選択
難しい表情でパソコンを睨み付ける博士にルドガーは、
「何か問題でも発生したのですか?」
熱い珈琲を持って傍に行く。
「まぁ・・・問題と言えば問題かもしれない。最大時の大きさが解らないのだ。」
「博士の優秀な頭脳をもってしても出ない答とは、些か興味を抱きますね。」
そう言って覗いたパソコン画面にルドガーは、固まってしまった。
そこに写し出されていたのは、紛れも無い男の一物。
しかも3D映像なのだ。
博士は、マウスを動かして他方向からその一物を食い入る様に見ている。
一体誰の一物なのか?
ルドガーの胸の内に広がる嫉妬。
画面端に出ている数字からにして博士のモノとは、異なるし普通自分の一物をパソコンに入れて3Dにして見る
なんてしないだろうしするとしたらナルシストぐらいなモノだと思う。
それにしても数値からにして普通の成人男性のモノより大きいであろうソレ。
一体誰のを見ているのか。
「やはり勃起をした時の映像も撮っておくべきか・・・」
少し零れた溜息と小さな声。
だがその声は、ルドガーの耳に届いていた。
「博士 貴方は、誰の一物を見ておられるのです?」
そんな事聞いてどうするつもりなのか?
相手に2度と博士に近付かない様に脅しでもするか?
ルドガーの苛立ちに気が付いていない博士は、
「君のだよ。」
平然と答えた。
「君以外にこんなに大きいのを持っている人物なんて早々いるのかね?生憎と私の回りには、君以外
居ないんだけど」
第一自分は、同性愛者では無い。
ただルドガーとは、躰の相性がいいのだ。
そう思う事で彼への想いを封じ込める。
「それをどうする御つもりです?」
もしかしたら・・・と言う気持ちが有る。
不動博士が自らが蕾に大きなバイブを突き入れ善がりながら前を擦り自慰をする。
そんな光景が目に浮かぶ様だ。
「ん・・・闇市で販売する。君レベルじゃないと満足しない人だって居るだろうから。」
だが帰って来た博士の言葉にルドガーは、ショックを受けてしまう。
確かにマニアックな人なら購入するかもしれない。
しかしどうやって闇市に卸すと言うのだ?
そう言うルートを持っているのか?知っているのか?
愕然としているルドガーを画面越しに見ながら思わず微笑んでしまう。
普段の彼からして見る事の出来ない表情。
それを見て『楽しい』と感じてしまう。
「博士がそんなルートを御持ちだとは・・・助手として博士の傍に仕えて来ましたが全く知りませんでした。」
青褪めた様な表情を浮かべ博士に頭を垂れるルドガーに
「知らなくて当然だよ。そんなルートなんて持ってないからね。それに闇市での販売だって冗談だよ。」
博士のその言葉にルドガーは、驚きの表情を浮かべながら
「だったら何故その様な画像を?」
「ん?深い意味は、無いよ。唯の興味本位。ああ・・・そうだ今度君のが勃起した時は、資料として写真を
撮らせて貰うよ。やっぱり最大に肥大している時で無いと意味が無いから。」
そう言うと博士は、画面のファイルを閉じ他のファイルを開け睨みつける。
博士の背中を眺めながら
(この人には、決して適わない。無邪気な子供の心で我が心を乱し惹き付ける。
凡人が思いつかない事を思いつき凡人がしない事を・・・難しい事を難無くやってのける。
我には、この人以外有り得ない。選択する余地なんて無い。)
上層部から他の部署への移動を打診されていたが博士の傍を離れる事なんて出来るワケが無いのだ。
例え博士と対等の立場を与えると言われても博士の傍を離れるなんて考えられないし自分以外の者が博士に
仕える事も博士の相手をする事も考えられない。
自分には、博士しか居ないのだ。
自分を翻弄する事も・・・自分の心を拘える事も・・・自分を服従させる事も・・・博士以外に出来る者なんて
居ない。
そこまで心酔するなんて狂気の沙汰だと思う。
「どうしたんだい?」
微動だにしないルドガーを訝しむ様に訪ねると
「何でもありません。珈琲が冷めてしまいましたので新しいのと交換して来ます。
そうそうレクスが菓子を焼いたそうなので共に御持ちします。」
何時もの冷静さを取り戻したルドガーは、冷えた珈琲カップをトレーに乗せると部屋を出て行く。
(貴方が俺に興味を抱くなら俺は、何でもしよう。)
例えそれがバイブのモデルだとしても・・・それが血塗られ如何に恐ろしい行為であっても貴方の為ならば・・・