眼鏡

眼鏡


目の前に居るこの男の強引さには、嫌気がする

オレが会社でこの男と逢う事を嫌がっているのは百も承知の筈

それなのにこの男は、オレを会社に呼びだす。

オレが会社で逢うのを嫌がる理由・・・

それは、この男が普段オレが知っている男じゃないから

会社での男は海馬Co.の総帥 海馬瀬人であってデュエリスト海馬瀬人じゃない

見事なまでに着こなしたブランドモノのスーツ・・・

オレの知ってる世界では、見慣れない服だ

午前中に会議でもあったのだろう

彼のスーツからタバコの臭いがする

コイツがオレとは別世界に居る事を無言のまま知らしめる

イヤな臭い・・・

更にオレがイヤなのは彼の眼鏡姿・・・

それこそ彼がオレの知らない・・・足を踏み入れられない世界の人間だと言っているかの様でイヤなのだ

海馬の眼鏡姿は、カッコ良いとは思うけど・・・

 

オレが電話やメールで『会社に来い』と言われても素直に従わない

のは、知っているからモクバや黒服達を使って向いに来させる

オレが彼等に対して無碍にしない事を熟知しているから

だって彼等には、関係ない事だしオレが行かない事で彼等が海馬

からどんな叱りを受けるのか・・・と考えたら

イヤイヤでも行くしかないだろう?

これが海馬なら苦言の一言でも言って逃げるのに・・・

とは言え今迄それをやって逃げ通せた事は1度も無いけど

こう言う時はコンパスの違いに文句が言いたい!

オレを部下に命じて会社に無理矢理連れて来た男は今オレの目の前

で眼鏡をかけオレの知らない表情で仕事にいそしんでいる

何の為にオレを呼んだのか?

 

 

遊戯が怪訝そうな表情で俺を睨んでいるのが解る

彼がどんな表情をしているようと俺を・・・俺だけを見ていると思うと高揚してしまう

俺は狂っているのだろう

遊戯が会社に来る事を嫌がっているのは知っている

だがその理由は知らない

遊戯は、決してその理由を言わない

だから言わせたいと思う・・・今日こそ・・・

 

ギシッ・・・

「?・・・どうしたんだ?仕事の方は、もういいのか?」

「遊戯」

「?」

「貴様は、何故屋敷や別宅には素直に来るのに会社には嫌がって

来ないのだ?俺に逢いたくないのか?」

「別にそんな事ないぜ」

コイツは、イヤな男だ

オレが海馬に逢いたくないなんて有りえない

24時間海馬と一緒に居たい触れあって居たい

そう想っているのに・・・

 

ジャラ・・・

「なぁ海馬」

「どうした?」

「何時もこのペンダントしてるけど・・・これって会社の重要機密ってのが入ってるんだよな・・・」

「ああ・・・」

しまった!!俺とした事が話しを刷り返られた???

「それにモクバの写真も」

「ああ入ってるが・・・それが?」

「別に」

海馬にとってモクバは唯一の肉親だから大切なんだろう

オレの写真は、入って無い・・・オレは肉親じゃないから?

海馬の肉親になったらオレの写真もこの中に入れてくれるのだろうか?

「なぁ・・・」

「ん?」

「眼鏡かけたままオレを押し倒すな不愉快だぜ」

「何故?」

捲られるタンクトップを抑えながら

「今のお前の顔は、オレの知ってる海馬の顔じゃない

今のお前は、海馬Co.総帥 海馬瀬人の顔だ

デュエリスト海馬瀬人の顔じゃない・・・オレの前では、総帥 海馬瀬人

の顔なんてするなデュエリスト海馬瀬人の顔になっていろ」

まさかコイツ・・・そんな事を気にしているのか?

「眼鏡を外せばいいのか?」

「さぁ〜な そんな事お前が考えろよ」

「クイズのつもりか?」

「オレの恋人は海馬Co.総帥じゃなからな

オレが好きになったのはデュエリストの方だ

オレの好きなお前になれないと言うのならオレは帰らせてもらうぜ」

何とかして海馬の下を摺り抜け床に座り込みながら言うと

「貴様は、何様のつもりだ?」

「元デュエルキングであり古代ファラオで・・・デュエリスト海馬瀬人の恋人兼

ライバルの武藤遊戯だが?それ以外に何かあるのか?

ああ・・・そうそう唯一冥界から生還した男だ」

流石の海馬も『デュエリスト海馬瀬人の恋人兼ライバル』の言葉に喜びを隠せない

「貴様 何に嫉妬してるんだ?会社にか?眼鏡にか?」

クスクス笑い出す遊戯

「お前が目を向ける全てにだ」

「全てって・・・」

「オレの知らない顔の海馬が居る場所も嫌いだ

それがどんな場所であってもオレが知らない海馬が居る場所全てが嫌いだ」

「貴様が会社に来たく無いのは・・・」

「ここは、オレの知らない海馬が居る場所

眼鏡は、オレの知らない海馬の表情を作りだす

屋敷も別宅もオレの知っている海馬の表情なのに会社だけがオレの知らない海馬の表情があるんだ」

「だったら毎日学校が終わったら来れば良い」

「イヤだぜ」

「何故?」

「オレの知らない時間がココには有るからな」

「貴様何処まで嫉妬する気だ」

「さぁ〜て・・・そんなのオレにだって解らないぜ」

遊戯は、海馬の眼鏡を取り上げると自分が掛けてみる

「・・・??・・・これって伊達?」

「誰が本物の眼鏡をかけてると言った?」

「?」

「それは、貴様が来た時だけかけているんだ」

「?」

「俺の欲望を制御する為にな」

「!!!!」

まさかそんな理由でかけているのか?

って言うか制御なんて出来るのか?

じゃぁ・・・眼鏡をかけている海馬の姿や表情ってオレだけの為?

オレだけに用意された海馬の表情なら会社に来てもいいかなぁ〜

なんて少し想っていいよな

あっでもロケットの事内緒な?海馬にオレの気持ちもう少しバレタクナイので

 

遊戯には、内緒だがこのロケットの中にはモクバの写真以外に遊戯の写真も入っているのだ

流石に恥ずかしくて言えんがな





嫉妬シリーズ(?)の方に入れておけばよかったかなぁ?




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