何かを感じたのか『遊星』は、
小首を傾げジャックの方を見た。
まるで何かを訴える様な感じで・・・。
「お前に心配されたのでは、俺もまだまだだな。『遊星』案ずるな俺は、キング・ジャック・アトラスだ。
お前が心配する程落ちぶれた男では、無い。」
そう言いながら『遊星』の頭を撫で「もう寝るか」と言いながら『遊星』を抱えベッドへ。
(今夜は、お前の夢を見そうだな・・・イヤ 夢に出て来い遊星。)
お前は、夢の中でしか逢えないのだから・・・。