1人きりのクリスマス-ジャック編-


シティに来て初めてのクリスマス・・・

 

貧しいながらも仲間が集まって行っていたクリスマス。

普段無表情なアイツが最高の笑みを見せてくれる時間。

サテライトにもシティ程では、無いがイルミネーションぐらい在る。

 

寒空の元、『クリスマス食材の調達』と称し2人でイルミネーションを見に行く楽しい時間。

クリスマスに使う材料を購入し帰宅すれば仲間達は、御手製のクリスマスツリーに飾り付けを済ませ食材の

到着を今か今かと待っている。

簡易キッチンで2人で調理を開始。

調理が済むまで立ち入り禁止。

2人だけの空間。

立ち入り禁止の理由・・・どんな料理が登場するのか、それを楽しんで貰うため。

実際には、調理中何度もキスをするため。

流石にそれ以上の事は、時間の関係上出来ない。

それは、夜の楽しみとして取って置く。

ラリーが

「雪降んないかなぁ」

と呟けばタカが

「これ以上寒くなるのは、嫌だから降らなくていい。」

とボヤク。

「雪が降ればロマンチックじゃないか」

頬を膨らませているラリー。

「それならカードか御金が降ってきて欲しい。」

余りにも現実的な言葉。

「こんな時ぐらい現実から離れたらどうなんだ?」

ブリッツが言えばラリーも肯く。

些細なやり取りなのにそれがとても楽しく幸せに感じた。

時折(このままここでコイツ等と燻っているのもいいかもしれない)と思ってしまう。

だがそれは、戯れ事が見せる気の迷い。

自分が心の底から望んでいるワケでは無い。

本心は、シティに行く事・・・彼を元在る生活へと戻してあげる事。

その夢がもし今日叶うなら彼への最高のプレゼントだろう。

だが現実は、そんなに甘く無い。

夢は、夢のままなのだ。

それに彼自身それを望んでないのだ。

彼は、今の生活が続く事を望んでいた。

 

 

「ゆうせい・・・」

幾ら窓の外を見ようが見えるのは、シティの夜景。

サテライトを見る事なんて出来ない。

なのに彼が仲間と楽しそうにしている光景が目に浮かんで来る。

忌々しい光景。

 

コンコン・・・

「アトラス様出掛ける御時間です。」

秘書の女性が声をかけて来る。

「ああ・・・解った。」

彼の居ない今、クリスマスなんてモノを楽しむ気になんてなれない。

ならば予定を入れる方が気が楽だ。

彼の目に留るように・・・。

 

『さぁ〜この聖なる夜に美酒を味わえるのは、果敢なチャレンジャーか連勝無敗を誇る無敵の勇者

ジャック・アトラスか!!』

湧き起る喚声の中、白きモノサイクル型のD・ホイールに乗り颯爽と登場したジャック。

今の彼には、観客や挑戦者の存在なんてどうでもいい。

自分の姿を画面を通じてただ1人の人間にさえ届けばいい。

 

遊星、今夜の勝利を神にでは無くお前に捧げよう!!

 

きっとお前は、この試合を見ているだろうから・・・

この試合は、彼の為に行われた試合。

 

 

1人の人間から1人の人間への贈り物


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