歪望


「それでは、キング失礼します。」

ゴドウィンとイェーガーは、ジャックが居る部屋から出て行く。

出て行く2人に何の言葉もかけず狭霧が煎れた紅茶を啜るジャック。

その瞳は、シティの夜景に向けられていたが見ていたのは夜景では無かった。

 

「長官 サテライトの男は、今回のフォーチュンカップに本当に参加するのでしょうか?」

「参加しますよ。そのために彼の友人を特別室へ来て貰ったのですから。」

「そうでしたね。イヒヒヒ・・・」

ゴドウィンにとって今回行われるフォーチュンカップは、意味の有る物・・・

長年追い求めていた『赤き竜』が現れるかどうかがかかっているのだ。

そのために『シグナー』を探し招待状まで送った。

だが今回の大会は、『赤き竜』の出現と同じ様にゴドウィンには、別の目的が込められていた。

最初は、目的を達成させるために彼を餌に『シグナー』を集めるつもりだった。

その為に行う機嫌取りは、全く苦では無かった。

彼・・・ジャック・アトラス・・・

何時しかジャックの強さに牽かれていた。

そして彼自身が気が付いていない彼自身の内面の脆さを守りたいとさえ思っていた。

その為にいろいろとして来た。

見返りを求めなかった。

ジャックが『キング』であるかぎり・・・そして彼の態度が何時までも同じ事を信じて・・・

それなのにジャックの心は、サテライトから来た男に向けられ事有る事にサテライトの男の名前を言うように

なった。

 

サテライト時代、2人の間に何が有ったのか知らない。

彼等の関係も・・・

だがジャックの行動から彼等の関係が親友以上だと窺い知れる。

それでもその関係は、2年前迄の事。今は、関係無い筈・・・

(それなのにキングのあの拘り様は、尋常では無い。

きっとキングの中では、あのサテライトの男との関係は終わってない。)

今も継続中なのだ。

ではサテライトの男の方は、どうなのだろうか?

当の本人が居ないので解らない。

(『キング』よ。貴方がサテライトの男にも我々と同じ態度だったら私の心がこんなにも醜く歪む事は、無かった

でしょう。)

ジャックの心が唯1人に向いている事が許せない。

自分達を見ようとしないその態度が許せない。

(貴方には、失望しました。貴方のデュエルに惹かれていたのに・・・)

ゴドウィンは、自分の心の中からジャックの存在を消す事にした。

そして新たな『キング』を向える事にしたのだ。

そしてジャック以上の存在に育てあげる事に・・・。

(そうですね。新しい『キング』は、あのサテライトの男にでもなってもらいましょう。貴方が心に留める相手を・・・)

 

醜く歪んでいく自分の気持ちに歯止めが効かない所まで行っている事は、重々承知。

『追われる者』という立場から『追う者』へと転落した彼を惨めにも踏みつけるのもいい。

打ちひしがれる彼を飼うのも一興かもしれない。

歪んだ妄想が・・・歪んだ望みが・・・ゴドウィンを支配して行く。

 

 

 

人を傷つけ殺める事なんて何とも思わない。

私は、私の望みを叶える為に・・・


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