甘えん坊-1-
「何!!遊星が来ているだと」
デュエルを終え治安維持局内を不機嫌極まりない表情で歩くジャックに狭霧は、遊星が治安維持局
に来ている事を告げると先程まで不機嫌だったジャックの表情が一転して高機嫌へと早変わりする。
そしてその足取りは、軽く足に羽でも生えているのかのようだった。
「遊星!!」
局長室の自動扉を潜りぬけ開口一番に愛しい者の名を呼ぶ。
だがその名の持ち主からの返事が返って来ない。
当然といえば当然なのだが・・・
それでもジャックには、おかまいなし。
大股で局長室内を進めば応接セットが置かれた一角に辿りつく。
そしてそこに置かれているソファの上に捜し求めた愛しき者の姿が在った。
「遊星vvv」
その声は、嬉しそうで表情は、輝くと言う言葉がうってつけの様な感じがする。
だが名前を呼ばれた遊星は、ジャックの声が聞こえるや否や躰をビクッと震わせ緊張感を漂わせ始めた。
当初この2人の様子を面白がっていたゴドウィンだったが遊星を見つけたジャックの行動の早さに目を見張り
何時もと違う態度を示すジャックに驚いてしまう。
それもその筈、遊星を見つけたジャックは神業とも思える早さで遊星の隣を陣取り肩を抱き寄せグローブ越し
にキスの雨を降らせているのだ。
「や・・・め・・・」
ジャックから逃れ様と身を捩り抵抗をする遊星だが藻掻けば藻掻く程ジャックからの密着度が増すばかり。
「少し離れろ・・・オレは、用事があって・・・」
「用事だと?俺に逢いに来たのでは無いのか?」
「違う・・・大事な話しがあるって・・・・ゴドウィンに呼ばれて・・・」
「大事な話しだと。フン何の事かと思えば・・・やっと俺と遊星の婚姻を認める気になったか」
「違いますよキング」
黙って見ていたゴドウィンだがこのままでは、埒があかないと判断したのか声を出す。
「今日彼に来て貰ったのは、他でも在りません貴方に逢わないように言うためです。」
物静かに言うゴドウィンだったがその言葉にジャックの視線が険しいモノへと変る。
「オレにサテライトに帰れと言うのか?」
何とかジャックの顔を押しやりながら話しを進め様と試みる。
だがその手を簡単に拘束されてしまう。
がら空きの首筋に顔を埋めながら遊星の匂いを堪能しながらキスをする。
今の段階で痕を着ける様なキスは、しない。それは、夜の楽しみとして取って置く。
「そうしてもらいたいのは、山々なのですが・・・」
チラッとジャックの方を見て視線をもう一度遊星に戻すと
「そんな事をすればキングまでサテライトに帰ってしまう可能性があります。そんな事になればライディング・
デュエルに多大なる影響が出てしまう。その様な事は、避けなければならない。
ですから貴方には、このままネオ童実野シティに留まって貰います・・・」
「その代わりジャックに逢うなって事だな?オレは、別にいいぜ」
「話しが早くて助かります」
「俺は、断る。同じネオ童実野シティに居て遊星に逢えないなんてまっぴら御免だ。俺は、逢いたい時に遊星
に逢いたい」
「そんな我儘は、通りませよキング」
「遊星が傍にいないデュエルをしていても何の楽しみも無い。遊星が居てこそ俺のデュエルは、満たされる。
否 デュエルだけでは、無い。俺の身も心もコイツの存在によって満たされる!!」
「モニター越しに彼が見ていたとしても貴方の渇いた飢えは、満たされないのですか?」
「モニター越しだと?笑止!そんな曖昧なモノを通してコイツが見ていたとしても俺の飢えは、満たされる事は、
無い!」
第一そんな方法で満たされるのならとっくの昔に満たされている筈。
それが満たされて無いのは、直接彼の視線を彼の気配を感じないかからだ。
「遊星と俺を引き離すと言うのなら俺は、デュエルを休んででも遊星を探す」
遊星の顔にキスをしながら耳朶を甘噛みする。
それが擽ったくて首を亀の様に引っ込める遊星。
「ジャック・・・お前が居ると話しが進まない・・・」
「俺は、片時も貴様と離れて居たくないのでな」
本当は、今すぐにでも遊星を押し倒し繋がりたいのだ。
「貴様が居たら俺の性欲も満たされる・・・」
そんな言葉に真っ赤になってしまう遊星。
「誰かキングを拘束しておいて下さい」
呆れながら指示を出すゴドウィン。
数人のセキュリティの人間がジャックを拘束しようとするがなかなか遊星から離れない。
何とか引き剥がしロープで縛るが抵抗されてなかなか縛り上げられない。
「キングを大人しくさせていただけませんか?」
渋々だが遊星に頼む事にする。
「ジャック・・・良い子だから大人しくしていてくれ・・・」
遊星の誘う様な眼差しに一瞬ひるんでしまう。
その隙をついてジャックは、ロープで縛られてしまう。
「・・・話しの続きをしましょう・・・」
「俺は、絶対に遊星を手放さないからな!!」
「キング 少し静かにしていただけませんか?」
「嫌だ!!」
「ジャック・・・」
「!!」
(くそ〜何故その様な誘う目で俺を見る!!)
ジャックが無言になった隙をついて口にガムテープを貼って黙らせる。
これで静かに話しが出来ると思っていたが今度は、躰を捩りジタバタと暴れ出す。
その姿は、駄々を捏ねる子供の様にしか見えず。
「キングは、サテライトでもこんな感じだったのですか?」
ジャックの扱いに今日程梃子摺った事は、無く思わず遊星に聞いてしまう。
「・・・更に悪化している・・・」
その言葉に眩暈を覚えてしまう。
「では、君にはキングの御守役として留まってもらう方が我々の仕事も減ると言う事ですね」
「「えっ!!」」
顔面蒼白になる遊星と超が付くほど喜んでいるジャック。
(オレは、ココに来てまでジャックの御守をしないとイケナイのか???)
これから先の出来事に気落ちしている遊星の横で遊星との虹色の生活を夢見るジャック。
「よろしいのですか?」
「よくは、在りませんが仕方がありません。シグナーを2人同時に失うよりは、ましでしょう・・・」
気苦労が増えるゴドウィンであった。