初恋-1-


初めて人を好きになった・・・。

 

 

 

相手は、隣に住んでいる年上の女性。

今現役の女子高生だ。

学年は、3年生。

後数ヶ月で高校を卒業・・・。

俺は、現役の小学6年生。

俺も数ヶ月で小学校を卒業する。

 

6歳の年の差。

 

相手は、高校を卒業したら大学に進むって言ってた。

俺は、義務教育の為そのまま中学校に行かされる。

 

「・・・バイバイ・・・」

「また明日ね。」

「メールするね。」

 

窓の外から聞こえる声。

(帰って来た!!)

思わず外を見ると相手は、玄関の扉を開けて中に入ろうとしているのを確認。

急いで机の上に置いてあるカバンを手に取ると部屋を飛び出す。

「母さん、隣に行って来るね。」

「ちょっと、宿題なら自分でしなさい!!」

母親の声を無視して隣の家に向かう。

勉強を口実に相手の傍に少しでも長く居る事を目論む。

「おばさん失礼します!!」

勝手知ったる何たるや・・・勝手に上がり込む。

「あら、いらっしゃい。遊星なら今帰って来た所よ。」

「部屋に居るんでしょ?」

「居るけど・・・あっちょっと!!」

2階に在る遊星の部屋に向かう。

「今、着替えてると思うんだけど・・・」

 

バァン・・・

「遊星!!勉強見てくれ・・・うわぁ!!」

「キャッ!!」

部屋を開けると下着姿の遊星。

「ゴメン!!」

慌てて扉を閉め廊下の壁に靠れる。

脳裏には、さっき見た光景がまざまざと浮かび上がる。

遊星とは、何度もお風呂に入った事が有るがそれは小さい時。

大きくなってからは、入ってない。

だから遊星の躰が大人の女になっているなんて知らなかった。

「ジャック・・・もう着替えたから入って来ていいよ。」

扉の向こうから聞こえる遊星の声。

ジャックは、恐る恐る扉を開ける。

「遊星ゴメン・・・」

「いいのよ。でも今度からは、ノックしてね。」

「あっ・・・うん・・・解った。」

少し注意されたが怒っている様子が無い事にジャックは、安心した。

ノックもしないで入るのは、確かに失礼な事だと思った。

「勉強見て欲しいの?」

ジャックが持っているカバンに気が付く。

「予習したいんだ。でも1人だったら解らない事だらけだから遊星に教えてもらおうと思ったんだ。」

「予習もいいんだけどその前に復習しないと。」

「復習なんて別にいいんだ。」

「ダメよ。ちゃんと復習して解らない所を克服しないと。解らない所あるんじゃないの?」

「うっ・・・」

「図星ね。さぁカバンから教科書出して、何処まで習っているの?」

そこから少しの間、甘い時間を堪能した。

勉強なんて本当は、どうでも良い。

只の口実なんだから。

 

+++数日後+++

「アトラス君って好きな人居るの?」

屋上に通じる階段の踊り場にクラスの女子から呼び出された。

「お前に関係ないだろう?」

どうしてそんな事を聞くのか解らなかった。

「もし居ないのなら私と付きあって欲しいの・・・」

いきなりの告白。

女の子は、顔を真っ赤にして俯いている。

「ゴメン・・・俺お前に興味無い。」

その言葉に女の子は、泣き出し階段を降りて行く。

もっと他に言い方があったのだろうが思いつかなかった。

「ジャック〜!!帰るぞ。」

下の階から呼ぶ声。

「今行く!!」

急いで階段を降りて教室に行くとさっきの女の子の友達が

「何で断るの?理由を言いなさいよ。」

「興味が無いんだ。」

「興味が無いってそれって失礼じゃない?」

「じゃ何て言えばいいんだ?『いいよ』って言えばいいのか?好きでも無いのに付きあう方が失礼だろう?」

「断るにしても断り方ってモノがあるでしょ?それが言いたいの。」

「それじゃハッキリ言ってやるよ。俺には、好きな人が居るだから付き合えない。それでいいんだろう?」

そう言うとジャックは、カバンを持って下駄箱へ向かう。

「ジャック 遅い!!」

「ゴメン!!クロウ」

「お前の事だから女に告白されてたんだろう?」

「ああ」

「またフッたのか?」

「興味無いからな。」

「お前って本当 遊星さんの事好きだよな。」

「悪いか?」

「悪く無いけど小学性と高校生だぜ。相手は、オレ達から見ればオバサンだし相手からオレ達を見ればガキ

なんだぜ。」

「遊星は、オバサンなんかじゃない。」

憮然とした態度で答えればクロウが呆れた様な顔をして

「第一 お前がどれだけ遊星さんの事好きになったて遊星さんだって彼氏の1人や2人は、居るかもしれ

ないんだぜ。」

その言葉に一瞬心臓が止まりそうになった。

考えた事が無かった。遊星に彼氏が居る事なんて・・・。

「それにさ、お前が勝手に遊星さんに熱上げてるけど遊星さんは、お前の事何とも思ってないかもしれないん

だぜ。まぁ良くも弟的存在止まり。」

更なる追い討ち。

確かに一方通行だ。

遊星が自分の事をどう思って居るかなんて知らない。

聞いた事が無いから・・・。

確かに自分と遊星の年の差を考えたら自分の事を『弟』と思っているかもしれない。

1度遊星さんに・・・っておい?ジャック・・・」

ショックの余り足が動かない。

「あっ・・・ショックの余り白くなってる・・・」

 

何処をどう歩いたのか解らないけど自分の部屋に辿りついた。

カバンを机の上に置きそのままベッドの上に寝転ぶ。

(想像した事ないし考えてもみなかった・・・。遊星にとって俺は、どういう存在なんだろう?)

幼馴染み。

弟。

年下。

お隣さん・・・。

いろいろ考えてみたけど『恋人』って言葉が出て来ない。

知りたいのに知るのが怖い。

そんな事を思っていると窓の外から遊星の声が聞こえて来た。

帰って来たみたいだ。

遊星の元に行きたいのに行く事が出来ない。

 

 

胸が苦しい・・・。

(遊星、お前俺の事どう思ってるんだ?)


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