ささやかな休日


 

「瀬人様 もう御目覚めになられる時間ですよ」

その声とほぼ同時に目を覚ます。

声を掛けて来た相手を抱きしめ様と腕を伸ばすが掴む事が出来ない

シャーという音と共に開け放たれるカーテン

「瀬人様おはようございます」

朝から元気の良い声

海馬は、ベッドの端に座りスリッパを履く

「朝食の用意が出来ましたら呼びに来ます」

とだけ言い残し遊戯は、部屋を出て行った。

毎朝遊戯に起して貰える事は、海馬にとって嬉しい事。

例えそれが夏休みの間とは、言え

だが海馬が想像していたのは、毎朝遊戯から送られる目覚めのキス

それなのに目覚めのキスは、一度もされた事が無い。

部屋も自分と一緒に使う様に遊戯に言ってあったのに使用人達と同じ個室を使っている

その所為で夜の仕事をしてもらえない!!

メイド服姿の遊戯を襲う楽しみがあったのに・・・それなのに・・・

それでも出勤前の御見送りと帰宅時の御出迎えをされるとついつい言いたい文句が消えてしまう

思わずデレ〜としてしまいそうになるのだ。

 

今日は、海馬にとって久しぶりの休日。

遊戯との時間を過ごしたくて遊戯には、今日休みを取る様に言っていたのに・・・

それなのに遊戯は、いそいそと仕事中。

まるで自分との時間を過ごしたくないかの様に思えて来る。

 

そう言えば朝食の時遊戯が何か言っていたな・・・

 

苛立ちの余り最後の方は、全くと言って良いほど聞いてない

「瀬人様お茶をお持ちしました」

トレイには、コーヒーが1客分しか乗っていない

「遊戯 俺は、貴様に今日は、休む様に言った筈だ!何故休まない?」

コーヒーをテーブルに置く遊戯の手を掴み不機嫌さを露わにすると

「今朝 食堂で瀬人様に言った筈ですよ?今日は、急用で休むメイドさんの代わりに出勤

しないといけなくなった・・・と」

確かにそんな事を言っていた・・・だが俺は、そんな事を承諾した覚えは、無い

「瀬人様離して下さい」

あくまでもメイド口調の遊戯。

己が腕を引っ張り海馬の手から逃れ様とする。

それが気に入らない海馬は、手に込める力を強める

「・・・」

なかなか解放してくれない海馬に遊戯は、程々困り果てながら何かを思いつきそっと耳元で囁く

その効果がてき面したのか海馬の手の力が弱まりほどなくして遊戯の腕が解放された。

「遊戯 さっきの言葉本当なんだろうな?」

やや顔を朱に染める海馬

そんな海馬を遊戯は、思わず(可愛い)と思ってしまう

「本当よ だから大人しく待っててね」

それだけ言うと部屋を出て行く

遊戯が海馬に囁いた言葉・・・

『仕事が終わったら一緒に居てあげる』

遊戯が煎れたコーヒーを啜りながら

(あんな陳腐な言葉にこの俺が喜んでしまうとは・・・)

苦笑してしまった。

 

午前中遊戯は、メイドとしての仕事をイソイソとこなしている最中海馬は、自室で読書

何時もは、会社で忙しく書類に目を通し報告を聞き商品開発に接待にとゆっくり休む時間が無い

昼食を呼びに来たのは、遊戯では無くメイド頭

食堂で給仕をしてくれたのも他のメイド・・・

遊戯は、仕事が忙しく来れないのだろうと思っていた。

食事を終え自室に戻り読みかけの本を手に取る

コンコン・・・と数回のノック

海馬は、入室を促すと入って来たのは、短いスカートを穿いた私服姿の遊戯

「・・・!!・・・仕事中じゃなかったのか?」

蒼い瞳を見開いている海馬に遊戯は、

「仕事は、午前中だけ・・・って言ったのに既に忘れているの?」

少し頬を膨らませながら近付く

 

もしかして最後の方に言っていたのは・・・

 

苛立ちの余りちゃんと聞いていなかったのでまさか午後からでも遊戯と一緒に居られるなんて思っても

みなかったのだ。

海馬が持っていた本を取り上げ海馬に背を向ける格好で膝を跨ぎ座る

普段の遊戯では、有りえない行動だ。

「こ・・・今回・・・だけだからね・・・」

海馬の位置からは、ハッキリと見えないがきっと遊戯の顔は、真っ赤になっている事が想像出来る

「どういう風の吹きまわしだ?」

膝の上に座る遊戯を抱きしめながら

「同じ屋根の下に居るけど一緒に居る時間が無かったから・・・」

弱まる語尾 きっと恥かしいのだろう

「半日は、貴様と一緒に居られるのだな」

「一応 明日の午前中まで・・・休みを貰ったの」

「それじゃ 今夜は、ゆっくりと久しぶりに貴様を堪能させてもらうぞ」

「いいけど・・・仕事に差し支えがない様にしてね」

 

膝の上に居る遊戯の匂いを嗅ぎながらどう遊戯を堪能するか思いを馳せる海馬だった。

 



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