宝夢


辺り一面綺麗に輝く緑の草木

見馴れない場所にクリティウスは一人で居た

自分を取り囲む美しい光景

草木な波うちまるでクリティウスに『この先に行け』と言っている様だ

そして誘われるがまま綺麗に輝く緑の中を行くと開けた場所に出る

その開けた場所の中心には、綺麗な湖が・・・

光が指し込んでいる所為か湖面がキラキラと輝いている

まるで宝石箱をひっくり返したかの様に・・・

光り輝く湖面の光が反射して美しい淡い光を身にまとった

エメラルド・グリーンの身体をしたドラゴンが舞い降りて来た。

ドラゴンの瞳は碧眼で美しくそして隻眼故に痛々しい

何故このドラゴンは隻眼なのか・・・

疑問は有ったがその疑問以上に今はただその美しさに見惚れるだけだった。

 

そのまま着水したら水飛沫が上がってもおかしくないのに

まったく水飛沫を上げずドラゴンは湖面の上に着水をする

とその身を淡いグリーンに包み込みながら人型へ

人型になったドラゴンは小柄で細身でありながら存在感がある

人を惹きつけて止まない凛とした姿

片目は、金糸の様な前髪でやや隠れている

青い炎の様な逆立った髪

静かに澄んだ様な碧眼・・・

だがこの瞳の奥には、きっと青い炎の様な荒々しさが髪一重で

存在しているのだと思わせる程に意志の強そうな瞳

華奢な身体には似つかわしく無い剣

この人が騎士である事を物語っている

彼が身にまといしオーラは、騎士以上のモノ・・・

貴族階級・・・

 

彼は、何かを待っているのか湖面に立ち続けていたが不意に上空を見上げると

嬉しそうな表情を浮かべ背からエメラルド・グリーンの翼を出し軽く湖面に波立たせながら

浮上しその身をドラゴンの姿に変えた。

クリティウスが上空を見上げると濃紺のドラゴンが緩やかに旋回している

きっと2頭のドラゴンは、この湖を待ち合わせ場所にしていたのだろう

そのまま何処かに飛んで行ってしまった。

 

クリティウスは、暫く上空を眺めていた。

そしてもと来た場所に歩を進め様としたが足が重くて動かない

まるで重石でも乗っているか足を掴まれたかの様に・・・

恐る恐る足元を見るとズズズズ・・・と飲み込まれて行く現実

もがけばもがくほど飲み込まれるスピードは、早く腰の辺りまで簡単に飲み込まれてしまった。

目の前には、掴む物は何も無く

草を掴めどブチブチと引きちぎれるばかり

そんなクリティウスの脳裏には小さな最愛なるティマイオスの姿が

もう2度とティマイオスに逢えない・・・と諦めながら地面に飲み込まれて行くクリティウス

意識が遠退きかけた時 ズシッとお腹の辺りに走る激痛

まるで何かに殴られた感じだ

そのお陰で遠退きかけた意識が浮上する

 

微かに見える光・・・

クリティウスがその光に手を伸ばすと光の中から手が出てきてクリティウスの手を掴み引き上げてくれる

光の中から見えた人影・・・

その人影がさっき見た人と重なって見える

 

「・・・んん・・・」

クリティウスが目を覚ますと見覚えの有る天井

しかし・・・お腹の辺りに違和感を感じる

目をこすりながらお腹の方を見ると頭をクリティウスのお腹に乗せた状態でうつ伏せのまま眠るティマイオスの姿

何故・・・ティマが俺の部屋に?

小さなティマイオスの頭を撫でながら記憶の糸を手繰り寄せる

確か先週父親が

「西家の婦人が来週ティマを連れて泊まりがけで遊びに来るそうだ」

そう言ってたような?

そして今朝西家の婦人が東家に遊びに来たのだ

腕には卵の殻で作られたベビー・ベッド

その中でスヤスヤと寝息をたてて眠るティマイオスの姿

西家の婦人はクリティウスの姿を見つけると嬉しそうに

「クリティウス!!ティマの御守をお願いできるかしら?」

そう言うとベビー・ベッドをクリティウスに託す

ベビー・ベッドで眠るティマイオスの御守を頼まれクリティウスはティマイオスを自室に連れて行く

一向に目を覚ます気配が無い

可愛いティマイオスを眺めていると次第にクリティウスにも眠気が・・・

 

クリティウスは、うつ伏せのまま眠るティマイオスを仰向けに寝かしつける

「赤ちゃんの時にうつ伏せのまま寝るのって良くないんだぞ」

以前母上がそう言っておられた・・・

そう言えばベビー・ベッドで寝ていた筈のティマが何故 俺のお腹の上に頭を乗せて寝ていたんだ?

 

カチャ・・・

「あら・・・クリティウス起きたの?代わりにティマが寝てしまったのね」

「婦人?」

婦人は、クスクス笑みを浮かべながら

「この子ったら背中の小さな翼を羽ばたかせて貴方の所まで飛んだのよ

短い飛行距離だったけど この子初飛行が見れて嬉しかったわ

でも初飛行で疲れたのね 貴方を枕にして眠るなんて」

「あの・・・初飛行って御屋敷の方では?」

「全然そんなそぶりも見せてくれなかったわ

貴方よっぽど気に入られたのね」

そう言いながら婦人は、よっぽど息子の初飛行が嬉しかったのか何時までも

笑顔のままスヤスヤ眠る息子のプニプニの頬を突っつきながら眺めていた。

 

俺がティマのお気に入り・・・

 

その言葉が嬉しいクリティウスだったが夢に出て来た人物が気になって仕方が無い

でも夢の人物とは将来逢えるそんな気がする








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