Geschenk
コンコン
「海馬入るぜ」
少し不機嫌な声で遊戯が社長室に入って来る
 
遊戯は冥界に一度は帰った身なれど前世での若すぎた死
今生においての使命まっとう
あまつさえ武藤遊戯や海馬兄弟に与えたプラス面での影響
その他諸々の事を考えると死者の理に束縛する
理由も無く彼がまっとう出来なかった生を今一度与え様と言う事になった。
まぁ陰ながらセトとマハードの尽力の賜物なのだが
 
「急に何の用なんだ?
用件は手短に頼むぜ 今進めているプロジェクトが最終段階に入って・・・」
「遊戯 何か欲しいモノは無いか?」
不機嫌な遊戯の言葉を遮ってこちらは超が着く程 機嫌のいい海馬 その顔には満面の笑み 
 
不気味だ 
 
と思いながら
「海馬!オレの話しを聞け!
それにお前のその機嫌の良さは正直不気味だ!」
等ととんでもない発言をする遊戯に対して怒る事もせず終始機嫌の良い海馬
遊戯は思わず後退りしたい心境で 
 
海馬の奴
毒でも食ったか何かに取り付かれたのか?
もしそうだとしたらモクバに言って医師か霊能力者を呼んでもらわないと!
 
遊戯がそう思うのも仕方が無い
遊戯が担当しているプロジェクトが予定より遅れていて昨日だって海馬と口論したのだ
「貴様がこの世界に戻り 俺の元で公私を共にするようになって
今日で一年になる」
海馬からの予想外な言葉
遊戯が現世に帰って来た1周年記念として何かプレゼントしたいと言うのだ
イベント事に疎い男がだ
それ程 海馬にとって遊戯が現世に戻り自分と共に未来を歩む
のが嬉しくて仕方が無いのだ
「はぁ〜・・・」
今の海馬に仕事の話しをしたって無意味だと判断した遊戯
「貴様が以前言ってたシルバーアクセサリもいいな」
待て海馬 最初そのシルバーアクセサリを見た時
お前何て言ったのか忘れたのか?
センスが悪いと言ったのだぞ!
「別に要らないぜ」
「そうか・・・在り来たりの既製品では貴様も嬉しくないのだな
だったら貴様だけのモノをオーダーしてやろう」
嬉しそうな海馬に申し訳ないと思うのだが
「オーダーメイドでも要らないぜ」
そっぽを向く遊戯
「だったら何がいいのだ?」
その言葉に遊戯はムス〜とした表情で机を挟む形で海馬の正面に立ち前かがみになりながら人差し指を海馬の額に当てながら
「このオツムは飾りなのか?
それとも仕事の時だけしか使えないモノなのか?」
「貴様 何が言いたい?」
蒼い瞳が細められ遊戯の方を見ると
「もし本当に海馬が何かくれると言うのならお前の心が篭ったモノがいいんだぜ」
「なら この俺が貴様の為だけにデザインした物をオーダーで作ら・・・」
ピシッ・・・
「貴様〜!!」
少し涙目になる海馬
「デコピン痛かったのか?
お前 オレが言ってる意味判ってないからだぜ
確かにお前がオレの為だけにデザインしたのならそのデザインにお前の
心が篭っているが出来上がった製品にお前の心が篭っているのか?
出来上がった製品の篭っているのは職人さんの心だぜ
その中にお前の心は篭ってない
そんなモノならオレは要らない
オレはお前の心の篭ったモノが欲しいんだからな」
それだけ言うと社長室を出て行く
重厚な扉が閉まり遊戯はその扉を背に
「オレにとって最高のプレゼントはお前と一緒に居られる時間(未来)なんだぜ
それぐらい気付けよ」
呟く様に言うとそのまま自分の部署へと戻って行った。
社長室に居る海馬と言えばデコピンされた額を押さえながら
「俺の心が篭ったモノか・・・」
仕事だけにしか使えない頭か・・・言ってくれるな
確かの俺は貴様の事になると後先が見え無くなる様だ
貴様が望むようにこの俺が心を篭ったモノを作ってやろう
 
きっと幼い頃の自分にならそれがどれだけ嬉しかったのか判っていたと思う
だが年を重ね
権力・財力を手に入れた今では忘れていたモノ
貴様に思い出されるとはな・・・
 
 
 
数日後 遊戯の胸にはブルーアイズの形をしたヌイグルミが抱かれており
遊戯は、それを嬉しそうに大切にしていたらしい
そのヌイグルミは、御世辞にも上手とは言えないが海馬がミシンを使わず
誰にも手伝わせる事無く一針一針手縫いしたもの
遊戯が望んだ心の篭ったプレゼントだったから




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