夢牢屋
またこの日が来た。
3年前冥界に帰ったヤツの命日とやらが・・・
モクバとヤツが仲間と称したくだらん連中が勝手に『闘いの儀』が行われた日をヤツの命日を称しその日に
エジプトへ墓参りと称し旅行をする。
ヤツには、墓自体無いのに何処に参ると言うのだ?馬鹿馬鹿しいにも程が有る。
しかも墓参りと言って行く場所が観光地ばかり・・・何処が墓参りなのだ?
イシズ曰く
「ファラオの王墓は、このエジプトの地全てだと思えば問題無いと思いますよ」
だと!!
しかもヤツの墓参りという名目の旅費は、全て海馬Co.持ちと来てる。
まぁそれは、金の無い連中が哀れと思ったモクバが出資した事から始まり。
当時小学生だったモクバに全額出させるのは、気が引けると連中が言い出し俺にたかって来たのだ。
正直迷惑な話しだ。
自分達の事は、自分達の力で何とかすればいいのに。
だがモクバに頼まれれば嫌な顔も出来ない。
「しっかしオカルト嫌いの海馬が毎年アテムの命日をちゃんとしてやるなんてどう言う風の吹きまわしだ?」
何時もの如く海馬に突っかかる城之内だが海馬は、そんな事に一々構う気が無いのか無視を決めていた。
「城之内君 言い過ぎだよ。海馬君にとってももう一人の僕は、特別な存在なんだよ」
「だってよ〜。」
「城之内 大事な事忘れてねぇ〜か?オレ達が毎年こうやってエジプトに来れるのは、海馬が旅費を全額
負担してるって事をよ?」
「そっそんな事忘れてねぇよ」
「フン 案ずるな俺がこんな茶番に付きあうのは、今年が最後だ。」
そう言うと海馬は、エジプトで1・2を争う高級なホテルフロントでカードキーを受け取る。
サラリと言ってのける海馬の言葉に慌てた〈遊戯〉達は、海馬の元へ駆けより。
「海馬君 城之内君は、悪気があってあんな事言ったんじゃないよ」
「城之内 お前の発言が問題なんだ。ちゃんと海馬に謝れよ」
本田に小突かれながら海馬の元へと行くが
「俺は、貴様等の様に暇では無い。既に来年1年分の予定が詰っているだけだ。
それに案ずるな貴様等の『墓参り』と称した旅行の旅費は、今迄通り出してやる」
それだけ言うと〈遊戯〉達をホールに残しサッサとエレベータに乗りこんだ。
「ゴメン・・・兄様本当に忙しいんだ。今日だって何とかスケジュールを空けたんだ。」
しかも空けられたのは、1日だけ明日からは仕事に戻らないとイケなのだ。
「海馬君予定が空けられない程忙しいんだ・・・」
(そんなにもう一人の僕の事が好きだったんだね。)
でもそうなると来年から来れないのは、残念だと思う。
だが海馬の事だちゃんとスケジュール調整をして別の日にでも来るだろうと思う事にした。
-エレベータ内-
動いている筈なのに何の音も揺れも感じない。
「フゥ・・・」
海馬は、軽い溜息を吐くと側壁に持たれかかり動く景色を見ていた。
(こんな下らない茶番に付きあうのも今日が最後。
あいつ等が会いたくても会えないヤツを俺は、手に入れた!!)
「クククク・・・」
片手で顔を覆いながら肩を揺らし抑えられぬ昂揚とした思い笑いに変えた。
「俺は、手に入れたんだ!!アイツを!この俺を無視し何の断りも無く勝手に冥界に帰ったヤツを!!」
どんなに俺は、アイツを求めたか!!
アイツが冥界に帰る事なんて許した覚えなんて無い。
アイツを何度酷いヤツだと思ったか・・・だがその反面逢いたくて逢いたくて仕方が無かった。
アイツに確実に逢えるとならこの命さえ絶つつもりで居たし実際その準備もしていた。
俺は、別にこの命が燃え尽きるまで生きると約束していたワケでは、無いのだ。何時この命を絶とうと俺の
勝手と言うモノだ。
ピィン・・・音共に開けられる扉。
目的の階に着いたのだ。
海馬は、足早に部屋へと向いカードキーを挿し込む。
電子ロックが解除される数秒が長く感じられる。
急いでジャケットを脱ぎネクタイ共々ソファの上に投げ捨てる。
その間にも足は、寝室へと向う。
寝室に入ったとしても何か特別なモノが置かれているわけでも誰かが待っているワケでも無い。
それでも待ち遠しいのだ。
海馬は、シャワーを浴びる事も着替える事もせずにベッドの上に横たわる。
瞼を閉ざせば広がるのは、暗闇ばかり。
上下左右なんて解らない。
否 解る必要なんて無いのだ。
暗闇に向って
「捕えられし者をココへ」
と命じればいいのから。
そして闇から現れたのは、まるで炎の様に逆立つ紅い髪に吊り上がった紅い紅玉の様な瞳。
高貴なオーラを身に纏い近付くいかなるモノも平伏せずには、おけない畏怖さえ感じた。
しかしそんな相手も今は、闇の呪縛を受け己が意志で動く事が出来ない。
「久しいな」
「久しい・・・だと数時間前に会った筈だが?それとも忘れたのか?それともその年で耄碌でもしたのか?」
皮肉めいた言葉を投げかけても
「1秒たりとも貴様と離れたく無い俺の気持ちを言葉に現しただけなんだがな」
海馬にしてみれば遊戯に逢えない時間は、無駄でしかない。その無駄な時間を終えやっと遊戯に逢えたのだ
自分の気持ちを遊戯にも理解して欲しいと思った。
「海馬!!この呪縛を解け!!」
海馬の気持ちを理解出来ないワケでは、無い。遊戯だって逢いたかったのだ。だが今自分が置かれている状況
が納得出来ない。
まるで囚人扱いをされている気持ちになるのだ。
だから遊戯は、鋭い眼光を放ち罵る言葉を吐くのだが海馬にしてみれば罵られ様と遊戯から向けられる鋭い
眼光を前に自分がだけが写っている事に喜びを感じてしまうのだ。
「解いたとして貴様は、俺の中に留まるとでも言うのか?」
海馬の視線をまともに受け止める事が出来ず遊戯は、顔を反らし俯いたまま
「そんな・・・留まる事なんて出来ない・・・」
苦しそうに言葉を詰らせながら言う。
「だったら解くわけには、いかないな」
何度も同じ質問を問い何度も同じ答えを返した。
だから遊戯が言う言葉なんて予め解っていたのに問うてしまう。
もしかしたら『留まる』と言うかもしれないと言う期待からだろう。
「海馬 オレは・・・」
まだ何かを言おうとする遊戯の唇に自分の唇を重ね合わせ言葉を遮る。
しかも触れる様な甘いキスでは、無い。吐息までも奪う様な激しいキス。
酸欠を起こし苦しくなる海馬を押しやろうにも両手を動かす事が出来ないし足で蹴ろうにも自由に動かない。
首を振ろうにも顎を掴まれていて振る事が出来ない。
「!!っ・・・」
急に離れた海馬。
口腔内には、鉄の味・・・
「ククク・・・この俺に楯突くつもりか?威勢のイイ事だがそんな事をされてこの俺が怯むとでも思ったのか?」
寧ろその逆。彼の気持ちを奮い立たせてしまったに過ぎない。
押し倒されたのか否か・・・
上下左右なんて無い空間。
海馬がその場所が『床』だと思えば床になる。
この空間内で衣服を脱がせる事なんてたやすい。
海馬が望めば遊戯の身を包んでいた衣服は、簡単に消えてしまうのだ。
「男とは、思えぬ程肌理細やかな肌だな。」
ウットリとした表情で遊戯の肌に触れながら新たに印を付ける。
「まるで処女の様な顔しておきながらこんな淫らな印を躰中につけて・・・」
「やめ・・・うっく・・・」
「ククク・・・恥かしい蜜まで零してそんなに待っていたのか?」
「ちが・・・」
「違わない。それにしても数時間前に開いてやったのにこの可愛い蕾は、既に固く閉じているな。」
ああ・・・そうだった何度躰を重ねても遊戯の蕾は、数日経てば固く閉じていたな。
だが本当は、数時間で固く閉じていただなんて。
「本物の処女の様だ。」
固く閉じている蕾を何度も何度も指の腹で撫でながら少しずつ飲みこませて行く。
「本当に男を知らないとでも言うかのような固さだな」
解さないと最大にまで勃起した海馬のモノなんて入りそうにも無い。
「・・・あっ・・・やぁ・・・」
グチグチ・・・と音を発てて蕾が解されていく。
どれだけ時間を掛けたかなんて解らない。
最後に遊戯に求められ海馬がそれに応えるかの様に躰を繋いだのだから。
快楽の虜となった遊戯は、なんと淫靡な存在なんだろう。
感覚を追い求め身を捩り啼き背を反らせ絡みつく。
否定や抵抗なんて微塵も感じない。
貪欲なまでに求められる。
現実世界では、どれだけの時間が過ぎたのか解らない。
ただこの時間が永遠に続くモノじゃない事ぐらい解っている。
また訪れる別れの時間。
海馬は、眠る遊戯の頭を撫で頬にキスをすると現実世界に戻って行った。
閉ざしていた瞼を上げ遊戯は、憂いをおびた表情を無意識の内にしてしまう。
痛む躯を起こせば蕾から流れ出て来る激情の証。
胸元には、海馬しか着ける事が許されていない所有の印。
多分 海馬に触れられていない個所なんて無いのかもしれない。
躰と同じ様に心まで蹂躙されているのだから・・・
(海馬 お前の事だから気が付いているんだろう?
オレがこの暗闇から簡単に抜け出せる事を・・・それでもお前は、知らないフリをしている。)
遊戯を一度失った故にか海馬は、認め様としていない。
認めればまた失ってしまうかもしれないからだろう。
(海馬 お前が造ったこの暗闇の牢屋に囚われてやる・・・ああ・・・暗闇なんかじゃないな。
ココは、お前の夢の世界なんだから・・・
なぁ、海馬数時間後また来てくれよ。お前の狂気でオレを狂わせてくれ。お前だけを感じさせてくれ。)
辺りを見渡しても何も無い世界だが遊戯の心は、穏やかだった。海馬が傍に居なくても。
ココの空間自体海馬の心その物。何時も海馬に包み込まれていると言う安堵感がある。
海馬早く来てくれよ。お前がオレの為に造ったこの夢牢屋に・・・