増減
相棒と躰が別れて直に海馬邸に連れて来られた。
そこで待ち受けていたのは、瀬人との新婚生活・・・
(旦那様を氏で呼ぶのもどうか・・・と相棒に言われたので名で呼ぶようにした)
正直そんな気持ちなんてサラサラ無かった。
ただ居候をするつもりだったんだ。結婚なんてその後でもイイと思っていたのに・・・
何でこうなったのかオレには、解らない。
夫婦と言うだけあって部屋は、2人で同じ部屋を使っている。
とは、言っても瀬人の仕事の邪魔をしたくないので寝室のみを一緒にしてもらった。
オレだけの部屋も欲しかったからだ。
まぁ簡単な間取りは、『瀬人の書斎』≪『寝室』≪『オレの部屋』となっている。
それにオレだってモニターの仕事もしているから誰にも邪魔されたくない。例えそれが瀬人であってもだ。
++++
一緒に住んで何ヶ月か過ぎた。
相変わらず仕事が多忙な旦那様。その多忙さゆえ最近では、不機嫌丸だし状態。
まぁアイツが機嫌良い所なんてそうそうに見れないけど・・・
「遊戯!」
掴まれた腕が痛い。抱き寄せられスーツから香るコロンの匂いは、好きじゃない。オレと瀬人に在る見えない
壁の様だから。でも感じる温もりは、好きだ。今自分だけを写しているアイス・ブルーの瞳を真直で見る
のも好きだ。
年若いのに眉間に寄せた皺が彼を老けさせていると思う。
思わず伸ばした腕。指先で眉間の皺に触れてみる。
それが不愉快だったのか腕を掴まれ顎を固定され触れて来る温もりに酔ってしまう。
酔っている最中に躰から力が抜けてしまい瀬人に御姫様抱っこされてしまう。
暫くして離される唇。互いを繋ぐ銀糸がどれだけ熱烈なキスをしていたのか物語って居る。
更に近くでみる蒼い瞳。その瞳の奥に篭っている熱。それを引き出したい・・・
そう想っていると
「貴様 最近軽くなったのでは、ないか?」
「はぁ?」
予想外な言葉が
「最近 夕食をちゃんと取ってないそうだな?」
「そんな事無い・・・ぜ・・・」
語尾が小さくなってしまう。
瀬人が言うように余り食事を取ってない。それは、ココ最近の話では、無い。
この屋敷に来た時からだ。
「食事は、貴様の好きなモノを中心として作られているはず。それなのに何故食べない?
それとも貴様の口に合わないのか?だったら改良させるが・・・」
海馬邸のシェフが作った料理は、どれもこれも美味しい。
それこそ今迄瀬人が連れて行ってくれた何処の高級料理店の料理より美味しい。
でも食が進まない。
「どの料理も美味しいぜ・・・」
「だったら・・・」
「・・・瀬人もモクバも・・・居ない。一人で食事をしてもつまらない・・・」
恥かしくて言えなかった気持ち。何とか口に出したもののやっぱり恥かしい。自分でも顔が赤くなって
いると解るぐらい熱い。
そんな顔で瀬人を見れば瀬人の蒼い瞳が丸く見開かれ瀬人の顔も少し赤い気がする。
「あ・・・いや・・・そのだな・・・」
いたたまれない気分になる。何を言っても只の弁解でしかないような気がしてきた。
「俺かモクバが居れば貴様は、ちゃんと食事を取るのだな?」
その表情が何だか嬉しそうだ。だから正直に肯く。
そして翌日から瀬人は、出来るだけ早く帰宅し遊戯と共に夕食を取るようになった。
しかし仕事の関係で毎日屋敷で夕食を取るのが困難な瀬人。
それ故に遊戯を連れての外食も度々あった。
例え外食であっても瀬人と一緒に過ごせる時間を遊戯は、嬉しく感じていた。
しかし日を追う事に瀬人の眉間に刻み込まれる皺・・・
遊戯が自室で寛いでいると不機嫌極まりない表情の瀬人がノックも無しに入って来る。
ソファに座りながら雑誌を読んでいる遊戯。
雑誌を写していた瞳が
「おかえり」
瀬人に向けられる。
その瞳に瀬人の心から苛立ちが消えそうになるがそれでも表情を変える事無く遊戯から雑誌を取り上げ
床に落すと彼の隣に腰を降ろし自分の膝の上に座る様に促す。
渋々といった感じで遊戯は、瀬人に促されるまま膝の上に向きあう形で座ると後頭部を掴まれ引き寄せ
られる。
荒々しく重なる唇。互いの歯がぶつかり合い少しばかり痛い。
息継ぎの為に離される唇。荒い吐息を吐きながら遊戯は、潤む瞳で瀬人を睨みながら
「何・・・なんだ・・・よ・・・」
冷たい蒼い瞳に灯る苛立ちに遊戯も少し不機嫌になる。
「貴様の体重が増えない。寧ろ少し軽くなった。」
どう言う事なのか気になる様だ。
「そんなのお前の所為だろ?」
「何故?俺の所為なのだ?俺は、貴様が言う通り一緒に食事を取っているだろう。それが何故貴様が痩せる
のと関係すると言うのだ。寧ろ太っても良いはずでは、ないのか?」
確かに今迄の摂取量から考えれば増えているのだから体重も増えて当然なのだが体重が減ると言う事は、消費
カロリーが摂取カロリーを上回っていると言う事
「確かにお前は、オレの言う通り一緒に食事を取ってくれるでもHをする時間まで増えた!!」
一緒に居る時間が増えたので瀬人は、遊戯に手を出してくるのだ。
しかも一晩でする回数が増えてしまうという状態。
「これじゃ摂取するより消費する方が上だろう!!」
それに最近腹筋も付いてきた・・・否少し割れて来たと言ってもイイ位かもしれない。
「オレが少し体重を増やすまで性欲を抑える事出来ないのか?」
遊戯が困った様な表情を見せながら瀬人の顔を撫でているとその手を掴み。
「貴様を前にして俺に禁欲でもしろと言うのか?」
到底無理な話しだと思う。彼を前にして抑えていられるなら毎日襲わないだろう。
「禁欲しろなんて言わない・・・毎日してもイイ・・・でも一晩にする回数を減らしてくれてもいいだろ?」
甘えて来る遊戯に瀬人も言葉を失う。
遊戯にしてみれば無意識にしている事なのだから。
(こんな事をするから俺の欲望に抑えが効かなくなるんだ!!貴様も少しは、自覚しろ〜!!)
しかしそんな事で遊戯の体重が増えるなら・・・毎晩してもイイと言うのなら回数ぐらい減らしてやる。
その夜から海馬とのHの回数は、減ったし執拗に攻められる事も無くなった。
海馬としては、些か不満が残る行為になった様だが。
それでも1ヶ月ぐらい経ったアル晩。前々から行っていた土地買収が上手く行ったのか上機嫌な表情で帰宅
してきた瀬人。
「もしかして土地の買収成功したのか?」
瀬人の書斎で出迎えてくれた遊戯を抱き抱え顔中にキスをすると何かを確信したのか更に笑みを浮かべ
ながら。
「ああ、それも成功したしそれ以外にも・・・」
「?」
抱き抱えられたまま行く先に在るのは、寝室。
「せっ瀬人!!」
器用に寝室への扉を開けると長いコンパスを利用して数歩でベッドに辿りつく。
そこへ降ろすと言うより落される遊戯。
「・・・っ・・・何するんだ!!」
起き上がろうとすると瀬人が乗りかかって来て遊戯の躰を抑え込む。
「今夜は、俺が満足するまで貴様を堪能してやる」
口角を上げてニヤニヤしている。
「はぁ〜?何言ってるんだ?」
「貴様の体重が3キロ程増えた。」
「そ・・・それが・・・?」
増えたと言っても遊戯が海馬邸に来た頃よりまだ軽い。
「あ・・・あのさ・・・後5キロぐらい・・・増えて・・・も・・・」
恐る恐る言う遊戯だが瀬人は、
「確かにもう少し増やして問題ないだろう」
「そうだろう!!」
「だが俺の心も躰も貴様の全てを望んでいるのだ。貴様を心行くまで堪能したいと」
その後瀬人に心行くまで堪能されてしまった遊戯。余りの激しさ故に折角増えた3キロをあっと言う間に
ゼロに。
(このままだとオレは、生きながらにしてミイラになってしまうのか?)