First
love
遊星が仲間(?)を連れて来た。
「ただいま〜。」
「おかえり遊星・・・?その箱は、何だい?」
小学校に通う遊星。
クラスメートのクロウから貰ったと言う小箱。
「何が入ってるんだい?」
興味津々で息子の部屋に付いてきた父親。
「ハムスターだよ。」
『!!』
「遊星 ウチには、既にジャックが居るじゃないか?」
『そうだ』
「ジャックの友達になればいいなぁ〜って思ったんだよ。」
『余計な御世話だ!!』
遊星の部屋に置かれたカゴの中には、ゴールデンハムスターのジャックが居た。
毛色は、アプリコットの短毛種でオス。
ジャックもクロウの所から貰ってきたのだ。
小箱をガサガサと引っ掻く音。
少しの隙間から見える小さな鼻。
その小さな鼻がヒクヒクと動いている。
「遊星 ハムスターは、単体で暮す動物なんだよ。それ故に犬みたいに主従関係を持たない。
繁殖期以外は、同種族と言えどライバルなんだ。」
「じゃ・・・ジャックと仲良くなれないの?」
「相性が合えば仲良くなれんじゃないかな」
息子がシュンとしたのを見かねて声を掛ける。
「それより遊星。 早くこの子を箱から出してあげないと可哀想だよ。」
「うん」
返事をすると急いでカゴの準備をしだした。
「そのカゴどうしたんだい?」
「クロウに貰った。」
何と抜け目の無い子なんだろう。
あらかじめ友達からカゴと小道具を貰って来た上でハムスターを連れて帰って来たと言うのだ。
準備が整えられたカゴの中にハムスターが入ったまま小箱をカゴの中に入れ蓋を開ける。
警戒しているのかなかなか出て来ないハムスター。
だが外の事が気になるのか少し鼻先を出しては、引っ込め出しては、引っ込めを繰り返しながら小箱から姿を
現す。
現れたのは、チョコレート色のハムスター。
ジャックと同じ短毛種。
博士は、ハムスターのお尻の方を見て。
「遊星 付かぬ事を聞くがこの子は、もしかして男の子じゃないのかい?」
「そうだよ。」
あけっらかんと答える息子に博士は、軽く眩暈を感じていた。
「遊星 ジャックだって男の子だよ。ジャックの事を考えて連れて来たのなら普通は、女の子じゃないと。」
当のジャックと言えば隣に置かれたカゴが気になるのかそっちばかり見ている。
まぁ見ていると言ってもハムスターは、元々近視なので見えていないのだが・・・その代わり優れた嗅覚で相手の
臭いを嗅ぎ採っているだ。
『おい お前名前は、何と言うんだ?』
「遊星この子は、何と言う名前なんだい?」
『ルドガー』
「ルドガーって言うんだよ。」
「ルドガーか・・・カッコイイ名前だね。」
『良い匂いだ。それに声も良い』
ボソッと呟くルドガーにジャックは
『貴様!!遊星は、この俺のモノだぞ!!俺を差し置いて遊星に近付こうなんと考えるな』
『フン・・・誰があんな乳臭い子供に興味を抱くものか。我が興味を抱いたのは、傍に居る男の方だ。』
『何!!貴様ジジコンなのか!?博士は、遊星の父親だぞ!!』
『博士と言うのか・・・』
驚くジャックを余所にルドガーは、柵を持ちながらウットリとしている。
『あ・・・否・・・博士と言うのが名前じゃなくてだな・・・』
ジャックが必死になって説明しようとしているがルドガーの耳に届いている様子が全く無い。
ルドガーを見て遊星が
「ルドガーが柵から離れないよ」
「散歩にでも出たいんじゃないのかい?」
そう博士に言われてルドガーをカゴの外に出すとルドガーは、一目散に博士の元に駆け寄る。
駆け寄ると言っても博士は遊星の後ろに居るしルドガー自身は、棚の上なので棚ギリギリの場所までしか行け
なかった。
散歩をさせる為に遊星が手を差し出すとそれを除けてしまが博士が手を差し出すとソソクサと乗る。
「ルドガーっておとうさんの事好きみたいだね。」
「ははは・・・そうみたいだね。」
『ライバルじゃないのは、一安心だが・・・』
ライバルにならないのは、嬉しいのだが自分が惚れた相手が蔑ろにされたされた様な複雑な心境に陥る。
その頃ルドガーは、博士の腕を這い上り博士の肩の上。
博士の頬に小さな両手を当てて小さな鼻をヒクヒクさせて博士の匂いを堪能していたのでした。