手紙


カタン・・・

ブロロロロ・・・・

 

室内から聞こえた単車の音。

急いで郵便受けを見に行くと1通の封筒が入っていた。

宛名は、この家の主の名前。

差し出し人の所には、住所が書かれて無く差し出し人の名前だけが書かれてあった。

だがその差し出し人の名前を見て大急ぎで家に入りリビングに在る棚の引き出しからペーパーナイフを

取り出し開封する。

ガサガサ・・・

慌ただしく出され開かれる便箋。

懐かしい文字と文面に思わず顔をほころんでしまう。

 

「何を読んでいるんだ?」

「手紙よ」

背後から自分を抱きしめてくる相手。

この家の主にしてこの手紙の宛名の主。

きっと自分の楽しそうな気配を感じて来たのだろう。

「誰からの手紙なんだ?」

頬を擦り寄せてきて軽くキスをして来る。

それを何処かくすぐったく感じ首をすくめながら

「懐かしい人よ」

封筒を彼に差し出せば

「あいつ元気にしているのか」

彼の顔も懐かし気な表情に変る。

「この手紙は、フランスで書いてるんですって」

「相変わらず定住してないようだな」

差し出し人の住所が書かれてない事を確認する。

「でも私と貴方の結婚式には、参加してくれるそうよ」

その事が書かれている便箋を彼に手渡す。

「どうやって私達の結婚の事知ったかしら?」

連絡を取ろうにも住所が解らない。

「この前エドに会ったそうだからその時にでも聞いたんだろう」

プロのデュエリストとして亮同様に世界を飛びまわっているエド・フェニックス。

どう言う訳なのかこの手紙の差し出し人と彼とは、頻繁に会うらしい。

エド曰く

『ヒーローデッキ所有者としての腐れ縁』になって来ているらしい。

そんな折りいろんな情報交換も行われるとの事。

多分その情報交換の祭にでも自分達の話しが出たのだろう。

そしてエドから彼に自分達の住所が知らされたのだと思う。

「じゃ・・・エドに頼もうかしら?私達の結婚式の日取りを彼に知らせる役目を・・・」

住所が判らないのでは、招待状を出す事が出来ないのだから

「『僕は、伝書鳩じゃない』と言われそうだな」

でもどんなに小言を言おうともエドは、引き受けてくれるのに違いない。

だって彼以外にこの手紙の差し出し人《遊城十代》と会える人物は、居ないのだから。

 

卒業して数年・・・どんなに彼が成長したのか楽しみだ。

そして自分もその年月分成長した。

成長した者同士どんな会話になるのかも・・・

 

 

 

 

後日亮から「十代は、昔のまま成長してないらしい」とエドから言われたそうだ。


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