指
ほんの一瞬・・・ほんの一瞬気持ちがデュエルから反れた。
それが招いた敗因。
久しぶりに海馬邸で行われたデュエル。
多忙極まりない男からメールで誘って来たのだ。
どんなに心が浮かれた事か。
その所為で相棒には、からかわれる羽目にあった。
久しぶり海馬とのデュエル。
相手が強いだけに油断なんて出来ない。
一進一退の攻防。五分と五分のの闘い。
どれだけ心が踊った事か。
だが一瞬海馬の指の動きに目が行ってしまった。
綺麗で長い指。
優雅にデッキからカードを引くその動きにドキドキさせられる。
そしてその指が強引に自分に与える快楽を思い出すと恥かしい。
一瞬の事だったのに・・・その後見事なまでに判断を誤り負けてしまった。
オレの意識がデュエルに無い事を。
「遊戯 この俺を前に気持ちが疎かとは、余裕だな」
明らかに不機嫌そうな声。
公式では、無いにしろデュエルは、デュエル。
オレだって海馬に同じ事されたら不機嫌になるだろう。
「貴様 デュエル中に何を考えていた?」
「別に・・・何も・・・」
「よもや相棒だの仲間だの くだらん連中の事でも考えていたのか?
それとも・・・」
まさか海馬の指の動きに魅入っていたなんて恥かしくて言えない。
「俺とのデュエルは、貴様にとって退屈なモノなのか?」
思いもしない海馬からの発言。
「そっ・・・そんな事ない!」
海馬とのデュエルは、本当に楽しい。
自分の心を湧き立たせる相手なんて早々に居ない。
ガタ・・・
「だったら何を考えていたのか言ってもらおうか?」
目の前に座っていた相手は、今オレの真横で不機嫌さを隠さずに立っている。
この男は、一度拗ねると後が厄介。
自分が納得するまで相手を追い詰める。
口下手な遊戯にとっては、上手く海馬を納得させるなんて至難の技。
俯く遊戯の顎に海馬の長い指をあてがわられ上に向けられる。
冷たく自分を見据えるブルー・アイ。
「何を考えていたのか言ってもらおうか」
どうせウソを言っても直にバレル。
バレルならいっそうの事
「お前の指を見ていたんだ」
「俺の?」
「お前の指がデッキからカードを引く動きが優雅だと思った。それに長くて綺麗だとも思った。
オレがお前の指にそんな事を考えていたらイケナイ事のか?」
予想外の言葉に海馬が返答に困ってしまう。
海馬は、遊戯の事だから相棒の事や城之内達の事を思い出し考えていたのだと思ったのだ。
それなのに遊戯は、自分の指に魅入っていたと言うのだ。
遊戯は、自分の顎にあてがわられている指を外すと自分の口元に持って行き軽く口付けると
小さな舌先で海馬の指先を舐めた。
「ゆう・・・」
「オレがこの指の事を考える事がダメだと言うのなら考えない様にする」
遊戯が指を舐める行動がまるで情事の時の様に思え海馬の鼓動が高鳴りだす。
「俺の事なら考えても構わない 勿論指の事も」
海馬は、自分の顔が赤くなるのを感じた。
それに遊戯の仕草が余りにも淫靡で自分の下肢に熱が集まり出して来た。
まさか指をしゃぶられただけで感じ立つとは・・・苦笑せずには、おけない。
「遊戯 貴様がそんなに俺の指を気に入っているのならその指で楽しませてやる」
「えっ」
言うが早いか海馬は、遊戯を抱き上げ寝室へ。
「貴様が気に入っているこの指で気持ち良くさせてやる 在り難く思え」
尊大な言い草だがその動きは、優しく丁寧。
それに海馬の指を魅入っていた時この指で与えられるモノの事を考えていたら欲しくなった。
この指が与えてくるモノ。
そしてその後に来る悦びを・・・