独占欲
「なぁ海馬相棒達に会いたいぜ。」
海馬Co.社長室に隣接する特別室。
そこでデッキを弄っている紅い髪と吊り上がった大きな紅い瞳を持つ少年が退屈そうに自分の隣で難しそうな
書類に目を通している青年に話しかける。
見た目には、数歳程年が離れている様に見えるが彼等は一応同年代だ。
「ダメだ。貴様は、俺の傍に居れば良い。」
「焼き餅を焼いているのか?」
手にしていたデッキをデッキホルダーに直すと海馬の方を見やる。
「フン。だとしたらどうする?貴様は、この俺のモノなんだ。その貴様の口から俺以外の男の事なんぞ聞きたく
もないわ。」
海馬の言いように遊戯は、紅い瞳を見開く。
プライドの高い彼が『嫉妬』している事を認めたのだ。
てっきり否定されると思っていたのに・・・。
遊戯の視線に気が付いたのか海馬は、読んでいた書類から目を離し遊戯の方を見る。
「どうした?」
書類をテーブルの上に置くと遊戯の頬に触れる。
復活した遊戯の肌は、褐色色をしている。
色白の遊戯も美しいと思ったが褐色の遊戯も美しい。
「まさかお前が嫉妬している事を口に出すとは、思わなかった。」
頬に触れられている大きな手に自分の小さな手を重ねる。
海馬に触れられているのが気持ち良いのか遊戯は、瞳を閉じ微かに笑みを浮かべた。
「この俺に嫉妬されて光栄に思え。」
何処までも尊大な物言いだが声のトーンが優しい。
それに手が温かい。
彼が血縁者以外で優しくするのは、自分だけだろう。
「遊戯・・・」
目を閉じながらでも彼が何をしたいのか解る。
だから遊戯は、少し顔を上げる。
啄む様な口付けから少しずつ激しいモノへと変わりだし最後には、互いの唾液を交換するモノへとなる。
「ふぅ・・・ん・・・」
鼻から漏れる甘い吐息。
躰に熱が篭り出す。
(くっ・・・このままじゃ海馬に流されてしまうぜ・・・)
そう思えど彼とのキスは、嫌いじゃない。
心地好い・・・もっともっとキスをしていたい。
それに彼の手によって流されるのも嫌いじゃない。
ただ・・・簡単に言えば『負けず嫌い』なのだ。
ソファに押し倒される。
海馬が何をしたいのか解っている。
遊戯の熱を更に呼び起こす為に躰を弄るが
「海馬・・・今は、ここまでだぜ。」
「何!?」
「お前は、今社長様なんだ。オレは、社長様に抱かれるなんてゴメンだぜ。夜になったらしようぜ。」
「貴様この俺に夜まで待てと言うのか?」
「ああ。今のお前は、オレのモノじゃないからな。」
今の海馬瀬人は、海馬Co.のモノだ。
「もしかして貴様会社に嫉妬しているのか?」
蒼い瞳を見開きながら何処か楽しそうに訪ねて来る。
「そうだぜ。オレを独占していいのは、海馬Co.海馬瀬人じゃなくデュエリスト海馬瀬人だ。」
「どっちの俺も俺なんだがな。」
遊戯の言葉に海馬の心は、鼓舞をしているかの様だった。
「個人として見ればお前なんだがな。」
それでも社長をやっている時の海馬とデュエリストである海馬とでは、纏う雰囲気が違う。
それに社長をやっている時の海馬は、海馬Co.のモノであって遊戯のじゃない。
知らない言葉を操り知らない世界を渡り歩く。
それに会社で濃厚な時間を味わっている最中何度と無く携帯電話で呼び出され中断を余儀なくされた
事だってあるのだ。
遊戯の心情を察したのか海馬は、軽く溜息を吐くと遊戯の上から退く。
「貴様がこの俺を独占したいと言うのなら夜まで待つとしよう。だが今の時間貴様に触れる事が出来なかっ
たのだ。その分貴様に触れさせてもらうぞ。」
海馬の言葉に内心冷や汗をかいたがそれを表に出す事無く
「お前もオレに触れオレを独占したいならその分早く仕事を終わらせる事だな。」
強気で言う。
遊戯との時間を長く楽しむべく海馬は、この後過密スケジュールをこなしていった。