侵食
ルドガーは、モーメントの光の柱に靠れて居た。
「何度蜘蛛の毒を注入しようが何度我の闇を注ぎ込もうが闇に侵される事なく輝きつづけるか・・・」
(不動博士・・・)
目頭を押さえながら瞼を閉じ思い出されるは、17年前の凛とした姿と数分前に会った姿。
今尚美しさを損なう事無くルドガーの前に居る。
「我と共に闇に染まって欲しかった。我の隣に立ちて我の見る世界を一緒に見て欲しかった。」
儚い夢。
情事の最中。
「如何に君の闇をオレの中に注ぎ込んでもオレは、君の闇に侵される事なんてないんだよ。」
そう言われた。
何故?どうして闇に侵されない?
まるで貴方が持つ光の方が我の闇より強いと言っている様では、無いか?
この世において闇の方が強い。人が居る限り闇が滅ぶ事なんてないのだから。
どうすれば貴方は、闇に染まり我と共に在ってくれる?
どうすれば不動博士が自分共に居てくれるのかルドガーは、17年間考えていた。
思いつく限りの事は、したつもりだ。
不動博士に遊星の事を話し『我が子に会いたい』と思う親心を利用しようとした。
更に遊星を痛め付ければ行為止めて欲しさに屈すると思った。
精神的にも肉体的にも責め続けたのに・・・どうして?
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「ルドガー 君は、鈍過ぎるよ。」
オレの心の闇の方が君の闇より深く色濃いのだよ。
君ぐらいの闇でオレが屈するワケ無い。
君がどれだけオレの精神的、肉体的に責めても意味が無いんだ。
君がする事なんて手に取るように解るから・・・。
ただ君がオレを裏切り他者の言いなりになるなんて想像出来なかったけどね。
「フフフ・・・まさかこのオレが・・・」
嫉妬心に侵食されようとは。
人の心は、何に侵食されのか解らないものだねルドガー。