Summer Cold


ピピッ・・・

「38°2・・・まだ熱が高いな」

コホコホ・・・

「ゴメンなさい亮

折角楽しみにしていた花火大会なのに」

額にアイスノンを貼り申しワケなさそうにしている明日香

「花火大会を楽しみにしていたのは、明日香もだろう?」

今日は、童実野町で行われる花火大会・・・

海馬Co.の城下町とあって花火大会は毎年盛大に行われる

そして名だたるデュエリストが集まる日なのだ

デュエリストが集まれば当然デュエルが行われる

カードのトレードだって・・・

デュエルアカデミアにとってこの花火大会は、花火を楽しむ他に

高名なデュエリストによる生のデュエルを見たりデュエルをしてもらったり

課外授業としても評価されているのだ

そして運が良ければ武藤遊戯と海馬瀬人のデュエルだって見れるのだ

そんな花火大会なのに明日香は、夏風邪を引いてしまいダウンしたのだ

「今は、ゆっくり寝て体力を回復させないと」

「うん・・・」

「そう言えば夕食は、御粥でもいいか?」

うどんとかも食べ易そうだけど・・・

「うん・・・ありがとう」

熱の所為で朱色に染まった頬

潤んだ瞳

熱い吐息・・・

そのどれにも亮の欲望が反応する

 

明日香は病気なんだ

変な気を興しては・・・

 

あらぬ姿の明日香が亮の脳裏に現れては消え

消えては現れているのだ

何とか自分の欲望を抑え込む様に気を別のモノに逸らそうと

「汗かいているんだろう?着替えた方がイイと思うのだが・・・替えのパジャマは

何処になおして在るのだ?」

亮の言葉に熱で朱に染まっている顔が更に朱に・・・

そんな明日香を見て亮は自分自身とんでも無い事を言った事に気が着く

「おっ俺は、そんな気で言ったワケじゃ・・・」

言い訳だと解っていても言ってしまう

そして言いながら自分自身顔が熱くなっている事に気付く

「わっ・・・解ってる・・・」

 

亮がそんな気持ちで言ったんじゃ無い事ぐらい解っているけど・・・

やっぱり恥ずかしい・・・

互いの裸なんて見知った仲とは言えそれは事の最中の時であって素面では

互いの裸なんて・・・裸・・・?

 

ボッ!!と顔から湯気が出て来そうなぐらい赤くなりだす明日香に亮は

「明日香 熱が上がったのじゃ?」

心配そうに傍に来る

確かに熱が上がったかもしれない

だがこの熱は、夏風邪に因るモノじゃない

自分の妄想によるもの

「大丈夫よ!!そっ・・・それより替えのパジャマ出してもらっていいかしら?」

慌てながらも亮の替えのパジャマがなおして在る場所を教え出して貰う

「明日香が着替えている間にトメさんに御粥を頼んでくるよ」

そう言いながら明日香にパジャマを手渡すと部屋を出て行く

流石に自分が居ては着替え難いだろうから・・・

 

汗で濡れたパジャマから乾いたパジャマに着替えると気持ちがいい

多分 自分一人だったら替えのパジャマを出すのも大変だっただろう

もしかしたら取りに行っている間にクラ〜と来て倒れてしまっているかも知れない

親友達は、 自分達も残ると言ってくれたでも彼女達だって今日の花火大会

楽しみにしていたのを知っているから「残って傍に居て欲しい」なんて言えなかった

そのお陰か今は亮と2人で居られるのだけど・・・

それにしてもトメさんに御粥を頼みに行ったわりには戻って来るのが遅い

トメさんを探すのに戸惑っているのだろうか?

時計を見ながら亮が戻って来るのを待つ

亮が部屋を出て30分が過ぎ様としている

 

病人をほったらかしにして何しているのよ?

 

ヤツ当たりなのは解っているが何だか胸の辺りがモヤモヤして来る

言い様の無い感情・・・

それに支配されかけた時

「遅くなってスマナイ」

そう言って亮は一人用の小さな土鍋と食器をトレーに乗せて戻って来た

「亮 遅いよ・・・トメさん探すの・・・戸惑ったの?」

土鍋の蓋を開けると熱々の湯気

そしてイイ匂い

木で出来た御玉で御粥を掬い御椀に入れながら

「トメさんも花火大会に行ったらしから俺が作っていたんだよ」

「え?」

御椀を亮から受け取りながら予想外の言葉に思わず聞き直してしまう

「味の保証は無いが・・・」

少し照れ顔の亮・・・

御粥と言っていた筈なのに御椀の中は雑炊になっている・・・

きっとアレもコレもと入れたのだろう

自分の為だけに作ってくれた雑炊を蓮華で掬いながら軽く息を吹きかけ

冷ます。

口の中に入れてみると少し塩辛いけど今の自分には、丁度いい辛さ

何だかさっきまでのモヤモヤ感が消えて行ってしまう

その代わりに幸せだと思えてしまう

夏風邪で折角の花火大会がダメになったけどその代わりに亮の手料理が

食べられるのなら夏風邪も悪い気はしない・・・

 





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