勘違い
高校を卒業して間もなく遊戯は、相棒の居る家を出て海馬が用意したマンションに
移り住んだ。
それは、海馬の意思であったがこれ以上相棒の家族に迷惑をかけたくなかったから。
本当は、海馬と居る時間を大切にしたかった。
2人で居る時間なんてそうそうに無かったから。
遊戯がマンションに移り住んでからは、海馬は、度々マンションに来ては遊戯との
逢瀬を満喫していた。
--そんなある日--
「遊戯 俺は、今度結婚する事にした」
海馬がいきなりそう言って来た。
まぁ海馬の立場上御見合い話しとかいろいろあったし身を固めてもおかしくないと思ってた。
海馬が認めた相手だから素的な女性だと思う。
(海馬とのこの関係もこれで終わり・・・)
解っていても何だか寂しい気持ちで涙が出そうになる。
でも・・・
「おめでとう・・・」
と言うしかないと思った。何処かぎこちない笑み。
仕方が無い自分の素直な気持ちじゃないんだから・・・
何時か海馬にプロポーズされる日が来るんじゃないか・・・と女の子の様な気持ちで居た。
でもそんな思いも音を立てて崩れて行く。
そしてその日の晩まるで怒っている感じの海馬に荒々しく扱われた。
目が覚めた時このマンションを退き払うつもりだった。
この部屋には、海馬との思い出が余りにも多すぎる。
辛いのだ・・・
でも出て行くにしても行く宛てなんて全く無い。
だからと言って思い出いっぱいのこの部屋にも居たくない。
一先ずこれから先の事を考えて軍資金が必要だ。
ただ通帳を持って行くワケには、いかない。何処でお金を引き落としたか解ってしまう。
それによって自分の居所までばれてしまう可能性だってある。
銀行でお金を下ろしてくるつもりだった。でもそれが出来ない。
口座が凍結されたワケでは、無い。ただ外に出られないのだ。
内カギは、掛かってないのに・・・ビクともしない。
何度扉を叩いても押しても引いても開く気配が無い。
こんな事をするのは、海馬しかいない。
(どうしてこんな事をするのだ?)
その夜マンションに訪れた海馬に問いただせば
「貴様の事だ このマンションを勝手に退き払うと思っただけだ」
貴様の行動なんてお見通しと言われた。
「だったらオレをどうするつもりだ?」
フルフルと震える拳。
辛うじて口を付いた台詞。
「どうもしない貴様は、俺の傍に居ればいいのだ」
ネクタイを緩めながらソファに向って行く海馬の背をジッと見ていた。
(海馬は,結婚してもオレとの関係を続ける?)
オレハ、海馬ノ愛人?
海馬の結婚は、行われなかった。
元々派手好きの男なのに・・・
そしてその相手も不明。
マスコミ各社は、こぞって海馬瀬人の花嫁の事を詮索している。
「遊戯 貴様何を考えている?」
入籍を済ませた。この男は、何事も無かった様にマンションに訪れる。
相手との新婚生活の匂いを纏う事なく。
遊戯と日々続く不倫生活・・・
早くこんな生活から抜け出したい。
このままじゃこんな生活が当たり前だと思ってしまう前に。
デモ自分ヲ包ミ込ムコノ腕ヲ振リ払エナイ・・・
自分ヲ包ムコノ温モリヲ・・・
相手の人には、申しワケ無いと思うけどもう少し彼とこのまま居させて。
必ず貴女の元に彼を返すから・・・それまでは・・・
+++
「それでアノ2人その後どうしてるの?」
<遊戯>の部屋でお茶をすすりながら
「監禁状態だぜ・・・」
「新婚なのに?」
「兄さまが遊戯に『結婚する事にした』と言ったら『おめでとう』って言われたらしぜ」
「もしかして『結婚する事にした』って言うのは、もう一人の僕に対するプロポーズだったの?」
それって恋愛ビギナーなもう一人の僕には、伝わらないし普通の人にも伝わらないよ。
僕だって同じ事言われたらショックだけど『おめでとう』って言うと思う・・・
「あっでも婚約指輪や結婚指輪とか渡しているんでしょ?」
「それがさぁ〜」
「えっまだ渡してないとか?」
「そうなんだぜ 寧ろ自分達が夫婦になっている事も言ってないらしいんだぜ」
何時もは、畏怖堂々としている兄が惚れに惚れ込んでいる相手に対しては、骨抜き状態・・・
(兄さま早く遊戯に言ってしまえばいいのに さもないとこんな変な夫婦生活をこれから先も続ける
事になるぜ)
(ははは・・・あの言いたい事言い放題の海馬君が・・・)
そう遊戯は、海馬と不倫生活を送っていると思っているが実際は、ちゃんとした夫婦生活を送っている
だけ。
でも恋愛関係に疎い遊戯は、全く気が付いておらずまた海馬も何も言わない状態。
結局遊戯から「こんな不倫関係を終わらせたい」と言われ海馬は、遊戯に誤解されていた事に気付き
自分達の関係修復に勤しんだらしい。