何時もの場所で


何時もの場所で最愛の人と逢い束の間の逢瀬を楽しむ。

時には、行為に及ぶ事もあったけど何もしないで寄り添うだけの時だって在る。

今夜もそう御互いに服を着たまま灯台に靠れながら座っている。

「明日香 女の子が地面に直接座るものじゃない」

少しムッとした様な表情を浮かべながら手を挿し出される。

「えっ・・・でも・・・」

その挿し出された手が意味する事が理解出来るから困ってしまう。

以外と亮は、古風な面を持っていると思う。

今時の女の子が直接地面に座る事なんて珍しくも何ともないのにそれを良しとは、思ってない。

「ダメだ。直接地面に座ると腰を冷やしてしまう

ただでさえ明日香は、冷え性なのに」

痛い所を突いて来る。

でもアカデミアの女子の制服は、基本的にスカート丈が短い。

女の子は、皆このスカート丈を気にしている。

少しでも屈めば下着が見えるのだ。それ故に男の子の視線が気になる。

自分が好意を抱いている男の子に見られるならまだしもそうでない男の子だと不愉快でしかない。

でも何人かの女の子は、「カイザー亮になら見られたい」もしくは「見て欲しい」と口々に言っている。

何か嫉妬してしまう。

もしかして亮は、他の男の子の様に女の子を性的に見ているのかな?

それは、私だけ?それとも・・・?

 

それにしてもこのスカートでは、冷え性対策が出来ない・・・

 

今も自分の前に挿し出されている手。

亮は、一度言ったら中々自分の意見を変えない。その事は、付き合ってみて良く解った。

だから明日香は、恥かしいながらものその手を取り亮の膝の上にゆっくりと座る。

流石にクッションみたいに座り心地は、良くない。

 

さっきから明日香の気持ちが自分から反れている。

「明日香何を考えている?」

2人で居る時は、自分だけを考えて欲しい。

「えっ?」

抱きしめられた状態で耳元で囁かれる。

その声に背筋がゾクゾクする。

「あっ・・・亮・・・重くない?」

恥かしいけど尋ねてみる。

流石に先程まで自分が考えていた事を聞く勇気がもてない。

「何が?」

と聞き返され優しく背後から抱きしめられる。

何が?と聞き返されるのも恥かしいが

「私・・・最近体重増えたから・・・」

正直に暴露するのもどうかと思う。

そんな明日香に亮は、瞳を大きく見開き驚いた様な表情を浮かべるが明日香の位置からでは、

亮の顔が見えない。ましてや恥かしさのあまり明日香自身俯いているのだからなおさら見えない。

「太股が冷たい」

何時の間にか亮の手が自分の手に重ねられそのまま太股に触れる。

言葉の通り確かに太股が冷えていている。

重ねられていた手が急に離されそれと反対に亮の躰が背中に密着してくる。

微かに香る亮の匂い。

「明日香これを膝の上にかけるといいよ」

そう言って膝の上に掛けられたのは、亮が着ていた上着。

亮の体温が上着からの感じられて温かい。

だから

「温かい・・・」

彼の優しさから素直な言葉が口を突いて出てくる。

海から吹く風は、肌寒いのに彼の温もりと匂いを纏った上着は、本当に温かい。

それだけなのに幸せな気持ちになる。

「俺もこうしていると温かい」

耳元で聞こえる声は、擽ったいのに気持ち良い。

こんな幸せな時間が永遠に続けば、良いと思った。

 

 

 

++++

 

「亮・・・貴方は、今何処に居るの?」

見上げる灯台。

それは、幸せだった時と何等代わり栄えが無いまま海を照らす。

「この灯台の光が貴方の元に届き貴方の道標になってくれる事を祈っているわ」

 

だから灯台の光よ時間と空間を超えてあの人の元へ

私の心と共に・・・


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