sunny
spot
久しぶりの休日。
たまには、頭を休めた方がいいのだろう。
連日の激務を思えばたまの休みは、在り難いものがあるが心が砂漠の様に渇いてしまう。
その原因は、大切な人に逢えないからだ。
しかも信じられない事にこの休みは、3日も続く。
多くの研究者や助手達が喜んだ事か・・・。
ただ中には、3日間の休みを貰っても嬉しく無い者も居る。
その中の1人にルドガーが居たのだ。
ルドガーは、昨日帰宅準備をしている不動博士に
「休みは、何か予定でも入れられているのですか?」
と訪ねた所、返って来た言葉は
「これと言って入れてない。ただ遊星とスキンシップを図りたい。」
息子を溺愛している彼らしいとしか言えなかった。
情けない話しだが彼を1人占めする遊星に対しは、嫉妬心を抱かずには居れない。
1日家に居るのも退屈なのでルドガーは、外に出てみた。
仕事中に浴びる事の無い日光が感じる事の無い風が気持ち良い。
これを不動博士と感じる事が出来たら・・・と想像してみたがどうしてだかそこに遊星の姿が思い描かれてしまう。
しかも仲の良い親子3人の様に・・・
そんな妄想に軽く眉間に皺を寄せながら駅近くの大きな公園に行ってみる。
これと言って行きたい場所なんて無い風の吹くまま気の向くまま、ただ散歩しているだけ。
ただ強いて言えば偶然でもいいから不動博士に逢いたいと思うだけ。
まぁそんな偶然なんてそうそうに在りは、しないのだが・・・
缶珈琲を片手に芝生周辺のベンチに腰掛けて一息を吐く。
「アウ・・・ダァ・・・」
「・・・・・?」
聞き慣れた声。
彼に逢いたいからと言って妄想以外に幻聴まで・・・しかも聞こえて来るのが彼の声じゃなく何故彼の息子の声
なのだ?
こう言う時に聞こえて来るのは
「遊星 何処に行くんだ?」
そう当然彼の声・・・?「遊星?」・・・否・・・こう言う時は、己を呼ぶ声だろう?
不思議に思い後ろを振返れば芝生の上をハイハイしてこちらに向かって来る遊星の姿とそれをベビーカーを押し
ながら追いかける不動博士の姿。
まさかこんな所で逢うなんて夢か?幻か?と我が目を疑えば。
「ルドガーじゃないか。こんな所でどうしたんだ?」
自分の姿に気付き笑みを浮かべて近付いてくる不動博士。
「あっ・・・いえ・・・ただ散歩を・・・博士は?」
答えなんて用意していないから慌てて言えば。
「遊星の世話。」
「奥様と御一緒じゃないのですか?」
こんな天気の良い日には、親子揃って散歩するなんて珍しく無いだろう。
「家内は、実家の両親と旅行中だよ。」
「博士と遊星を置いてですか?」
奥さんの行動にルドガーは、正直驚いていた。
「驚く事ないだろう?」
「しかし・・・こんな幼い子供を置いて・・・」
「オレにしてみれば好都合だがな」
不動博士は、プライベートでは自分の事を『オレ』と言い公私を一応別けているみたいだ。
「遊星を独占出来るからな。」
嬉しそうに足元に居る遊星を抱き抱えて頬擦りをしている不動博士。
(本当にこの人は、遊星中心で生活しているんだ・・・)
つくづく呆れてしまう。
(そう言えば・・・)
この人に近付けたのは、遊星のお陰なのだと言う事を思い出す。
余り人に懐つかない遊星が自分に懐いてくれたのだ。それが切っ掛けで自分は、他の者より不動博士に近付く
事が出来た。
遊星に感謝する事は、在れど嫉妬するなんて・・・。
不動博士を1人占めする遊星にさっき嫉妬していた自分に苦笑してしまいそうになる。
「遊星 おじさんが抱っこしてやろう。」
そう言って両手を出せば
「よかったな遊星」
不動博士は、遊星をルドガーに差し出す。
遊星は、ぐずる事なくルドガーに抱き抱えられ笑みを浮かべる。
「少し歩かないか?」
そんな誘いに嬉しくて歩を進めれば。
公園に来るまで感じていた渇きも満たされ心地よい気持ちにさせられる。
ドリンクを片手に他愛無い会話を取り止め無くしながら歩く公園。
(仕事以外で彼と共に居られるのな休みも悪く無い。)
彼に逢えないなら休みなんて不要だと思っていたが逢えれば普段見る事の無い彼の一面が見れて休みも
必要だと思える。
(これじゃ・・・遊星を中心に動いている博士と同じじゃないか)
自分は、博士中心に動いているのだから。
ああ・・・こんな日溜まりの様なj時間が続いたら・・・
幸せだろうと思っていたルドガーだったが3日間あった休みを不動博士の誘いで彼の家で過す事となった。