Dark
Doll
旧モーメントの最下層。
旧モーメントの一角にルドガーが手を翳すと黒い渦が現れ人一人が通れるぐらいの空間が現れた。
その空間に入ると神秘的な光が辺りを光らせている。
光の元は、遊星粒子・・・
生前、不動博士が発見した未知なるエネルギー。
空間の中に1歩足を踏みいれると中央には、ガラスケースに覆われた寝台が1つ置かれていた。
そのガラスケースに近付くと中には、成人男性が1人眠っていた。
「不動博士・・・もう暫くお待ち下さい。私が必ず貴方を甦らせてさしあげましょう。」
愛おしそうに眺める。
そこに横たわるのは、17年前旧モーメントの暴走の時に亡くなった不動博士。
しかし彼の君の肉体は、17年前に肉片を残す事無く消滅しており再生なんて到底無理だった。
細胞による再生が不可能なら新たに造ればいい。
そんな発想からルドガーは、自身が持つ科学的知識を全て注ぎ込んで一体のヒューマノイドを作り上げた。
だがそのヒューマノイドは、何故か動く事が無く誕生してから1度も起動をした事が無かった。
流石のルドガーもこれには、頭を抱え込みメンテナンスを行い再度起動させたがそれでも動く事が無かった。
そして行きついた先が『赤き竜』の力の存在だった。
「『赤き竜』の力を貴方に注ぎ込めば貴方は、甦る。そうなるとまた私と共に歩んでくれますね不動博士?」
固く閉ざされた不動博士のヒューマノイド。
起動していないのだから返ってくる言葉は、無い。
解っている事だった。
不動博士は、17年前のゼロリバースの時に亡くなったのだ。
解っている解っているが・・・
でも認めたくない心が不動博士を模したヒューマノイドを造らせた。
如何に不動博士に似せていようが目の前に居るのは、不動博士では無い。
心の中での鬩ぎ合い。
本当は、起動させるのに『赤き竜』の力なんて必要無い。
起動さえる事なんて本当は、出来るのだ。
出来るのだがそうなると彼と過した日々が崩れ去って行く様な気がした。
それが怖いのだ。彼と過した大切な時間を・・・思い出を無きモノにしたくない。
そんな心がヒューマノイドの起動を阻止しているのだ。
だがそんな心が有るのを知っていながらも見て見ぬフリをして来た。
求める心に身を委ねる事にした。
「不動博士 今暫しお待ち下さい。」
目覚める事が無い事ぐらい解って居ても・・・それでも貴方と共に在りたい。