アンティ
最下層であるサテライトエリア。
どんな人間が住んでいるのか解らない無法地帯。
上層エリアに住んでいる者でさえ犯罪を犯せば一気にサテライトへと落される。
屑と判断された人間が集まる場所。
そこで生まれた者は、生まれながらの屑扱い。人権なんて存在しない。
そこで行われるゲームには、当然不当な賭け事は、当たり前。
人身売買に臓器売買・・・売春に買春・・・。
そこに住んでいて処女や童貞なんて在り得ない。
否 処女じゃなくても童貞なんてヤツも居ないだろう。
そう思いジャックは、遊星にアンティデュエルを申し込んだ。
そしてそれを遊星は、受け入れた。
2人が今居る場所は、人通りが全くと言ってイイ無く光が差し込まない地下。
湿った臭いが鼻を吐くが今は、そんな事どうでもイイ。喰うか食われるかが今の問題なのだから。
トップスエリアで行われているライディング・デュエルと意気込みたい所だがサテライトにそんな高価なモノは、
存在しない。
故に古くから使われてきたデュエルディスクによるデュエルを行った。
《遊星が処女で無いのは、頂けない事だがそれでも遊星が手に入るのなら・・・》
そんな事を思った。
遊星に勝つ自信は、5:5・・・否 7:3で勝つ自信があったがそれは、冷静で居られる時の事。
気持ちが急けば勝てるものも勝てなくなる。
そして危惧してた通り冷静さを欠きそうになった時流れが遊星に向きかけた。
どれだけ冷や汗が流れそうになった事か・・・
それでも何とか遊星に勝てた。
「遊星 俺の勝ちだな・・・アンティに従い貴様は、俺の望むモノを差し出さなければならない」
勝てた事に自分の気持ちがどれほど昂揚したか。
これで遊星を手に入れられる・・・と思った。
だがそれが落とし穴・・・躰が手に入るだけで心が伴わない。
それでも今は、遊星に自分を刻みつけたかった。
「お前は、何を望む?」
サテライトに居る以上カードを欲しがるとは、思えない。
だがジャックが何を望んでいるのか解らない。
「俺が望むのは、貴様だ・・・」
遊星は、ジャックの言葉に耳を疑った。
否疑ったのでは、無い言葉の意味が理解出来なかった。
自分の何を望むのか・・・
「オレ・・・オレの何を望むんだ?」
その言葉にジャックの方が驚きパープルの瞳を見開く。
(まさか・・・俺の言っている言葉の意味が理解出来てないのか?)
こんな状況で人を望むなら最後まで言わなくても誰でも解る事だと思った。
(本当に解らないのか?)
長い事一緒に暮らしたがまさか俺の気持ちに気が付いてない無いと・・・
だがその反面、気が付いてないから一緒に住む事が出来たのだが・・・
何時もは、クールな遊星。
そんな遊星が自分が与えた快楽によってどんな顔をするのか・・・
そしてどんな声を上げどう躰を捩るのか見てみたかった。
ジャックは、遊星の顎を指先で持ち上げ重ねる。
何が起きているのか・・・起っているのか解らない・・・
目の前に見えるのは、ジャックの瞳だけ。
そして柔らかい感触。
パサッ・・・
何かが床の上に落ちる。
口の中に何かが入ってくる・・・
「・・・っ・・・」
急に離れるジャック。
その口角から流れる一筋の紅い血。
それを手の甲で拭いながら。
「噛みつくのは、止めた方がいいぞ」
綺麗なパープルの瞳に狂気の色が宿るのを見た様な気がした。
背筋を駆け抜ける恐怖・・・
「な・・・何をする・・・」
遊星も又手の甲で己が唇を擦りながらよろける。
「何・・・だと?この状況でする事なんて決まっている。貴様は、その身で俺を受け入れるだけだ」
一歩一歩と近付くジャックに対し遊星は、ふらつきながらも一歩一歩下がって行く。
間合いと取りながら逃げる事を考える。
「逃げたいのか?逃げても構わない。だがそれは、貴様がデュエリストとしてのプライドを捨てたも同然。
貴様は、アンティに承諾しているのだからな」
そうオレは、アンティに承諾した・・・受けたくないデュエルなら断れば良かったのだ。
相手がジャックだからオレに無茶なアンティは、してこないと心の何処かで思っていたのかもしれない。
「それに貴様だってSEXぐらい経験があるだろう?」
「セッ・・・」
急に顔を朱に染め俯く遊星。そんな遊星の変化をジャックが見逃すワケが無い。
(まさか・・・経験が無いのか?こんな場所に住んでいて躰を賭けた事が無いのか?)
そう言えば遊星が誰かと寝たなんて話しを聞いた事が無い。
自分の中で狂気が狂喜へと代わるのが判る。
住んでいる場所が場所なだけに遊星が処女である可能性が少ない。
だから遊星の初めての相手に嫉妬しそうになった事なんて何回あったか。
だが初めてなのなら話しは、別だ。
真っさら彼に自分を刻みつける事が出来る。
無垢な存在を汚す事が出来る。
そんな喜びが身体中を掻け廻る。
それに遊星が逃げられない様に言葉による拘束もしておいた。
躰を本当に拘束して行為におよぶのもイイ。
彼の躰を拘束出来るのは、このサテライトでは自分だけだろうから。
だが彼の肉体に余計なアザは、醜いだろう。
何度も入浴中に見た彼の肉体。
想像上とは、言え縄や鎖の痕を重ね合わせた。
「ジャック・・・」
緊張した声に意識が戻される。
目の前に居るのは、肉食獣に捕食される草食獣。
緊張して怯えて見える表情は、寧ろ小動物が似合いだろう。
程よく着いた腕の筋肉。
それを指先で上下に動かすとビクッと震える。
「逃げないのか?」
勝者の笑みで問えば
「オレは、デュエリストだ。デュエリストとしてのプライドは、持っている」
アンティの条件を飲む・・・
可愛く健気な答えだ。
「貴様のその強気な態度が何処まで維持出来るのか楽しみだな」
自分を睨みつける蒼い瞳。
決して屈しようとしない意志。
そうそれでこそ不動遊星。
この俺が認めた唯一の男。
ジャックは、遊星を床の上に圧し倒すとそのまま馬乗りになり遊星のシャツに手をかける。
「本当は、ベッドの上で貴様を頂きたい所だが何時邪魔が入るか判らない。」
そう何時も遊星を取り巻く鬱陶しい連中。遊星は、連中の事を『仲間』だと言うが俺は、そんな事を認めて
いない。
胸元を弄ればビクビクと筋肉が反応する。
遊星のズボンのベルトを外しファスナーを下げ下着の中に手を入れ直に触れれば
「・・・やぁ!!何処を触っている!!あああぁぁ・・・」
焦りと戸惑いの声。手を上下に動かせば喘ぎに変る。
「やぁぁ・・・ジャッ・・・何を・・・」
何をする気なんだ?
怖い・・・こんな事は、知らない・・・嫌だ!!嫌だ!!助けて・・・
遊星の怯えた表情を目の前にし少しばかり心が痛む。
「こんな事をされて未だ何をされるのか判らないのか?貴様もしかして未経験なのか?」
思わず聞いてしまった。余りにも無知すぎるから・・・
だが遊星の反応を見て彼が本当に未経験なのだと判ると心がどれだけ昂ぶった事か。
「貴様が言う『仲間』なら貴様が何をされているのか判るだろうな・・・」
意地悪く言ってやる。
一度火が灯ってしまえば簡単に消す事なんて出来ない。
大人とも小年とも言いがたい曖昧な成長期の躰。
無駄な肉が着いていない。
その躰と自分は、繋がっている。
初めてと言うだけあってキツク痛い程締め付けられる。
突き上げ揺さぶる度に苦痛の声を上げていた口から聞こえるのは、嬌声。
胸元に散る紅い痕は、遊星が自分のモノとなった証。
何度も喘ぐ口を貪りながら腰を打ちつける。
背にまわされた指に力が込められる度に引っ掻き傷が刻み込まれる。
どれだけその行為に没頭したのか判らなかった。
だが遊星が目覚めた時、彼が目にしたのは、見なれた自分の部屋。
躰は、綺麗になり衣服もちゃんと身に纏っている。
何等何時もと変りは、無い光景。
ただ胸元に刻まれた紅い所有印と腰の痛みを除けば・・・の話しである。
痛む躯に鞭打って鏡の前に立てば
「何故・・・何故・・・こんな事をした・・・」
友と信じていた相手にただゲームの敗者として犯される。
恋愛感情が無い性欲処理のような行為。
悔しい筈なのに涙が全く出て来ない。鏡に写る自分の顔に浮かんでいるのは、疑問だけ。
(何故ジャックは、オレにこんな事をした?何かしらの意味があるのなら知りたい。)
ただ問いただしても彼は、答えてくれないだろう。
今度は、自分が勝者となって彼に・・・ジャックに何故こんな事をしたのか問いただしてやるだけ・・・
彼もデュエリストなのだ。デュエルでその問いに答えてもらう。
そう心に誓った。
スミマセン・・・