永想
「クリティウス 今日は、何か予定あるのか?」
「いや・・・何も無い」
朝日が薄い暗闇から顔を覗かせる。
まだ肌寒い時間・・・互いが産まれたままの姿でベッドの中で縺れあう。
別に互いの熱を交換しあったワケでは、無い。
たまに何もしないで産まれたままの姿で寝る事だってある。
それに毎回何も身に纏ってないワケでもない。
「なぁ・・・今日は、雪降るのかな?」
「また塔のてっぺんにでも上るつもりか?」
去年ティマイオスは、その年初めて降った雪の1番目の結晶を手に入れるために寒空の中塔に上った。
それを手にしたものは、願いが叶うというお呪いをする為に。
その年降った初雪の1番目の結晶なんて流れ星に3回願いを唱えるのと同じほど出来ない事。
もし出来るならそれは、奇跡としか言い様がない。
ティマイオスは、クリティウスの躰の上に自分の躰を重ね彼の心音を聞き入る。
この体温も脈打つ鼓動も彼が生きている証。
「オレは、お前の願いを叶えたい・・・」
「俺の願いは、叶っている」
「もっと叶えたい」
「俺にこれ以上望む事は、出来ない」
打てば響く様な早い回答・・・
「いっぱいいろんな事を望んでもイイと思うけどな・・・」
オレハ、オ前ガ望ム願イハ、何デモ叶エタイ
「お前がもし風邪でも引いたら俺は、お前にこんな呪いを教えた張本人を恨むかもな」
そんな事を言うクリティウスにティマイオスは、蒼い瞳を大きく見開き。
「ダメだぜ!オレは・・・オレの好きな人をお前にも好きで居て欲しいのに」
ムキになるティマイオスに
「お前が好きになるのは、俺だけでいい」
拗ねた様な発言になってしまう。
何時もは、冷静沈着で策士として名高いクリティウス。そんな彼が時折子供っぽくなる。
それは、自分が他の者を誉めたり必要以上に気に掛けた時・・・
「オレは、マスター達が好きだ。でもクリティウスとは、別の意味での好きなんだぜ」
だから妬くなよ・・・と言うティマイオス。
クリティウスもティマイオスが自分を特別な感情で居てくれているのは、解っている。
特別だから躰を繋げる行為も出来るのだ。
でも自分と一緒に居る時に彼の可愛い口から他の者の事なんて聞きたく無い。
ああ・・・俺のマスターこんな気持ちを何度も味わっているんだろうな・・・
こんな愛くるしい恋人をもつと気苦労が絶えないって事だな。
一人で納得し笑みを浮かべるクリティウス。
そんな彼にティマイオスは、訝しい表情を浮かべながらクリティウスの鼻を摘まみ。
「一人で笑ってるなんて変なヤツ」
「そうか?」
鼻を摘まむ手を掴みその手に軽く口づける。
「そうだぜ」
暫く見詰めあいどちらかとも無く笑みが零れる。
「ティマ 俺は、お前さえ傍にいてくれたらそれだけでいい。だからこれ以上の願いは、俺には、無いんだ」
「じゃ・・・オレだけを永遠に想ってくれるのか?」
「お前以外俺は、誰を想うのだ?」
俺には、お前しか居ない。
「オレもお前以外ココには、居ない」
薄い自分の胸を触らせながら言うティマイオスが愛おしい。
・・・きっと俺(オレ)は、この人が居ないと生きていけない・・・
この想いを永遠に抱きしめて
何度生まれ変わっても見つける。