初めの頃


海馬と今の様な恋人関係になったのは、何時の頃からだろう?

海馬との初めの出会いは、正直な所最悪だった。

相棒を傷つけ、じぃちゃんの大切なカードを破り勝手に命がけのゲームを主催し実の弟にとんでもない

罰ゲームをしかける。

そんなアイツにオレは、マインドクラッシュをしたんだよな。

廃人確実の技だったのにアイツは、心のピースを組み立て意識を取り戻した。

奇跡としか言い様がなかった。そんなアイツが再びオレの前に姿を現したのは、ペガサス島で行われた

デュエル大会。オレ達は、じぃちゃんを助ける為に海馬は、モクバを助ける為に挑んだデュエル。

 

しかしオレが<負け>の2文字を脳裏に浮かべてしまったデュエルがあった。

闇のデュエリストが海馬のデッキで挑んできた時だ。

ブルー・アイズを召喚された時は、負けを覚悟したがブルー・アイズは、オレに攻撃を仕掛けてくる事無く

消滅した。何故消滅したのか不思議で仕方が無かった。後で海馬に尋ねたら遠隔操作で消したと言う。

でもきっとブルー・アイズも偽海馬の指示なんて聞きたく無かったんだと思う。

カードは、持ち主を選ぶのだから・・・

 

そして再会したその日の晩に海馬に唇を奪われた。

触れるだけの優しいキス・・・

初めてだったのに・・・それを全く嫌だと思わなかった。何故かもっと触れて欲しいと思った。

同性からされればきっと抵抗する行為なんだろうけど抵抗をするなんて思いつかなかったんだ。

海馬が目の前でカードに魂を封印された時オレの心内に灯った怒りの炎。

その怒りが何処から溢れ来るのかこの頃のオレは、気付いていなかった。

多分気が着いていても認めたくなかったのかもしれないし目を反らしていたかもしれない。

ああ・・・ペガサス島でのデュエルから海馬が少しずつ変わって行ったんだよな・・・

アイツは、何時も心の何処かでオレ達の事を気に掛けてくれていた。何か在った時は、不器用なりに手を

差し伸べてくれた。

相棒が言ってたな「海馬君は、無意識の内に皆を助けてくれているんだと思うよ」って。

それがハッきり解ったのがバトル・シティでの時。

遊戯がマリク操る人形の前で膝ま付いた時、遊戯に罵声を浴びせつつも勇気つけてくれていた。

城之内を探す時も杏子を助ける時も海馬は、手を貸してくれた。

そんな話を海馬にしたら不機嫌極まりない表情をされた事があったな。

そしてこのバトル・シティで海馬を初めて躰を繋いだんだ。

我を忘れ焦り傍にいる海馬を全く見様としなかったオレに海馬は、苛立ちを感じたらしい。

自分が傍に居る事を・・・自分も見ろ・・・と・・・

襲われた時何が起るのか解らず怖かった事を思い出す。

そしてその行為は、心の何処かで当たり前の様に感じていた。

愛の言葉なんて存在しないままに海馬の全てを受け入れさせられただけ。

でも海馬・・・ノアの時は、思いっきり自分勝手に動いていたよなぁ。

しかも高校性とは、思えないアクション付きで!!カッコ良かったけど・・・(///)

ノアとの闘いが終わりバトル・シティ最終決戦の地デュエル・タワー。

デュエル・タワーでの海馬との闘いにオレは、海馬の気持ちが解った。

彼は、オレを想っていてくれている事を・・・

だから持てる力の限り闘いそして受け入れたのだ。

 

ギコチないまでも恋人になったオレ達にドーマって名乗る連中が闘いを挑んできた。

遠距離恋愛中のオレ達は、またもやその渦中に放り込まれる。何処までも続き過ぎだと思う命がけ

デュエル・・・

いい加減穏やかな時間を過ごしたいと思うのだけど流石に神のカードを奪われ世界が崩壊されるとなったら

黙っても居れず闘いの場へと出向いてしまう。

 

ジークとの闘いの時は、海馬に恨みを持つジークがあの手この手と使い海馬を陥れ様としていたけど・・・

海馬ってつくづく恨まれ易い男なんだなぁ・・・まぁアイツの養父から受け継がれた恨みの方が多いのかもしれない

あの年で気苦労の絶えない分老けて見られるんだろう。

そんな事を言えば「フン その方が好都合だ」と言われる。対等に闘う相手が古狸ばかりだから仕方が無いのかも

しれない。

それに海馬は、オレを前面的に信頼してくれていたんだ。それに答える事が出来てオレ自信満足している。

海馬のデュエルも見れたしな。

 

記憶の世界では、海馬と瓜二つのセトにあって驚いた。

でもセトの方が筋肉質で礼儀正しい。そしてなかなか本性を見せないズルイところもあった。

その点で行けば海馬の方が本性丸だしなのか?

しかしシモンと言いセトと言いアイシスと言いバクラと言い腐れ縁ってヤツなのか?

シモンは、オレを現世に導くために転生したらしいのだけど。

 

<闘いの儀>でオレは、対戦相手に相棒を選んだ。

本当は、海馬でも良かった。でもオレが現世に戻る為には、強い精神を持った者でないと戻れない。

戻るためには、<闘いの儀>で現世でのしがらみから解放される必要があり、その役目を相棒に担ってもらい

海馬には、オレを呼び戻す役目を担ってもらった。

これは、相棒に言ってあったけど海馬には、内緒にしていた。

 

冥界に戻った後、海馬の強い精神力を利用してオレは、現世に戻って来た。

しかし海馬の精神力は、強すぎる!!

冥界で暫く休養するつもりだったのにまさか引きずり出されるなんて・・・

思わず冥界の扉にしがみついてしまった。(汗)

それほどまでにオレの事を想っていてくれたんだろうけど・・・でもそれが原因で怪我をしたら元もこうも無い。

死者が怪我をしたなんて物笑いの種でしか無い。

 

そんなこんなでいろんな事があったけど久しぶりにアイツに逢えるんだ。

 

先週アイツからメールが来たんだ『23〜25日休みが取れた来い』って相変わらずそっけない文面だけど相棒が

「海馬君って不器用だね。でも海馬君なりの愛情表現なんじゃない?会いに行けば?」って言ってくれた。

本当は、22日にアメリカに向うつもりだったんだけど海馬と一緒に居る時間が少しでも長い方がイイと相棒が

モクバに連絡してくれた。その所為で1週間程早くにアメリカに行き海馬を驚かしてやる事にしたんだ。

 

「もう一人の僕。搭乗手続きが始まるよ。」

「ああ・・・解った」

「向こうでゆっくりしておいでよ」

「もし帰国出来なかったら・・・」

「ははは・・・相手が海馬君だもんね帰国出来なくなる可能性あるかも・・・

でもその時は、責任とってくれるよ。」

「責任?」

「そう。向こうの学校に通わせてくれるか家庭教師をつけてくれるとかしてくれるかもしれないよ」

「その時は、その時だな・・・」

「あっ早く行った方がいいよ」

相棒と軽く抱擁を交わすとオレは、搭乗手続きを済ませ機内へ。

 

飛び立つ飛行機の中で海馬に想いを寄せながら・・・

 

空港では、モクバと磯野と河豚田が出迎えてくれた。

何も知らされていない海馬は、会社で仕事をしているそうだ。

そびえ立つビル群・・・その中で一際目立つビル。  

 

逸る気持ちを押さえ海馬Co.の社長室前に立つ。

この扉の向こうには、海馬が居るんだ・・・

意を決し数回ノックし返事が返って来ると同時に入室をする。

驚きに見開かれた蒼い瞳。その表情は、柔らかく優しい。

数メートルの距離を数歩で0にされる。

骨が折れるのでは?と思える程に強い抱擁。何度も啄む様なキスに囁かれる愛の言葉。

それが気持ち良く緊張していたオレの心をほぐしてくれる。

 

求めるがまま求められるがままの状態で仮眠室でもつれあい。

逢えなかった時間を埋め様とした。

「寂しかったのか?」

「寂しかったぜ・・・お前は?」

「俺もだ・・・」

そんな甘い言葉を互いに発しあいながら・・・


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