キングとペンギン-5-
「『遊星』ちゃん顔のマーカーなかなか落ちないね」
腕のマーカーは、綺麗に落ちているのに顔のマーカーが全然落ちない。
狭霧は、毎日『遊星』の顔を石鹸水を少し染み込ませたタオルで拭いているのだが何故か落ちない。
(まさか・・・)
思い当たるフシが在るのだが・・・元々このマーカーが原因で不仲状態になった事がありもう2度としないと
約束までした筈。
気になり先日までの監視カメラを見なおすと嫌な汗が噴き出して来そうだ。
監視カメラが録画していた光景。
素面のジャックが『遊星』を目の前に置きマーカーで落書きしているのだ。
しかも『遊星』は、大人しく成すがまま成されるがまま状態。一切の抵抗も見せてない。
「アトラス様!!『遊星』ちゃんにマーカーで悪戯をされては、ダメでしょ!!!」
リビングでデュエル雑誌を読んでいるジャックに怒鳴りこむ狭霧。
当のジャックは、慌てる様子も無く。
「悪戯だと?悪戯では、無い!」
手にしていた雑誌を放り投げると、
「コイツは、この俺のモノだ。このキングであるジャック・アトラスのな!!俺がコイツをどう扱おうが俺の勝手だ!!」
クッションの上で寛いでいる『遊星』を小脇に抱き抱え声高等かに宣言する。
何時もなら抵抗する『遊星』だがココ最近メッキリ抵抗しない。
無表情な顔は、何処か諦めの色を乗せている様に見える。
「このマーカーは、『遊星』が俺のモノである証!!」
「しかしですね。これじゃサテライトに送られる犯罪者に着けられるのと同じじゃないですか。」
ネオ童実野シティで犯罪を犯せばマーカーを顔に施され収容所に送られる。
そして収容所に送られた者は、自動的に最下層エリア、サテライトに送られるのだ。
そんな罪人達に着けるマーカーをモドキとは、言え『遊星』に施すなんて・・・
「『遊星』ちゃんにマークを着けるなら犯罪者が着ける様なマーカーでは、無くもっと違うモノにして下さい」
懇願するものの
「コイツには、これが似あっている。」
聞きいれて貰える様子が無い。
流石の狭霧も頭痛を覚えるが今尚小脇に抱えられている『遊星』は、言葉が解らないなりにも人間(ジャック・
アトラス)に飼われる苦労を小さな躰で感じ取っていたのだった。