残像
「・・・くっ・・・」
ちらつく忌まわしい陰。
「いい加減にしろ!!」
ガバッと起きあがる。
外を見れば見事な満月と満天の星。
それは、地上の星によって消された星を幻として再現したモノ。
実際の月の満欠けは、どんなモノなのかなんて知らないし知る必要なんて無い。
そんな感情なんて絶対王者には、必要無いのだ。
そう星屑に心を砕く必要なんてないそれは、サテライトの屑共にも同じ事が言える。
気にする事なんて必要無いのだ・・・それなのに・・・。
頭の中から離れない。
寝ても起きてもアイツの幻影が見える。
脳に残像として残っている所為かもしれない。
「あんなクズの事が何故こんなにも頭の中から離れない・・・」
サテライトで行ったデュエル。
仲間を庇い海に落ちたアノ男。
もしアノ男が『シンクロ・リフレクト』・・・罠カードを発動していたら?
自分は、勝てていただろうか?
負けていたかデュエルを続行していたかドローだったか・・・。
「クッ・・・」
己は、負けたのだ。
苦々しい気持ちになる。
アノ男は、デュエルより仲間を選んで仲間共々海に落ちた。
アイツは、絶対王者である自分とのデュエルよりクズを選んだのだ。
いわばそれは、ジャックにとって敗北を意味していた。
如何にデュエルで勝利を収め様とも・・・。
「忌々しいサテライトのクズよ。どうすれば貴様をこの俺の足元に這いつくばせる事が出来るのか?」
それだけで満足出来るのだろうか?
(アイツは、この俺のプライドを傷付けたのだ。)
その代価は、払って貰わなければ。
アノ男をサテライトから引き擦り出してやる。
しかしどうやって?
暫く思案してみる。
「クククク・・・貴様の仲間とやらの力を借りて貴様をサテライトから引き擦りだしてやる。そして公衆の面前
で貴様を曝けだし完封無きまで叩きのめしてやる・・・」
(イヤ・・・待て公衆の面前で晒すよりこの俺に飼い殺しにされる方がヤツにとって屈辱かもしれん。人間が人間に
飼われるのだから。)
そうすれば夢に現れる忌々しいアノ男の残像が苦痛に歪んだ残像へと変わるだろう。
自分と苦しめるアノ男・・・その男が苦痛に歪んだ顔をするのだ。
そう思うと先程までの不愉快な気持ちが消え失せ。
どうやってアノ男を・・・アノ男の仲間を利用するか模索しだす。
心が踊る程に楽しいと感じる。
だがそれは、ジャックの頭に新たな遊星を刻み込む行為でしかない無く。
それが原因で遊星へと深みにはまっていく予兆でしかない事を知る良しも無かった。