叶えたい想い
不動遊星VS十六夜アキとのデュエル。
この2人のデュエルを誰しも固唾を飲んで観戦していた。
『サテライトの男』と『黒薔薇の魔女』忌み嫌われる両者。
しかしこのデュエルを見ていたのは、人間達だけでは無かった。
デュエル以外で人前に姿を晒す事の無い存在。
何時もジャックのデッキに存在しエース・モンスターとしてジャックに勝利を与えつづけていたレッド・デーモンズ・
ドラゴン。
彼もまた人々と同じ様にこのデュエルを観戦していたのだった。
スターダスト・ドラゴンとブラック・ローズ・ドラゴンが闘いの場面・・・
遊星は、決してスターダストに攻撃命令を下さなかった。
遊星は、モンスター効果を使い一時的とは、言え何度もスターダストとブラック・ローズを戦闘から外した。
レッド・デーモンズは、その闘い方をとても歯痒く思った。
もしこのデュエルがジャック・アトラスVS十六夜アキのデュエルだったなら自分は、確実にブラック・ローズを仕留め
ただろう。
それがジャックや自分の闘い方なのだから。
だからレッド・デーモンズには、遊星の考え方が理解出来なかった。
多分それは、自分のマスターであるジャックも同じだと思った。
デュエルが終えそれぞれが自分に与えられた場所へと戻る。
次のデュエルまでの僅かな休息。
先ほどのデュエルで酷い目にあった最愛のモノを見舞う為レッド・デーモンズは、急いでスターダストの元へと向っ
た。
決して一目に着く事無く・・・精神体のまま。
「スター・・・大丈夫か?」
「レッド来てくれたのか」
離れ離れになった愛しいモノの姿。
だが今の姿は、モンスターの時の姿では、無いマスターと同じ姿をしている。
自分達が互いに認めあった人の姿・・・
レッド・デーモンズは、仰向けで寝ているスターダストを労るかの様に優しくその身を抱き締める。
久しぶりに感じるスターダストの温もり。
「お前を近くに感じながらも俺は、お前を守ってやる事が出来なかった。」
「何を言っている・・・オレは、お前を近くで感じる事が出来ただけでも嬉しいのに・・・それなのに見舞いまで
来て貰ったんだ。更に嬉しさ倍増だ。」
健気なスターダスト。
レッド・デーモンズが少し力を込めて抱きしめれば痛いのだろうスターダストは、微かな呻き声をあげた。
「痛かったのか・・・すまない」
「いいんだ。こんな傷たいした事無い。」
デュエルが終われば自己治癒能力で直に完治する。
「ローズのヤツ・・・今度俺が対戦した時は、目にモノ見せてやる。」
怒りに躰が震えそうになる。
「レッド・・・そんなに怒らないでくれ。」
「何故だ!!俺の大切なモノに酷い事をしたんだ。怒って当然だ。」
「ローズは、苦しんでいたんだ。泣いているかの様にも見えた。」
きっとそれは、遊星も十六夜から感じただろう。
「本当の自分を見て欲しい・・・受け入れて欲しい・・・きっとローズは、マスターの悲しい気持ちを感じてやり場の
無い感情をどうにかしたかったんだ。」
「お前とお前のマスターは、甘すぎる。そんな甘さでは、何時か自分の身を滅ぼすぞ。」
「そうだな・・・もし本当に滅んでしまうならお前の目の前で滅びたいかも・・・」
とんでも無い発言だがスターダストは、何処か穏やかな表情を浮かべている。
「俺の目の前で消えると言うのか?」
「知らない内に消滅されるよりましだと思う」
確かに知らない所で勝手に消滅されるよりマシだ。
だが・・・
「俺の目の前でお前を消滅させるとでも思っているのか?もしそんな事が起きれば・・・」
「一緒に消滅してくれるんだろう?」
レッド・デーモンズの胸に摺り寄るスターダスト。
「もう少しこのままで居させてくれ・・・」
スターダストは、レッド・デーモンズそう懇願した。
その願いにレッド・デーモンズは、何も答える事をしなかった。
ただスターダストが求めるままにしてあげようと思ったから。
次、逢えるのは、この後に控えている自分達の闘い。
どんなに想い合っていてもその気持ちを隠して闘わないといけない。
・・・自分達のマスターと同じ様に・・・