再会
ブロロロロ・・・
パイプラインを突破してくる1台の赤いD・ホイール。
突破した先は、ネオ童実野シティ。
かつての友が住む場所・・・
セキュリティを突破した後どうやって友を探し出すか、その術を考えながらココまで来たが探す手間が省けた。
何故なら彼の方から出向いて来たのだから。
「久しぶりだな 遊星」
相変わらず高い場所から話しかけてくるヤツだ。
遊星は、無言のままヘルメットを外し彼を見上げる。
相変わらず無表情の遊星。
だがジャックには、気が付いてた。
彼が怒っている事を・・・2年前遊星の手元から大切にしている『スターダスト・ドラゴン』とD・ホイールを奪ったのだから。
友と信じてたヤツからの手痛い仕打ち。
そんな事をされて怒らないヤツは、居ないだろう。
そしてそれは、彼も同じ。ただ感情表現が乏しいだけなのだ。
「一先ず 貴様にこのカードを返そう」
そう言って投げてこられたのは、『スターダスト・ドラゴン』のカード。
サテライトに居る友との夢そして絆。
だが遊星は、そのカードを受け取るとそのままジャックに投げ返した。
理解不能な行動。
「ほ〜う カードは、要らないと言うのか?それともカードでは、無く別のモノが欲しいのか?」
何故ジャックに遊星がパイプラインから来る事が解ったのか・・・
それは、2年前彼自身もその手段でネオ童実野シティに来たからだ。
その際セキュリティの追跡は、無かったが・・・
そして遊星もこのルートを使うと予測していたのだ。
何故ならココが唯一の近道だから。
遊星がココまで来るのに2年かかったのもサテライトで手に入るジャンク部品で早々メンテナンス中とは、言え
短時間でパイプラインの突破なんて到底無理。
良い部品を探しD・ホイールを製作するには、それなりの時間がかかる。
製作してもその後、走行実験だってあるのだ。
遊星の事だから事前にパイプラインメンのテナンス日を調べ稼動していない時間も調べつくしているだろう。
それでも時間は、かかるのは仕方が無い。
だがそれを考慮しても2年なんてまだ早い方だ。
無表情でジャックの言葉を聞いていた遊星だったが彼の自信に満ち溢れたに身震いがしそうだった。
彼を余り長く見ていては、躰の芯に熱が篭りそうな錯覚を覚える。
TV画面で写る彼を見ている時には、何とも無かった・・・
否 彼が居なくなって暫くしてライディング・デュエルを見ていた時、居なくなった彼の姿を見ただけで躰が反応した。
彼によって躾られた躰が彼を求めたのだ。
だがそれに応えてくれる相手は、居ない。
自分で自分自身を慰める行為を何度となく繰り返した。
そんな悪夢の様な出来事を乗り越え今では、TVで彼を見ただけでは、反応しなくなったのに・・・実際の人物に
直で会うと抑えが効かない。
「デュエルで返してもらう」
何とか言えた一言。
「いいだろう。 貴様がどれだけ強くなったのか見てやろう」
白いヘルメットを装着し遊星が居る場所まで下りてきた。
マジックカードがセットされデュエルスタート。
相変わらず遊星のデッキは、チューナー中心の構成されたデッキ。
2年前と殆ど代わり栄えがしない。
だが確実に実力を身に付けている事は、容易に想像出来た。
今迄対戦した相手には、感じなかった昂ぶりに躰の底から歓喜の震えが駆けあがる気がして来た。
軽く感じる眩暈。
相手が遊星だからだろう。
手に汗握る一進一退の攻防に心が踊る。
ヘルメットで互いの表情が見えないが心なしか笑みが零れている様に見える。
++++++
数分後 決着が付いた。
流石は、キングと呼ばれているだけの事がある。
ジャックの圧勝だった。
『スターダスト・ドラゴン』は、今しばしジャックの手元に置いて置く事になる。
遊星は、心の中でサテライトに居る仲間に謝った。
「さて・・・遊星 貴様これからどうするつもりだ?」
ネオ童実野シティに来たばかり行く宛なんて無い。
「何とかする」
ぶっきらぼうに答えると
「なら 俺と共に来い」
「!!」
「貴様に拒否権が有ると思うな。貴様は、俺に負けたのだ。
敗者は、勝者の言う事を聞くもんだろ?」
アンティなんてしてない・・・それなのに何故自分は、ジャックの言う事を聞かないとイケナイのか?
遊星が困惑していると
「貴様は、『スターダスト・ドラゴン』を俺から取り戻さなければならない。
サテライトに居る仲間の為に・・・」
サテライトに居る仲間・・・
「俺の傍に居て俺のデュエル技術を盗めそして再度俺に挑戦し勝利しろ」
何故彼が自分なんかの為にそんな事を言うのか?
敗者は、捨て置けばいいのに・・・
だが差し出される手を何故自分は、払えないのか?
その手に自分の手を重ね様としているは、何故・・・
「その目で技術を見、心に刻み込め。貴様には、デュエリストとしての才能がある。」
「才能?」
「その才能を俺が開花させてやる」
取った手を手繰り寄せられ抱きしめられる。
近くで見る紫の瞳。
自信に満ちた顔。
何故か彼が言う事が全て現実となりそうだ・・・
「オレを強くしてくれ」
「ああ・・・必ず強くしてやる」
そう言って重なってくる唇を受け止めながら
(オレは、強くなる・・・そして『スターダスト・ドラゴン』を取り戻し何時かサテライトに戻る。
残して来た仲間の元にこの男と共に・・・)