気持ち


クリティウスが風邪を引いたらしく寄宿舎の自室に今まで
篭っていたがなかなか完治しないので自宅療養をする事
になった
通常 騎士は城に何かあった時の為に城内に設けられた
寄宿舎に住む事になっている
大体2〜3人で一部屋なのだが上級騎士になると一人一部屋
が割当られる
クリティウスもティマイオスもヘルモスも上級騎士なのでそれぞれ
私室が与えられていた。
今まで公私にわたって色んな話しをした仲なのにクリティウスは
自宅に戻って療養しないとイケないぐらい悪いのならのら一言言っ
て欲しかった。 
オレに出来る範囲で身の回りの世話するのに  
もしかしてオレには風邪と偽って発情期に入り女と・・・そう思うと
胸が急に痛くなり心臓が締め付けられる程苦しくなって来た。 
今尚発情期を経験した事の無いティマイオスだって発情期がどんな
に大切なモノかは知っている 

(子孫を残さないとイケないもんな)

発情期だと言う妄想だけで杞憂するティマイオス
それでも親友の顔を一目見ておきたくて自分の用事をヘルモスに
頼んで来たのだ 
クリティウスの自宅は街から少し離れた所にある貴族が時折使う別荘 
彼自身は貴族の家の者・・・(まぁオレも一応 貴族なんだが・・・)
しかも彼の家は代々王家に妃候補を出す程の名家であり実際 妃を出している
それ故王家とは親類関係にあるのだ
妃候補を出した事の無いオレの家系とは、豪い違いだ
そんな彼の自宅の呼び鈴を恐る恐る鳴らす
その間も女の人が出て来たらと思うと気が気で無い
暫くすると開けられる扉

頼む!!出てくるのがクリティウスであってくれ!!

祈る様な思い
開けられた扉から姿を現したのは憮然とした表情のクリティウス
「あっ!」
思わず声を出すと
「!!」
驚いた様な表情をするクリティウス
「ティマ・・・どうして?」

どうしてティマがここに・・・?

胸を駆け巡る疑問・・・
その答えを貰う前に
「中に入っていい・・・?」
段々小さくなるティマイオスの声
まるで何かに遠慮でもしているかのように
「ああ・・・」

何に遠慮しているのだ?

「お前 1人なのか?世話をする者は居ないのか?」
「ああ 元々ここには、俺が休みの時以外使わないからな」
安心した様な顔に変わるティマイオスに自然と笑みを浮かべてしまう
「それでどうしたんだ?」
「えっああ・・・クリティウスが風邪を引いて自宅療養してるって聞いたから・・・
あの・・・見舞いに来たんだ」
手に持っている袋を見せながら

見舞いだと!!ティマが・・・俺の為に!!

胸が高鳴る・・・
実際クリティウスは、風邪では無いのだ
ティマイオスが妄想していた通りクリティウスは、発情期に入っているのだ
「なぁキッチンを借りていいか?」
「ああ・・・!キッチンで何する気だ!?」
「何って?リンゴを剥くだけだぜ?」
心配そうな顔をしているクリティウスに
「いくら不器用なオレだったリンゴの皮むきぐらい出来るぜ
お前は、病人なんだから休んで居ろよ」
そう言うとキッチンに姿を消した。
もしティマイオスが怪我をしたらと思うとキッチンから出てくるまで気が気でない
しかし言う事を聴いておかないと折角自分の為に見舞いに来てくれたティマイオスの
機嫌を損ねてしまう
一応 自室に戻りベッド脇に腰を掛けてティマイオスを待つ事にした。

くそ〜この状況では、余計な妄想に駆られてしまうではないか
あのまま寄宿舎に居たら俺はきっとティマを襲い泣かせてしまうかもしれない
そう思って自宅に戻ったのに・・・
まさかそれが原因でティマと2人きりになる時間が出来てしまうとは・・・

苦悩するクリティウス
コンコン・・・
「クリティウス リンゴが剥けたぜ」
リンゴを乗せた皿を持ってティマが入ってくる
ベッド脇のサイドボードの上にリンゴを乗せた皿を置く
クリティウスは、皿の上に乗っているウサギの形に切られたリンゴに釘付けになる
「ティマ・・・これは?」
「ウサギの形に切ったリンゴだぜ」
たっ確かに見た目は、ウサギだがウサギの形に切ると言うのは耳の部分がリンゴの皮
の筈 そして胴体がリンゴの実の部分の筈
しかし目の前にあるのは、ウサギに彫刻されたリンゴであって・・・
しかも芸術的な出来栄え・・・
ある意味 器用なのでは、ないだろうか
なかなかリンゴを食べようとしないクリティウスを
「なぁ・・・食べないのか?」
促すとゆっくりとだがクリティウスがリンゴを食べだした。
「美味しい・・・」
その一言に満面の笑顔
「そのリンゴ オレが苗木から育てたんだぜ」
ティマは、内緒でリンゴの木を1本 森の奥で育てているつもりだった様だが
クリティウスは、知っていたのだ。
しかもそのリンゴを他人に触られたくないらしくティマは森に住む妖精や精霊に守らせていた。
一切の世話は自分でやりながら
そのリンゴを俺の為に持って来てくれたのか・・・
「オレが育てたリンゴを最初に食べたのがクリティウスなんだぜ」
俺が1番なのか!
紫の瞳が驚きに見開く
そんなクリティウスを更なる驚きが
「ん・・・」
柔らかい感触が唇に触れる

睫毛が触れるかどうかの距離にティマの顔
しかも舌を差し込んでくる

まさか!!

そう思うと急に離れる
「テッ・・・ティマ」
「あっ・・・か・・・風邪って人に移すと治るって言うじゃないか・・・だから・・・オレに移ればって
思っただけなんだぜ」
慌てて弁解するティマイオス
「一緒に居ても同じなんじゃ?」
「えっ・・・」
(そう言えば確かに・・・風邪を引いたからってキスなんてしないよな)
オロオロと考え出すティマを見て思わず笑みを浮かべる

おおかたヘルモスから「キスをすれば早く治る」とでも吹き込まれたのだろう
それを真に受けてキスをして来たってところか・・・

「お・・・オレ・・・キスするの初めてだったのに・・・」
と呟くティマ
その顔は、紅潮しオロオロしている
「初めてだったのか・・・?」
これでは、手が出せないでは無いか
きっとティマは、自分の気持ちに気がついていないのだろう
だったら時間をかけて自分の方に振り向かせよう


これは、元々「裏」にアップする作品だったのですがエロくないので表に・・・



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