温泉妄想
手に握られた温泉宿泊券。
温泉宿泊券を眺めながらルドガーは、まさかの出来事に胸をときめかせていた。
ルドガーが出勤して来て間もなく不動博士も出勤して来た。
博士との他愛の無い朝の挨拶を済ませルドガーは、ポケットに入れていた温泉宿泊券を取り出し博士を
誘ったのだ。
家庭を大切にしている博士が研修や発表会以外で外泊するなんて事は、在り得ない。
在ったとしても夫人が同伴している。
それを承知しながら誘ってみたら笑みを浮かべて承諾してくれたのだ。
我が耳を疑いながら
「博士解っているんですか?プライベートの旅行なんですよ?仕事絡みじゃないんですよ?」
「それぐらい解っているよ。」
「私と2人きりなんですよ?奥さんは、来ないんですよ?」
焦りながら捲くし立てる様に問うルドガーに対し博士は、悠長に
「君と2人きりで旅行なんて初めてじゃないか。楽しみだね。」
本当に『楽しみ』と言わんばかりに楽しそうにしている。
「何処の温泉に行くの?」
と問われ宿泊券を博士に見せる。
「あっここの温泉前々から行きたいって思っていたんだ。」
目を輝かせながら宿泊券を食い入る様に眺める。
博士が行きたがっていた温泉だって言うのは、重々承知。
「ここの旅館ってなかなか予約出来ないんだよ。凄いよルドガー」
そうこの旅館に宿泊しようとすれば何年待ちになるか解らない程人気が高い。
博士の為ならどんにな予約が大変な旅館の宿泊券でも手に入れる。
それは、博士の喜ぶ顔が見たいから・・・。
「はぁ〜・・・」
思い出しながら溜息を吐く。
(夢じゃないんだ・・・本当に博士は、自分と旅行に行く事を承諾してくれたんだ・・・)
夢心地でしかない。
そして気持ちは、朝の出来事から旅館に着いた出来事へと移って行く。
当然まだ旅行には、行ってないのだから想像でしかない。
仲居の案内で部屋に行く。
男同士だから傍目には、恋人同士には、見えないだろう。
荷物を置いてコートを脱ぐ。
ルドガーが博士のコートをハンガーに掛けていると博士がテーブルの上に在る湯飲みにお茶を注いでくれる。
お茶受け菓子を手にして一息を吐く。
自分達を知らない人に囲まれ自分達の知らない空間に身を置く。
束縛するモノなんて何一つ無い。開放的になれる。
クローゼットには、浴衣と帯。
博士は、何の躊躇いも無くルドガーの前で衣服を脱ぎ浴衣に着替える。
間近で・・・しかも2人きりの場所で博士が衣服を脱ぐ様をルドガーは、眺めていた。
筋肉質では、無いが無駄な脂肪が全く着いていない引き締まった躰。
その躰に自分は、何度触れただろうか。
今でも触れたい気持ちを抑えていると言うのに・・・。
浴衣に身を包まれた博士。
露出は、少ないと言うのに薄い布1枚に包まれていると思うと何とも言えない。
そうだ旅行なんだから博士に私の事を愛称で呼んでもらおう!!
「ルディー 君には、普通サイズの浴衣でも小さく見える。仲居さんに言って1番大きいサイズを用意してもら
おう」
そう言うと博士は、内線でフロントに大きめの浴衣を頼んでくれた。
暫くして仲居が持って来た浴衣に着替えるとタオルを各々1枚ずつ持って部屋を出る。
「部屋に備え付けの露天風呂も良いけど大浴場側の露天も最高だろうなぁ」
まるで子供の様にはしゃぐ博士。
(私としては、備え付けの露天風呂で貴方とゆっくり入りたかったのですが・・・)
脱衣所で大胆に浴衣を脱ぐ博士。
ルドガーとしては、もう少し色気の有る脱ぎ方をして欲しいと思いつつもそれは、願望でしかない。
「しかし君の躰は、科学者と言うよりアメフトか格闘家の様な躰つきだね。」
マジマジと見つめてくる博士にルドガーの心臓は、バクバクと言わんばかりに大きく鳴る。
この躰に触れて良いのは、医師とレクスと博士のみ・・・。
身内や医療関係者以外で触れて良いのは、博士だけなのだ。
(博士貴方の前でだらしない肉体を見られたくないのですよ。)
2人は、ロッカーのキーを手首にハメて腰にタオルを巻き大浴場へ。
博士は、大浴場を素通りして露天風呂の方へと行く。
(本当に露天風呂に入りたかったのか・・・)
本当に楽しみにしているのが顔が見えなくても博士の背中が物語っている。
誘って正解だと思った。
自分は、博士が喜ぶ事をしたいのだ。
何時も笑っていて欲しい。
博士の落ち込む顔や泣き顔なんて見たくない。
あの瞳が曇るのがイヤなのだ。
何時も輝いて居て欲しい。
そう願えば旅行の手配なんて何て容易い。
それにこれから最高の夜が待ち構えているのだ。
広い露天風呂。
博士が大浴場横の露天に入りたがる理由が肯ける。
備え付けの露天も良いがこの開放的な空間が何とも言えない。
それに露天の方に入浴する人が居なければ貸し切り状態なのだ。
広い露天風呂を眺めていると博士が掛け湯をして入浴準備をしている。
ルドガーも博士がしている様に掛け湯をする。
博士が腰のタオルを取り側にあった桶にタオルを入れる。
「博士 どうしてタオルを取られるのです?」
疑問に思っていると
「それが当たり前だから」
と言う。
博士の言う事は、絶対なのだと何時も思っているルドガー。
博士の真似をしてタオルを桶の中に入れ湯舟に浸かる。
「躰の芯から温まるね。」
「ええ。気持ちが良い・・・」
家や研究所では、浴槽が小さいのでシャワーで済ませている。
足を伸ばして入るのは、本当に心地良い。
目を閉じて肌に触れる湯の感触を楽しんでいるとルドガーの足を左右に開き博士が座って来た。
「は・・・博士!?」
予想外の出来事に声が上擦ってしまう。
「こんなに広いのにどうして・・・」
「迷惑だったかい?私は、こうして君に靠れていると落ちつくんだよ。」
何時も側に居てくれて安心感を与えてくれる存在。
「ルディー 君のは、何時でも元気だね。」
腰に当たる大きいモノの存在。
「済みません・・・」
(博士が傍に居るだけで反応してしまうとは・・・)
博士に対する自分の性欲の強さが伺い知れる。
「別に良いよ。それだけ若いって証拠だから・・・あっ・・・ルディー・・・そんな・・・」
「触れられる距離に貴方が居るのです。私は、何時だって貴方に触れて居たい。」
博士の躰を弄る手。
「ここじゃダメ・・・お楽しみは、後で・・・」
熱を持ち出す躰。
「では、後ほど博士の躰に私を刻み込ませていただきます。」
「うん・・・いいよ・・・後でイッパイ・・・ルディーを頂戴。」
そう言うと重なる唇。
+++++
部屋に戻ると料理が机イッパイに並べられている。
しかも博士と向かい合わせ・・・。
恋人同士なら隣あって食べるモノ。
しかし自分達は、男同士なので恋人同士には見ないのだろう。
ルドガーが席に着くと博士が膝の上に座って来る。
「博士・・・誰かが来たら・・・」
「大丈夫だよ。さっき君の浴衣を頼んだ祭『夕食を運び終えたら誰も近付けないで欲しい』と言っておいたから」
老舗の旅館なのだ。野暮な事は、しない。
多分大切な仕事の話しでもするのだろう・・・と思ってくれているに違いない。
だから机に上に所狭しと料理が並べられているのだ。
胡座をかいでいるルドガー。そこにチョコンと座る博士。
博士が刺身を食べる時、刺身醤油が口に着けばそれを舐めて取る。
鍋料理は、息を吹きかけ少し冷ましてから博士の口に運ぶ。
互いに食べさせあう。
これほどまでに甘えて来る博士にルドガーの顔も気持ちに緩みっぱなしだった。
暫くしてフロントに料理の片付けを依頼した2人は、部屋に備え付けられている露天風呂へ。
室内から露天風呂の様子を伺う事は、出来ないが室内に誰かが居る事は露天に居ながらにして確認出来る。
「はぁ・・・あぅ・・・」
「やらしい方だ。部屋には、人が居るのに恥ずかしい声を上げるなんて。」
「そんな・・・ルディーが・・・」
「私が何か?」
ルドガーは、博士を足の間に座らせ博士の男根を扱きながら蕾を解していた。
湯の中に居る所為で蕾内の粘膜が薄れ指の感触がダイレクトに感じれる。
「意地悪を言うな・・・」
湯で赤くなったのか・・・行為で昂揚して赤くなったのか・・・潤んだ瞳に朱に染まった顔をルドガーに向ける。
「大丈夫ですよ。貴方の淫らな声は、室内にまで届かない」
そう言いながら博士に啄む様なキスをする。
「1度このままココでイって下さい。」
耳元で囁かれる声に身震いをする博士だったが
「イヤ・・・君の熱を感じれない・・・まま・・・イキタク無い・・・君の熱を私の中に・・・」
潤んだ瞳で見詰められてルドガーの鼓動が高鳴る。
「解りました。では、貴方の全てを愛せる場所へと移りましょう。丁度部屋の準備も整えられた様ですから。」
そう言ってルドガーは、愛撫によって動けなくなった博士を横抱きに抱え上げ室内へ。
その後は、濃密な時間だけが過ぎて行った。
「・・・ルドガー・・・ルドガー・・・」
何処か遠くで聞こえる声。
次第に意識が現実世界へと引き戻される。
「博士どうされました?」
「『どうされました?』だって?君自分の鼻から血が出ているの気が付いていないのかい??」
そう言う博士の手には、ティッシュ箱。
「ああ・・・兄さん何を呆然としているのです!!」
レクスの手には濡れタオル。
ルドガーは、自分の鼻を触れ滑りを感じる。
そして自分の指先を見て
「!!!!」
「も〜君は、何を考えていたんだい?」
そう言いながら博士は、ルドガーを上向きさせ鼻にティッシュを詰めだす。
「兄さん後で白衣を脱いで下さいね。」
レクスが濡れたタオルをルドガーの眉間に乗せ白衣を脱ぐ事を薦める。
その言葉で白衣まで血まみれで有る事が伺い知れる。
「全く君らしくないよ。これじゃ旅行は、お預けにしないとイケナイね。」
「はっ博士!!」
「ほら動かない!タオルが落ちるだろう?」
「あっ・・・スミマセン・・・って言うより旅行・・・」
「冗談だよ。泊まりたい旅館だし入ってみたい温泉だって在るんだから・・・ってまさか疾しい事考えて鼻血を出し
たんじゃないだろうね。」
疑いの眼差しが痛い。
「そっ・・・そんな事・・・」
図星を指され焦る。
「女湯を覗く様な事しないでくれ。」
博士は、何処かズレているのかもしれないと思うゴドウィン兄弟。
(博士・・・兄さんは、貴方の裸以外興味は、ありませんよ・・・)
「そんなの覗くワケが無い!!」
(貴方以外の裸なんて見たくない!!)
ああ・・・こんな調子じゃ兄さん達の旅行大丈夫なのかな?
旅館に着いたらそのまま布団の中に居そう・・・。
博士とルドガーは、既に出来ている事が前提です。