想い出

想い出


 

「大きくなったら逢おうね・・・」

「うん」

『指きり拳万嘘ついたら針千本飲ます!指きった』

幼い頃 顔の憶えてない相手と交わした約束・・・

とっくに忘れていた事なのにアカデミアに入学してから

何度無く夢に見る様になった。

あの夢に出て来る子供は誰?

私は誰と大きくなったら逢う約束をしたの?

スッキリしない・・・モヤモヤした感じが気持ち悪い

余りの気持ち悪さに吐き気を感じる

その事を亮に話すと少し不機嫌になる

何故彼が不機嫌になるの?

私と彼が出会ったのは、このアカデミア・・・

それ以前に逢った覚えが無い

余りにもスッキリしない夢・・・

もしかしたら兄が何か憶えているかも知れないと思ったので兄の元を訪ねてみた

「・・・兄さんなら何か覚えているんじゃないかなぁ〜って思って」

頬杖を付いてムス〜としていると

「明日香は本当に覚えてないの?」

「大きくなったら逢う約束をした事以外何も・・・顔さえ憶えてない・・・

だから気になってしょうがないのよ」

そんな明日香に吹雪は亮の事を思い出す

だから昔の話をすると亮のヤツ不機嫌になるんだ

まぁ〜無理無いかもしれない昔の事だから

それを解っているから亮としては、複雑な心境なんだね・・・

 

吹雪は、徐に立ち上がると机の引き出しを開け何やら探し出す

暫くして戻ってくると何かの束を持ってきた

「兄さんそれは?」

「子供の頃の写真vvv

ちょっと気になる事あってママに送ってもらったんだ」

吹雪から写真の束を受け取ると明日香は一枚一枚捲りだす

「懐かしいわね

パパったら事ある事に写真撮ってたもんね」

写真を懐かしむ明日香

「そのお陰で明日香の中にあるモヤモヤが解消されるんだけどね」

そう言うと吹雪も写真を見だす

明日香が捲るその中に数枚・・・見慣れない男の子と一緒に写った写真が有った。

見慣れない?否 見覚えが有る・・・彼の面影が残っている

でもまさか?彼が?

彼と出会ったのは、このアカデミアのはず・・・

写真を捲る手を止め食い入る様に見る明日香に吹雪は

「答えの写真が見つかったみたいだね」

「あっ・・・うん・・・でもこの写真・・・」

明日香は吹雪に写真を渡すと

「良く撮れているねvvv流石はパパだ!」

その写真を褒める兄に明日香は

「そこに写っている男の子って・・・まさかだと思うけど亮なんじゃないの?」

優しそうな眼差し・・・その中に在る意志の強さ

「そうだよ この時って僕も亮も小学校に入ったばかりだったもんね

あ〜そうなると明日香は、幼稚園か・・・」

この頃は翔君も含めよく4人で遊んだよね・・・

過去を懐かしむ兄・・・

もしかしたらあの約束は、亮と交わしたもの?

「兄さん亮達とは・・・」

「亮が御近所さんだったのは2年位だったかなぁ?

お父さんの仕事の関係で引っ越して来てまた仕事の関係で引越しって行ったから・・・

でもまさかこのアカデミアで再会するなんて
思わなかったら出会った時は嬉しかったよ」

亮の方も僕達兄妹の事を覚えていたんだよ

「そうそう亮の宝物の中に明日香と一緒に写したツーショット写真があるんだよvvv

え〜と・・・あったこの写真」

吹雪が探し出した一枚の写真

その写真に映し出されているのは、幼い頃の亮と自分・・・

「兄さん私ちょっと・・・」

「亮ならきっと灯台にいるんじゃない?」

兄の言葉に驚く明日香

この兄は、何処まで自分達の事を見透かしているのだろうか?

もしかして自分の心の中まで見透かされているんじゃ?

そう思えてくる

ははは・・・見透かせるワケ無いよ〜

ただ亮が灯台の方に歩いて行く姿を見かけたんだよ

 

明日香は、兄の言葉通り灯台に行ってみると海を見つめる亮の姿が

「亮・・・こんな所で何してるの?」

「別に何も・・・ただ海を見ていたんだ

この海の向こうには、どんなデュエリストが居るんだろうって」

「ここを卒業したらやっぱりプロの道に進むのね

その方が貴方らしいけど・・・」

海風に髪を靡かせながら明日香は、亮に近づく

「あの・・・亮・・・ごめんなさい・・・」

急に明日香に謝られてキョトンとする亮

「何の事だ?」

「子供の頃・・・貴方の事・・・その覚えてなくて御免なさい」

明日香のその言葉に亮は、自分の心に嬉しさが満ち満ちてくるのが解る

明日香が自分の事を思い出してくれた!!

「いいよ・・・子供の頃の事だし2年程しか一緒に居られなかったから」

その2年程の事でも彼は覚えていたのだ・・・

それなのに自分は、忘れていたのだ・・・

「明日香があの時の約束を覚えてくれていただけでも嬉しいけど

更に思い出してくれて嬉しいよ」

あの時と同じ優しい眼差し

明日香の胸元を締め付ける

頬を染めて俯く明日香

そんな明日香に亮は、近づきその両頬を優しく挟むと自分の方に向かせ

「俺と新たな約束してくれるかい?」

「新たな約束?」

「そう・・・子供の頃は、大きくなったら逢う約束をした

そして俺達は、その約束通り逢ったんだ

今度は、互いが卒業したらベストパートナーとして一緒に居る事を約束しよう」

えっ・・・卒業したら・・・って・・・

「亮・・・」

亮の顔を霞んで来る

ハッキリと見えない

「俺は、子供の頃から明日香の事が好きだったんだ

もしこのアカデミアで出会わなければ俺は、明日香を探すつもりだった・・・」

それ程 明日香の事が好きだった。

一緒に居たいと思った。

だからあの時 急な父親の転勤が恨めしかった

明日香と離れたくなかったから・・・

逢いたい・・・でも彼女に彼氏が居たら?と思うと複雑な心境に駆られた

でも逢いたいと想う気持ちは募るばかりで・・・

吹雪とこのアカデミアで逢い明日香の事を聞いた

彼女には恋人が居ない事を知りどんなに歓喜した事か

もしかしたら彼女の恋人候補に自分もなれるんじゃ?なんて思った。

そして逢いたい・・・逢いたい・・・と想い続けた相手がアカデミアに入学して来た時

どれだけ嬉しかった事か・・・

そして明日香が子供の頃の約束を覚えている事に嬉しかったが

その相手の事を覚えてない事にショックだった

でも子供の頃の約束・・・しかも2年程しか居なかった相手の・・・仕方が無いと

思った。思い出して貰えないと思っていた。

それなのに思い出してくれた・・・どんな理由で思い出したのか解らないけど

思い出してくれたのだ!!

その事がどれだけ嬉しい事か!!

彼女が自分の事をどう想っているのか知らない・・・

聞いた事ないから聞くのが怖かったから

「明日香・・・俺と一緒に居てくれるか?」

「うん・・・うん・・・一緒に居る 貴方と一緒に居る

でも私でもいいの?」

貴方の傍に居るのが私で・・・

「明日香以外俺の心を動かせる相手は居ないよ 明日香好きだよ」

「私も・・・亮が好き・・・んんん・・・」

明日香の唇に重なる亮の唇

互いの心が重なった瞬間だったのかのしれない

これから先 どんな事があってもきっと2人一緒なら乗り切れるかもしれない・・・

 

あの時交わした約束を実現出来た2人なら








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