記念日

 


「・・・ん・・・はぁぁ・・・うんん・・・」

重ねられる唇。

絡み合う互いの舌と吐息。

結び合う指。

 

何時もの様に躰を繋いでいるのに何故か何時もと違う行為。

彼の舌が躰中を這う度に感じずには、居られない。

下肢に当たる彼の昂ぶりが自分だけが感じているんじゃないと知らしてくる。

何時もの奪う様な荒々しい行為も嫌いじゃない。

でも今日の様に優しく安心する行為も悪くない。

だからか遊戯の顔に笑みが出る。

「どうした?」

「ううん・・・何か気持ち良くて・・・お前こそどうしたんだ?何か良い事でもあったのか?」

「奪うだけが全てじゃない。たまには、互いに感じあうのもいいだろう」

何度も重ねられる唇。

海馬の体温が気持ち良い。

「気持ちいい」と声をあげてしまう。

 

「海馬 もうそろそろ限界じゃないのか?」

先走りの蜜が太股を濡らす。

「貴様の方こそ限界なんだろ?」

握られる陰茎。

ポタポタ・・・と蜜を垂らす。

「ああ・・・お前をもっと感じたいんだ。オレの中で・・・」

潤んだ紅い瞳が細められ誘われてしまう。

「オレの中で大きくなってその欲望を吐き出してくれよ」

お前がそんな事出来るのは、オレだけだと・・・

オレがお前の全てなんだと・・・

「貴様に誘われるのも悪くない」

口角をあげて掠れた声で言われたら感じずには、居られない。

腰がウズウズしてしまう。

「淫乱な貴様の中に俺の精を全て吐き出してやる。有り難く思え」

「良く言うぜ。張りつめたソレを解放させて貰える事をお前も有り難く思えよ」

手が彼に拘束されていなかったきっと彼を抱きしめただろう。

自分達には、不似合いな甘い言葉。

 

ああ・・・きっと彼は、覚えているのだろう。

自分達が初めて出逢った日が今日だって事を・・・

そして初めて躰を繋いだ日でもある事を・・・

イベント事を疎ましく思う彼でも今日は、特別な日なんだ。

だから感じたいんだ。オレが彼の腕の中に居て彼を感じている事を。

 

 

貴様と初めて出逢った時から俺の生が始まった。

貴様が居なければ俺は、ただの生きる屍。

実の弟でさえ道具としか見ていなかっただろう。

貴様に出逢い貴様によって砕かれた心。

救いの手は、無いけれど優しい闇で俺を包んでくれる。

そんな貴様に出逢えたこの日を俺は、忘れない。

 

 

解され広げられた場所に感じる海馬の熱。

彼のモノが自分の中に在ると実感させられる。

 

己の陰茎に絡みつく遊戯の内肉。

彼の中に居る事を実感させられる。

 

 

 

何年経とうが初めて出逢えた日は、変えられない。

この日を何て呼ぶかなんて言葉が見つからない。

ああ・・・『相棒・モクバ』が言っていた《記念日》が相応しいのかもしれない。



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