甘い時間


最近ティマの様子がおかしい。

何時もなら自分から甘えて来ないのに今は、自分から俺の膝の上に座りお茶を啜りながら人間界から

持ち帰った本を読書している。

ハードカバーの本・・・ティマのマスターが読みそうに無い本。大方俺のマスターから借りたのだろう。

心なしか嬉しそうに見えるのは、気の所為?

しかし最愛の人が膝の上に居るとなると在らぬ下心に火が灯ってしまう。

しかもそれが自分から甘えてきた事の無い相手からだと余計に・・・

「クリティウス 何か変な事でも想像しているのか?」

読書に集中していた筈のティマイオスから声を掛けられ焦ってしまう。

「どうしてだ?」

平静さを装いつつも心は、波立っている。

「お前の大事な所が大きくなった様な気がしたから」

密着しているとはいえ互いに服を着ている俺のモノは、布を突き上げる程に肥大したのか?

「クスクス・・・ジョ〜ダンだよ冗談!」

「なっ・・・」

本当に冗談なのか?

「多分お前の事だから良からぬ事を想像したんだろうと思っただけ」

今もクスクス笑っているティマイオス。

思い込みだけで俺の心中を的中させないで欲しい寿命が縮まる。

「その反応からすると本当に良からぬ事を想像していたのか?」

小さな躰を捩らせながら覗きこまれる。その行動の一つ一つが可愛く抱きしめたくなる。

「心の底から求めている相手が己の膝の上に居るのだ良からぬ事を想像してもおかしく無いと思うが?」

変化球が投げられないクリティウスの直球な答えにティマイオスの方が恥ずかしくなってしまう。

「お前・・・よくそんな恥かしい事をサラッと言えるな」

「虚偽らざる本音だからなあり難い事だろ?」

自信に満ち溢れた表情。この男が見せる表情の中で一番好きな表情なのかもしれない。

戦場において不安な表情は、士気の低迷に関わる。

だがこの男の自信に満ち溢れた表情は、士気に活気着くのだ。

それにティマイオス自身も安心出来るのだ。

「オレお前の今の表情好きだぜ」

優しい笑みを浮かべながら靠れてくるティマイオス。

その背を優しく抱きしめながら

(俺の表情が好きだと言っていたが俺は、どんな表情をしていたんだ?)

どんな表情をしても自分に変りは、無いと思うのだが・・・

それでも『好き』と言われれば嫌な気には、ならない。

堅そうで柔らかい髪を梳きながら

「俺もティマが見せる全ての表情が好きだ」

囁く様に漏らす。

 

瞳を閉じ胸に耳を当てれば聞こえて来る規則正しい鼓動。

布越しだけど感じる体温。

それをもっと感じ取りたくて彼の胸に当てていた手を彼の背に回しギュ〜と強く抱きつく。

鼓動に紛れて聞こえて来る彼の声は、心地好く耳を擽る。

まるで子守唄を聞いているかのように・・・

 

「気持ち良い・・・」

ああ・・・マスターが言ってた通りだ。こんな甘い時間も悪くない。

でも甘える時間は、毎日だと意味が無い。突き放す時間が多ければ多いほど甘える時間は、甘美なモノ

となる・・・何だか解る様な解らない様な曖昧な感じだけど。

きっとその意味は、その内に解るだろう。

だから今だけでもこの甘い時間を堪能したい。



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