北風と太陽-1-
海馬(北風)・遊戯(太陽)・城之内(旅人)だったら・・・
「おい 海馬賭けをしないか?」
「賭けだと?」
山頂で寛いでいた海馬《北風》に遊戯《太陽》が話しかける。
何時も不機嫌そうな海馬には、友達が全く居らず何時も一人で居た。
そんな海馬に遊戯は、事在る事に話しかけている。
「貴様との賭けは、面白そうだが賭けをする以上何を賭けるんだ?」
「そうだな オレが勝てばお前は、オレと一緒に他のヤツと仲良くする・・・って言うのは、どうだ?」
一瞬だが何かおぞましいモノが背筋を這い上がって行くのを感じた海馬だったがその事に気が付いていない
遊戯の顔は、嬉しそうに輝いている。
「貴様・・・俺が仲間だとかの絆を嫌うっているのは、知っていよう?」
「ああ 知っているぜ。でも一人で居るのは、寂しいもんだぜ?仲間が居れば楽しい事だってイッパイ在る。」
「その分 厄介事も多いと思うが?」
「それを皆で協力しあって乗り越えるんだぜ・・・そう言えば海馬が勝てば何を望むんだ?」
(そんなモン決まっている・・・俺が望むのは、後にも先にも貴様のみ)
だが素直では、無い海馬は
「そうだな・・・貴様の大切なものを頂こう。」
「オレの大切なもの?」
余りにも抽象的なモノ言いに遊戯は、戸惑う。
「俺には、これと言って欲しいモノなんて無い。だから貰うとしたら貴様しか持っていないモノを貰う・・・
それを要望とさせてもらう」
その言葉に
「いいぜ・・・オレが持っているモノで海馬が望むモノが在るのなら・・・」
「交渉成立だな・・・で・・・どんな賭けをする気なんだ?」
「後数分で山の麓を旅人が通るんだ。その旅人の上着を脱がせる事が出来たら勝ちって言うのは、どうだ?」
太陽である遊戯には、有利な話しだが海馬は、あえてその話しに乗る事にした。
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遊戯の言葉通り旅人がやって来た。
まだ年若い青年の様だ。
「あの旅人が羽織っているマントを脱がせる事が出来たら勝ちだぜ」
勝算があるのか自信満万に言う遊戯に
「そんな事は、たやすい事だ。先に俺からチャレンジさせて貰おう」
「いいぜ」
海馬は、風を起すと旅人に突き付ける。
余りの寒さに旅人は、マントを飛ばされまいとしっかり掴んでしまう。
「海馬 オレの勝ちだな?」
余裕の笑みを見せる遊戯を横目にしながら
「俺は、まだ『負けた』と言ってないが?」
「負け惜しみを言うなよ。みっともないぜ?」
「誰が負け惜しみなんか言うか。風には、こう言う動きもあるんだぞ?」
そう言いながら指先を上に向けると風が下から吹き上げてくる。
マントが捲れ上がり抑えているのも困難な状況に・・・
海馬が軽く指を回せば小さな竜巻が起り旅人からマントを引き離してしまう。
「これで俺の勝ちだな」
海馬は、遊戯を肩に担ぐとそのまま飛び立とうとするが
「オレは、まだ何もしてないぜ!!だからお前が勝ちだなんて言えるワケナイだろう?引き分けだって在りうるん
だから」
「それは、在りえんな」
「何故?」
「旅人のマントは、既に何処かに飛んで行ってしまったからだ」
海馬の肩の上から旅人を見ると確かにマントを羽織ってない。
しかも旅人は、猛スピードで走り去って行く。
その先を見れば小さな竜巻が旅人のマントを飲み込んだまま何処かに向っている最中。
「海馬ぁ〜これじゃ『北風と太陽』の本当の話しと違うじゃないかぁ!!」
「フン 愚かな過去の北風と俺を一緒にするな!貴様は、俺との賭けに負けた事に間違いは無いのだからな!」
確かに賭けの対象が何処かに行ってしまえば・・・オレの負けが決定???
だがよくよく考えればこれは、無効になる筈なのだがそれに気が付いていない遊戯は、海馬の言葉に翻弄され
るがまま負けを認めさせられ。
「お前が望むモノをヤルよ。確か『オレが持っているモノで海馬が望むモノが在るのなら』だったよな」
海馬が住みかにしている洞窟まで連れて来られた遊戯。
近付いてくる海馬の顔と手。
両頬を撫でられながら軽く合わさる唇。
「か・・・海馬!!」
「俺が望むモノは、貴様だ。貴様の全てを俺のモノにしたい。躰も心も・・・」
真摯な眼差しで見詰められれば拒否をする事を忘れてしまう。
強く求められる事がこんなに嬉しい事だなんて思いもしなかった。
押し倒され躰を弄られ気持ちが良いと感じてしまう。
多分こんな事を感じるのは、海馬に対してのみ。
だからこそ受け入れる事にした。
「抱くぞ・・・いいな・・・」
散々人の躰を嬲っておきながら今更だと思う。
「すきなように・・・」
だが返事を待っているかの様な顔をされれば答えるしかない。
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北風が太陽を堪能している間、旅人と言えば・・・
「あの北風の野郎 話しを無茶苦茶にしやがって!!」
只単に太陽とヤリタイだけだったんだろ!!
と川に落ちたマントを拾いながら文句を言っているのだった。