嫉妬
再度行われたデュエルー。
前回同様、勝負に負けたオレは、半ば強制的にジャックに拾われてしまった。
彼に促されるままD・ホイールを走らせているとネオ童実野シティにそびえ建つ高層ビル群の中を走行していた。
何時もサテライトの瓦礫の山から見ていた高層ビル群。
それが不夜城の如くネオンを光らせ目の前に在る。
不思議な感覚だった。
暫く走った後一際高いビルの地下へと入って行く。
少し大きめのエレベーター前でジャックがD・ホイールを止めるので遊星も後に続き止めた。
「この中に入れろ」
開いた扉の内側は、広く人が30人以上入っても余裕が在るかのように見える。
ジャック専用のD・ホイールを最上階に運ぶ為だけのエレベーター。
彼が如何に大きな存在なのかが窺い知れるが今そんな事を気にしていられない。
先ほどからジャックの様子がオカシイのだ。
少し荒い息使い・・・多分体温も少し高い筈だ。
そして機嫌が悪い・・・
こんな時の彼の精神状態は、自分がよく知っている。サテライトで一緒に住んでいる時に幾度と無く見て来たのだ。
そしてそれを治めて来たのだから・・・
だが機嫌が悪い原因が全く解らない。オレの何が彼を怒らせているのか?
D・ホイールを乗せたエレベーターが最上階に向けて階を数え出した。
「俺達は、コッチだ。」
腰を抱き寄せられ近くのエレベーターに乗り込む。
これもジャック専用なのか階を示すボタンが最上階と1Fと地下と開と閉しか無い。
簡素と言えば簡素だ。他の階に降りないのだから仕方が無いけど・・・
2人だけしか居ないエレベーター内・・・そこで何度もジャックに腰を撫でられるがデッキホルダーが邪魔なのか
「・・・チィッ・・・」
と舌打ちする声が何度と無く聞こえて来る。
まさかと思いたいがデッキホルダーが無ければココで襲われる可能性が高いと言う事なのか?
先ほどからジャックの様子がオカシイのは、彼が発情しているからだ。
サテライトに居た頃何処かでデュエルしてくるとその興奮が治められず遊星を抱いて鎮めて来た。
チクッ・・・何故か胸の当たりを小さな針が突き刺さる感覚に首を傾げる。
エレベーターが目的の階に着いたので扉が開くと少し先に大きな扉が在った。
ジャックは、遊星の腕を掴みながら大きな扉を開けると目の前には、高価な調度品が置かれている部屋。
備え付けられている電話を取ると何処かに電話をしている。
その間に遊星は、部屋の中を見ている。
触れ様にも腕を掴まれているので動き回れない。
大きな防弾・防音ガラスがはめ込まれている窓。
造りからにしてはめ殺しと言うヤツだろう。
その窓から見えるネオ童実野シティを見てみたいと思うが近付けない。
電話が終わったのか
「行くぞ」
又、腕を引っ張られる。
痛いから引っ張らないで欲しい。
隣の部屋には、見た事の無い大きなベッドが中央に置かれている。
そのベッドに投げ出される。
「・・・うっ・・・」
幾らスプリングが効いていて柔らかいと言えど衝撃を受け止める祭軽くバウンドをするのだ。
一瞬息が止まる。
何とか上体を起そうとしたが圧し掛かってきたジャックによって阻止される。
「・・・はぅ・・・ふ・・・ん・・・」
チュクチュクと水音を発てながら舌を絡めあう。
服越しから施される愛撫。だがその手の動きが何と荒々しい事か・・・
《今すぐ繋がりたい》《欲望を吐き出したい》と言っているかのようだ。
彼が2年間どんな生活をして来たのか解らない。
でも無名だった彼が2年でキングになるまで昇った。そしてその地位を護る為に行われる防衛戦。
どんなに彼を興奮させて来ただろう。
チクッ・・・またもや痛み出す胸。
ジャックは、興奮した熱を冷ます為にSEXをする。
この2年間に行われたデュエルの回数・・・その全てとは、言わないが彼を興奮させるデュエルが在った筈。
だったらそんな時、興奮した熱を彼は、どうやって処理して来たのだろう?
彼が自慰をするとは、思えない。
だとしたら対戦相手と事に及んだかSEXするだけの相手が居たか。
もしかしたらこのベッドで・・・
そう思うとさっきより更に胸が痛み出す。
遊星の地肌を撫でる掌で自分が見た事の無い相手にも愛撫を施したのか?
そう思うと触られる事が嫌になってくる。
本人が意識していなくても躰が無意識の内に身を捩りジャックからの愛撫に抵抗してしまう。
先ほどまで大人しく自分のする事を受け入れてくれていた遊星が急に見せる抵抗に驚いてしまうがだからと
言ってココまで来て簡単に諦める事なんて出来ない。
更に遊星の性感を引きずり出そうと愛撫に手を強める。
ガリッ・・・
「・・・っ・・・」
ジャックが口を押えながら上半身を起すと彼を力無い腕で押し避け彼の躰の下から抜け出し床の上に転げ
落ちる。
その際躰を少し強打したけど今は、そんな事に構っていられない。
何とか立ち上がり
「向こうの部屋にソファ・・・在ったよな?オレそっちで寝るから・・・あっ・・・シーツとか予備が在ったら貸してくれ
ないか?そうそう・・・汗もかいてるからシャワーも・・・」
何とか言い訳をして逃れ様としている事は、視点が定まってない瞳を見れば一目瞭然。
「遊星」
「あっ・・・噛んでゴメン・・・」
次第に顔が俯き出す。
「遊星」
口元を少し押えながら彼の名を呼ぶが顔を上げようとしない。
あくまでもジャックの顔を見ない様にする気なのか?
微動だにしない遊星。
彼が俯いて動かないのならコッチから行くだけの事。
数歩の距離をゼロにした。
俯いていたのと考え事をしていたのでジャックが自分に近付いて来ている事に全く気が付かなかった。
彼の靴の爪先が見えた時には、既に時遅しで彼の腕の中に収められてしまう。
俯いていた顔を無理矢理上げさせられ左頬を何度も舐められる。
擽ったい。顔を左右に振り試みる抵抗。
だが後頭部を押えつけられては、どうする事も出来ない。
濡れた感触が少し気持ち悪い。
「顔にこんなマーキングを付けさせるなんて・・・」
マーキング・・・・?
ああ・・・そう言えばセキュリティによって左頬にマーキングを施されたんだ。
もしかして機嫌が悪いのは、このマーキングの所為?
「だがこのマーキングのお陰で貴様が何処に居ても俺は、貴様を探し出す事が出来た。」
(こんな下らないモノが発する電波が遊星を探す手だてになろうとは・・・)
愛おしい・・・と言わんばかりの表情がやけに恥かしい。
このマーキングのお陰でオレの行動は、四六時中コイツに監視されていた。
だがキングの権限とも言うかコイツの我儘のお陰で何故かセキュリティに監視をされずに済んだ。
「お前・・・セキュリティに何て言ったんだ?」
「貴様の監視は、この俺自ら行う。手を出すな・・・貴様の事を俺以外のモノが四六時中見ているなん
て想像しただけでも不愉快だからな」
「お前がやっている事は、俗に言う『ストーカー』ってヤツじゃないのか?」
本当に我儘だ。そんな1人の我儘がまかり通るなんてネオ童実野シティは、おかしな街だ。
「・・・うわぁ〜!!!!!」
急に持ち上げられ思わず声を上げてしまう。
足をバタ付かせてみるが直に落された。
落された場所なんて直に解る。白いシーツの上。
(本当にする気なんだ・・・)
胸が苦しくなるがそれも本の束の間
「ストーカーか・・・貴様が強制送還された後、このマーキングによって貴様の居所が解っても誰と会い何を
話しているのかどれだけ気になったと思う?もしかした俺以外の男に足を開いて受け入れているのでは、ないか
と何度思った事か」
収容施設に遊星が送られたと聞いた時どんな気持ちだったか・・・
自分の居ない場所で遊星が男達に回され餌食になっているかもしれない。
遊星に触れられるのは、俺だけの筈なのに・・・
どんな扱いを受けているのか正直気が気でなかった。
直にでも解放させたかったがキングとしてのプライドが邪魔をし助ける事が出来なかった。
ジャックの気持ちなんて知らない遊星は、恥かしい単語を言われ耳を塞ぎたい心境に追いこまれる。
(コイツ絶対楽しんでる!!)
言葉責めに弱い事を知っていて責めてきているなんて性悪だ!!
だがそうと気が付いていてもそれを防ぐ事が出来ない。
「逃げるな。こんなに興奮しヤリタイと思ったのは、2年ぶり・・・貴様とヤッテ以来誰ともしてない・・・」
「・・・えっ?・・・でも・・・たくさん・・・デュエル・・・」
「あんなデュエルでは、興奮も何も無い。見世物だけのデュエルなんて・・・」
そう言えば何時もつまらなさそうな顔をしてデュエルしていたな。
「貴様だけが俺を熱くさせる。そしてその熱を冷ます事が出来るのも貴様だけだ。」
紫の瞳が熱い。
この瞳に見つめられていると自分の躰の芯までもが熱くなる。
「じゃ・・・今迄誰ともヤッテ無いのか?」
「この2年間は、つまらなかった・・・する気も起きないほどにな」
「信じて良いのか?」
「貴様は、どうなんだ?」
「えっ?オレ?」
「貴様は、この2年誰ともSEXをしなかったのか?」
「してない・・・」
お前以外のヤツとは、したいと思った事も無い。
「自慰は?」
「してない・・・」
(何て事聞くんだ・・・!!)
「俺は,したぞ 貴様のこの躰を思い出しながら・・・」
うっとりとした表情ではだけ見える浮き上がった遊星のあばらに指先を微妙なタッチで這わせながら反応を
楽しむ。
「・・・う・・・っく・・・」
声を押し殺そうとする遊星だがジャックの指先は、更にその上にある飾りまで辿りつくとそこを嬲り始めた。
「良い反応だ遊星。もっと俺の愛撫に感じ身悶えろ」
少しずつ遊星の服を脱がし肌を露わにさせその都度口付けを落し紅い印を付ける。
強弱を付けて吸われる肌に擦れる金糸に感じてしまう。
遊星のズボンを剥ぐと下着を着けていなかったのか未だ成長過程の男根がヌルヌルの液を纏いながら姿を
覗かせる。
「ココには、触れても居ないのにヤラシイ液を纏って・・・貴様は、淫乱だな」
嬉しそうな声が恥かしい。
「お前・・・喋りすぎ・・・いい加減・・・黙れ・・・」
一つの台詞が一気に言えない。
それでも遊星は、蒼い瞳でジャックを睨むが熱で潤んだ瞳で睨まれても誘っている様にしか見えない。
その事は、2年前にも言っていたのに・・・
(フッ・・・本当に可愛いヤツだ。だが・・・)
余裕を見せているジャックだが本当は、早く遊星の中に発散したくてギリギリの所で己を抑えているのだ。
そんなジャックを何処かで感じたのか
「ベッドの中でお前が饒舌になるのは、気持ちがギリギリだって知ってるのか?」
飲み込まれそうな意識の中、何とか考えをまとめジャックの瞳を見つめる。
「だったら言葉を使わずに貴様に夢中にさせてもらおう」
言うが早いかジャックは、遊星と共に快楽の波に入って行く。
今迄誰とも情交を交わしてないと言うのは、本当らしく遊星の蕾は固く閉ざされ解さない事には、ジャックの
熱を受け入れる事なんて到底無理だった。
ことさらゆっくり解された場所に埋め込まれる熱。
久しぶりだと言うのに的確に遊星の良い所を突いて来る。
突き上げられる度に声を上げ身を捩る。
内肉が絡まり締め付けられる。
久しぶりの行為が初めてした時の様に緊張し興奮する。
少し苦しい体勢だがジャックは、遊星の顔のマーキングに再度舌を這わせる。
前回ジャックに負けた後、セキュリティに捕獲され着けられたモノ。
遊星の可愛い顔に見知らぬ者が着けた忌々しいモノ。
遊星に印を施して良いのは、自分だけ・・・
だが皮肉な事だがこれがあれば遊星が何処に居るのか直に解る。
複雑な気持ちだった。
そしてその時のデュエルによって遊星の腕に浮かび上がった『竜の痣』。
自分と同じ選ばれた人種。
階級社会において選ばれた人種は、特別扱いされる。
これからこのネオ童実野シティで暮らす遊星も特別待遇がされる。
そしれ自分達がこれから先、離れ離れ暮らす必要が無い。時間が許す限り自分達は、共にある。
時には、ぶつかり遭う事も在るだろうが離れていた時間を埋めるだけの事は、出来様。
この日 2人は、日が明るくなるまで濃密な時間を過した。
互いが離れたく無いと言うかの様に・・・