MEET AGAIN


不動博士の忘れ形見、遊星とのデュエルで完敗したルドガー。

己が最後を振返り「何と女々しい戦いだったのか・・・」と思いは、するもデュエルをした事に後悔は無かった。

寧ろ自己満足とは、言え気持ちが良かった。

これで17年背負って来た罪を抱いて何も思い残す事無く地獄へと旅立てる筈だった・・・が最後の最後で心残り

が出来てしまった。

17年前自分が犯した罪を今度は、自分の弟が犯してしまったのだ。

二つの神の力を手に入れ様と・・・

5000年周期で行われるシグナー対ダークシグナーの戦い。

それに終止符を打つのは・・・自分達と同じ悲しき道を歩ませたく無いと思うのは、自分も考えた。

だが唯の人間が神になろうとするのは、神への冒涜。

おこがましい行為にしか過ぎない。

身に過ぎた力を手にすれば、その力によって滅ぼされる。

だからルドガーは、一方の力を手放したのだ。

『赤き竜』の力を・・・生きながらにして死してゆく己が躰から。己自ら命絶つ事叶わぬままに。

「遊星・・・否・・・『赤き竜』のシグナー達よ。お前達の力で我が弟の魂を救ってくれ・・・」

弟が犯した罪は、自分が背負うつもりだった。

「相変わらずだな。ルドガー」

聞き覚えの在る声。昔は、毎日聞いていた。懐かしく自分の心に温もりを与えてくれていた声。

その声がする方を見てルドガーは、驚いた。

「ふ・・・どう・・・博士・・・」

そこに居たのは、17年前自分が殺めた相手。

憮然とした態度で自分を見ているその瞳には、恨みや憎しみの色が感じ取れない。

「お前らしからぬ最後だったが17年間の間でお前は、変わってしまったと言う事だな。」

昔と変わらぬ態度にルドガーは、困惑した。

「何故・・・俺の前に姿を現した!!何故、俺を罵倒しない!!何故、罵らない!!」

声を荒らげ問うが不動博士は、涼しげな顔で

「何故、そんな事をしないといけない?」

質問を返して来た。

「何故だと?俺は、17年前貴方が止めるのを聞かずモーメントを稼動させゼロ・リバースを起し取り返しの

つかない罪を犯したのだぞ!!」

貴方の命を奪い・・・貴方の子息の命を狙った。

「犯した罪は、確かに大きい。だがその罪は、お前だけが背負うモノでは無い。お前を止める事が出来なかった。

私にも責任が在る。」

不動博士は、死して尚霊界に旅立たず現世に残した我が子と生きながらにして死人となった部下。

そして今新たな神になろうと試みる部下の身を案じ自分の力の無さに心を痛めていた。

だがそれを今弟の愚行を止められず悔やんでいるルドガーの前では、おくびにも出さず17年前と同じ態度を

取り続けた。

それが今自分が出来る唯一の事だったから。

「何故・・・貴方は、昔のままなんだ?俺を瞋恚の炎で焼いてくれたらどんなに楽か・・・」

項垂れるルドガーに

「ダークシグナーって言うモノになって不甲斐無いヤツへと変貌でもしたか?私と意見を戦わせたルドガーは、

何処に行った?」

「・・・もう・・・あの頃の俺は、存在しないのだ・・・不動博士」

(そう貴方に仕え共に夢見ていた俺は、既に存在しない。貴方を裏切ったあの日から・・・)

ルドガーは、不動博士から視線を逸らした。

「ホゥ〜。あの頃のお前は、居ないか・・・だったらダークシグナーで在るお前は、今も居るのか?」

「・・・遊星との闘いで消滅した・・・」

「では お前は、新たに生まれたのだな。」

「?」

何処か楽しそうに話す不動博士。

視線は、相変わらず逸らしたままだがルドガーの眉間に皺が寄る。

(この人は、何が言いたい?そう言えばこの人は、昔から得体の知れない所があったが・・・)

 

「新たに生まれたのなら過去の事に捕われるな。これから先の事を考えろ。」

「・・・」

「罪を忘れられぬなら罪に捕われず。罪を背負え。背負って地獄に行けばいい。」

「!!」

「お前は、この私の道連れとしてレクスと共に地獄に来るんだ。3人で地獄がどんな所か見ようでは、無いか。」

3人だと・・・?」

「そうだ3人だ。3人で新たにいろんな事を研究するんだ。」

不動博士の声が弾んでいる様に聞こえルドガーは、不動博士がどんな表情でそんな事を言っているのか気に

なり逸らした視線を不動博士の方に向けた。

しかも地獄で研究をすると言うのだ。どんな神経しているのか?

「やっと見たな。ルドガー憶えておくんだ。人は、その心と身に正と負の力を宿している。何時も鬩ぎ合っている

のだ。」

「だが俺は・・・」

「お前は、邪悪なモノに生きながら食われていった。だが食われていく最中お前は、自分が犯すであろう罪に

気付きレクスにドラゴンヘッドを託し将来において過ちを犯した自分を断罪させる事にした。お前が負に屈してい

ない事を意味しているんじゃないのか?」

「自分で自分の命を絶つ事叶わぬ事とは、悲しき事ですよ。不動博士」

生きながらにして食われて行く己が良心。どんなに辛かった事か・・・。

だが辛かったのは、己が心を食われる事では無く。愛する者を傷つけその命を奪ってしまう事だ。

「ルドガーいい加減私の心に気がついてくれてもいいだろう?私は、お前の所行を許すと言っているのだ。

だがそれには、条件が在る。」

「条件?」

「さっきも言ったが私やレクスと共に地獄に行くのだ。そこで一緒に研究をし意見を交わし過そう。」

この人には、適わない。そう悟った。

こんな自分達兄弟を見捨てず共に居様なんて・・・とんでもない上司だ。

そしてそんな上司に想いを寄せていたのは、自分達兄弟なのだ。

「適わないな・・・」

呟くと

「ん?」

「いえ・・・貴方の傍に居られるのなら着いて行きます。」

穏やかな笑みを浮かべるルドガーに不動博士は、笑みを浮かべ。

「では、ここでレクスを待つとしよう。」

「はい・・・」

この人が一緒に居るのなら地獄も悪くないかもしれない。

 

何故なら自分達兄弟にしてみれば彼が居る場所が天国なのだから・・・。


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