水を纏いて
「気分転換してくる」
そう言って不動博士は、研究室を後にした。
既に深夜。こんな時間に何処で気分転換をするのか?
だが助手を勤める2人は、何処に行くのか行き先をあえて聞かなかった。
聞く必要が無かった。博士がこの時間に行くとしたら1箇所しかないからだ。
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天窓から差し込む月明かりを全身に受けながら水面に躰を預ける。
ただ漂っているだけ・・・
「ふどう・・・は・・・」
なかなか戻って来ない不動博士の様子を見に来たルドガーだったがあわよくば不動博士と一緒に泳ごうと
思った。
研究室に戻るのが遅くなる事は、予想出来ていたのでレクスには、先に帰る様に指示を出しておいた。
月明かりに浮かぶシルエットに(美しい)と感じ魅入ってしまった。
視線が外せない。
だが何時まで経っても身動き一つしない不動博士の姿を見て不安に駆られた。
(まさか気を失っておられるのか?!)
慌ててプールに飛び込み不動博士の元へ一目散に泳ぐ。
「博士!!博士!!」
不動博士の傍に行くと細い両肩を掴む。
「煩いよ。そんなに大声出さなくても聞こえているから」
それでも瞼を開ける事無く水面に躰を預けたままだった。
「博士・・・意識を無くされたんじゃないですね。」
不動博士の声を聞いて一安心したが
「身動き一つされないからどれほど心配した事か!!」
沸沸湧き起こる感情。水面に漂って身動き一つされない不動博士にどれだけ心配になり不安になったか。
それなのに不動博士から返って来た言葉が
「気持ち良いんだ。心が落ちつく・・・」
だった。魅了してやまない蒼い瞳を隠したまま・・・。
本当に気持ち良さそうにしている。
瞼を閉じている事を良い事にルドガーは、不動博士の唇に自分の唇を軽く重ねるとゆっくりとだが不動博士
の腕がルドガーの首に回り引き寄せて来た。
「君の唇は、少し固いね。」
口には、出さないが彼からの口付けは気持ちが良い。
もっと・・・と強請ってしまいそうになる。
「博士 躰が冷えてしまいます。プールから出ましょう。」
「そうだな・・・躰が冷えたら君が温めてくれるんだろう?」
グッ・・・と息を飲んでしまう。
何と言う魅惑的な殺し文句なんだろう。
ルドガーのオスが反応してしまう。
今尚水面に躰を預けている不動博士の躰を抱きしめる。
「そんなにキツク抱きしめたら息苦しいよ。」
クスクス・・・と笑いながら話しかけてくる不動博士の躰を更に強く抱きしめてしまう。
「博士 躰が冷えていますよ。」
「温めてくれるんだろう?」
耳元で艶ある声で囁かれながら誘われたら理性の箍が外れてしまう。
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「はぁ・・・気持ち良いよ。」
冷たい水の中に居るのに躰が芯から熱くなる。
上半身をプールサイドに俯せで寝かせ下半身をプールの水の中に浸す。
片足に海パンを絡ませたまま腰を捕まえられ後ろから突き上げられる。
音響効果とでも言うべきなのかエコがかかって喘ぐ声が響きまるで歌声の様に聞こえて来る。
「そんなに大きな声で喘ぐと誰か来るかもしれませんよ。」
自分の弱い所を擦り突いて来る者が言う言葉に不動博士は、
「フフ・・・私が・・・そんな愚か者に・・・見え・・・あっ・・・るのかい?」
途切れ途切れに紡がれる言葉。
セキュリティの関係上このプールに監視カメラが設置されており管理室に映像が保管される。
管理室が在ると言う事は、監視をしている者だっているのだ。
だが博士の言葉では、監視かしている者の顎を軽く撫でると腰砕けの様に簡単に監視カメラのスイッチと音声
のスイッチを切ってくれ貸し切り状態にしてくれたらしい。
しかも念には念を入れて博士が開発した装置によって映像も音声も偽物を流していると言うのだ。
この人の手に掛かればセキュリティでさえ支配下に置けると言う事なのか?
今自分に突き上げられ善がり声を上げ快楽の虜になっている相手の魔性性に魅入られて取り憑かれし者達
に対して哀れむ事しか出来ない。
彼の艶めかしい声も躰も触れる事を許されている男は、自分だけなのだ。
しかもこの躰を蹂躙しこの躰に精液を注ぎ込む事が許されているのも自分だけなのだ。
如何に彼に魅入られ様が崇める事しか出来ない愚民には、味わう事が出来ない至高の喜び。
そう思うと自分の中に眠る凶暴な自分が目覚める。
「はぁぁ・・・ルド・・・あっ・・・大きい・・・大きくなった・・・あぁぁ・・・気持ち・・・いい・・・」
(壊れこの男に溺れてしまいそうだ・・・)
と思った。
ルドガーの一途な激しい想い。激情に捕われ飲み込まれてしまいそうになる。
だが捕われるワケには、いかない自分には守るべき妻子が居るのだ。
チクッ・・・胸に針が刺さる様な痛み。守るべきモノが在りながら守るべきモノを裏切る背徳感。
裏切り・・・後悔・・・懺悔・・・自分を苛むモノ全てから今だけは、解放されたい。
彼・・・ルドガーの腕に居る間は・・・
「何て淫乱な方なのだ。貴方は・・・」
ルドガー自身荒い息を吐きながら快楽を貪ろうとする博士に酔いしれる。
水を纏いしその姿のなんと淫靡な事か。
(貴方は、欲張りな方だ。欲が無い様に思わせておきながらその手にしたモノを手放せないで居る。)
だから自分と快楽を分かち合い味わっている間だけでもいいからそんな柵から解放させてあげたい。
ひとしきりプールで行為を堪能したのにも関らず2人は、シャワールームでも更衣室でも求めるまま求められる
まま行為に没頭した。
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研究室内仮眠室・・・
疲労が頂点に達し意識を飛ばしてしまった博士を腕に抱きながら
「顎を撫でるだけで監視室の者達を言いなりにさせるとは・・・」
一体どうすればそんな事が可能なのか?
「まさか催眠術でも扱えるとでも言うのか?」
自分が仕える主の秘めたる力に疑問を抱いてしまうばかりだがそう言う自分だって彼の秘めたる魅力に取り
憑かれ跪いたのだ。
「貴方に魅せられない者は、居ないと言う事か・・・}
この2人が穿いている海パンは、ブリーフタイプです。