「ふぅ〜んんん・・・・」
包まっているシーツから何とかして顔を
出してみると何だかヒンヤリしている
数時間前までは、熱かった部屋なのに・・・
数時間前迄の出来事を思い起こすと顔から
火が出そうになる
それにしても重い・・・
自分を抱き締める引き締まった腕
自分とて鍛えているからそれなりに筋肉が着いて
いるけど・・・
比べてみて愕然とする
そんな男の顔を見て
綺麗な顔だよな
女の人が寄って来るのも頷ける
女に不自由をしない筈のこの男が何故自分を選ん
だのかが疑問だ
「・・・ティマ・・・何をしているんだ?」
薄っすらと目を開けるクリティウスに
「なっ何でも無い・・・」
と答えるしかなかった
まさか見蕩れていた何て言えない
そんな事を言おうものならどんな目に遭うか
判ったもんじゃない
クリティウスは、ティマイオスを今一度自分の方に
抱き寄せてその温もりを確認する
「なぁ・・・今日って何日なんだ?」
「・・・ん・・・今日は12月24日だけど?それが・・・」
「マスター達何してるんだろうな・・・」
何か嫌な予感がする
「ティマ・・・まさかマスター達に逢いたいなどと言うのでは
ないだろうな?」
「言わない だって今日は、マスター達にとって大事な日
だと思うから」
「大事な日?」
クリティウスは、クリスマスの事は知らない
ティマイオスは時折 海馬や遊戯の元を訪れるので
クリスマスの事を教えて貰ったのだが
相変わらずぶっきら棒に答える海馬にティマイオスは、
クリティウスを重ねて見ている事がある
海馬にしてみれば折角の遊戯との時間を邪魔され
たくは無い
だが遊戯と同じ顔のティマイオスを邪険に扱う事も出来ず
また遊戯とティマイオスのツーショットは、目の保養にも
なるので内心喜んでいたのだった。
「今日って雪降るかなぁ・・・」
「雪なら午後から降るらしいが」
何を企んでいるんだ?
「俺は、午後から用事があって出かける
ティマは、どうするつもりなんだ?」
「オレは、用事とか無いからココに居る・・・」
益々何がしたいのか判らないクリティウスだった。
午後になりクリティウスは、出かける準備をしだしたが
ティマイオスは、バルコニーに出て天を仰いでいる
「空を見ていても雲ばっかりで何も無いだろう?」
「クリティウスは、何時ごろ帰ってくるんだ?」
「判らない・・・ティマ風邪を引くといけないから中に
入っていろ」
「うん」
「じゃ行って来る・・・」
24日と25日は、ティマイオスのたっての希望でクリティウス
は、休暇を取ったがそれでも外せない用事があったので
出かけた。
「ふぅ〜寒い・・・クリティウスが帰って来る頃には雪が降ると
いいなぁ・・・」
マスターに教えて貰った『おまじない』・・・
迷信だと判っていてもヤッテみたい
クリティウスは気が気で無かった。
早く帰らないとイケない
そう心が警笛を鳴らす
その心が午後からの用事を手早く片付けさせ
予定していた時間より早く終わらせる事になった
「クリティウス様この後何か御予定でも御座いますの?」
髪の長い女性が尋ねてくると
「スミマセン大切な人との約束が・・・」
約束なんてしていない
ただ「帰ってくる」と言う事以外
それなのにクリティウスは、嘘を吐いてまで早く帰りたかった。
「仕方がありませんわね
こんどその大切な方を紹介して下さいね」
女性は、残念そうな顔をしつつもクリティウスを見送る
早く帰らなければ・・・
今にも降りそうな天候にクリティウスは、急いで帰った。
「ティマ・・・?」
帰宅してみればティマイオスの姿が何処にも見当たらない
ベッドルームにも出かける前に居たバルコニーにも居無い
部屋中探したが見当たらない
「・・・・!!!!!!」
クリティウスの部屋から真正面の位置に見える塔・・・
この世界で一番高い塔のその天辺に舞い降りる
ドラゴンの姿・・・
見間違える筈が無い
美しいエメラルドグリーンのドラゴン・・・
ティマイオスの姿・・・
その姿が急に消えた。
どうやら人型になった様だ
クリティウスは、後を追い塔に向かった。
「ふぅ〜寒い・・・でもココなら」
きっと誰も先に雪に触れる事が出来るだろうから
「ティマこんな所で何をしているんだ?」
背後からの声に驚きながらも振り返ると急に抱き締められた。
冷たい・・・一体どれだけ外に居たのだろう
この冷たさは、ついさっきと言う様な冷たさではない
「雪が降るのを待っていた・・・
クリティウスが帰ってくる時に降ってくれたらどんなにいいだろう
って思いながら」
そう言って抱き締める腕を振り解き天を仰ぎ見る
空から何やら降り降りてくると尽かさず手を天に差し出し
それを受け止めるとクリティウスに差し出した。
クリティウスに差し出されたのは、雪の結晶
「クリティウスにプレゼントするぜ」
そう言われてもどうすればいいのか判らないクリティウスだったが
ティマイオスからのプレゼントを受け取らないワケにもいかず
直ぐに溶けて消えてしまう雪の結晶を受け取った。
「その年の最初に降った雪の結晶を誰よりも先に・・・
一番初めに受け止めたモノの願い事が叶うって言われてるんだ・・・
それに今夜はクリスマス・イヴって言って大切な人と大切な時間を
一緒に過ごすらしいぜ」
本当は、25日はイエス・キリストの誕生日らしいのだが
「だったらティマが・・・」
大切な人と大切な時間・・・
「その権利をクリティウスにあげるんだぜ」
オレはもう叶っているのだから・・・
こんな事をティマは、知らないきっとマスターの入れ知恵なんだろう
これで風邪を引かれたらマスター達の所為だ!!
と思いつつも もしこんな事でも無ければ俺は、大切なティマと
大切な時間を一緒に過ごせたのだろうか?
きっとティマを大切に思いつつも一緒に過ごす時間を当たり前の
様に過ごして居ただろう
大切な時間・・・2人の想いが通じ合った最初の頃は、1分1秒が
勿体無いと思っていた。
今でも変り無いと思って居たが何時しかそうでは、無くなっていたのかも
しれない
きっとあの頃の様な心に戻る事が大事なのかもな・・・
「ティマ 俺の願いを聞いてくれるか?」
「いいぜ」
「ずっと何があっても俺と共に生きていく事」
「・・・いいぜ・・・」
もしその年最初の雪の結晶を誰よりも先に受け止める事が出来たのなら
もし流れ星に願い事を3回言えたのなら
それは、きっと奇跡なんでしょうね