全てを捨ててシティに来たと言うのに・・・

全てを持ったお前に追いかけられる。

そう仕向けたのは、自分なのに彼の顔を見る事が・・・気持ちに応える事が出来ない。

自分の心を見る事が出来ない。

見るのが怖いのだ。気付くのが怖いのだ。

全てを捨てた気になっていて本当は、何一つ捨てる事が出来なかった。

女々しい自分の心・・・

自分の心を鋼鉄の扉で閉ざしダイヤの錠を下ろす。

それでないと彼・・・遊星の前で強気で居る事が出来ない。

昔の自分に戻ってしまいそうになる。

 

「ジャック・・・」

「遊星・・・」

 

蒼い瞳に映る自分の姿。

虚勢を張る自分の姿。

遊星の心には、どう映っているのか?

気になるが聞くのが怖い。

 

「ジャック オレの前では、ありのままのお前で居てくれ。」

ジャックの姿が余りにも痛々しく見える。

虚勢の鎧で身を固め誰にも心開かないジャック。

自分の前では、虚勢の鎧を脱いで彼本来の姿で居て欲しかった。

それが遊星にとって幼馴染みで親友で恋人で憧れの存在だったジャックに望む事。

サテライトに居た頃の彼は、輝いて見えたから・・・

 

ありのままの自分・・・

2年前に捨て去ったモノ。

2年の歳月の中で固めた虚勢の鎧を簡単に脱ぐ事なんて出来ない。

もし脱ぐ事が出来るのならその時は、シティで築き上げた全てのモノを捨てなければならない。

折角手に入れた富と名声をそう簡単に捨てる事なんて出来ない。

余ほどの力で打ち砕かない限り・・・

 

「ジャック 全てを・・・シティで築いたモノ全てを手放す必要なんて無い。キングで有り続けなければならない

のなら有り続ければいい。ただオレの前だけは、キング・ジャック・アトラスでは無く唯の人ジャック・アトラスで

居て欲しい。鎧を脱いだお前の全てをオレが受けとめるから。」

簡単じゃない事ぐらい解っている。

1度でも鎧を脱いだら・・・そこから綻びが生じ今迄築いたモノが崩れるかもしれないのだ。

キングの地位から転落してしまうかもしれない。

もし誰かがジャックから全てを奪ってくれたなら彼は、元の彼に戻ってくれるかもしれない。

淡い期待。

だがプライドの塊となった彼を倒す事が・・・彼から全てを奪える相手なんて居るのだろうか?

もし誰かに全てを奪われたら?

彼の心は?プライドは?

彼がダメになってしまったら?

そんな事を考える必要なんて無い。

全てを無くしてもオレがジャックの全てを受けいれる。

誰もジャックから全てを奪えないと言うのならオレが全てを奪う。

そしてジャックを取り戻す。

 

 

「簡単に全てを捨て去る事なんて出来ない。誰かに奪われるなんて想像したくない。」

例えそれが遊星であっても・・・。

寧ろ遊星だからこそ奪われたく無い。

彼の前では、何時までも強い『ジャック・アトラス』で居たいから。

 

「遊星 俺の全てを奪うと言うのならお前を全力で叩き潰す。」

「オレがお前の全てを奪い。お前の全てを取り戻す。」

 

例えそれが永遠の別れになっても・・・

その時は、ジャックの居る場所まで何度でも何処までも追いかける。

その時は、遊星に追いかけさせる。どんな場所でも・・・


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