私の恋人(おとこ)-2-


「遊星 探したぞ。」

行き先なんて誰にも知らせていないのにジャックは、遊星の元に姿を現す。

本当に監視されているんじゃないか?って思わずには、居れない。

「ジャック静かにしてくれる?」

遊星が居るのは、シティーの中心地に在る図書館なのだ。

「解っている。だから何時もより声を抑えている。」

確かに何時もの声高らかでは、無い。

彼なりに気を使っているのだ。

遊星は、読んでいた本を閉じると席を立つ。

ジャックが現れたらゆっくり本なんて読んでいられない。

変装したマスコミが所々に居る。

(全くマスコミを振り切るって事ぐらい出来ないのかしら?)

また父親に頼まないと・・・と考えて居るとジャックが遊星の肩を抱き寄せ耳元で

「何を考えている?早く行くぞ。」

囁く様に言うと振り返る事無く遊星のグーをした拳の甲がジャックの顔面に入る。

「行くわよ。」

スタスタと歩き出す遊星。

その心臓は、大きく高鳴っている。

(顔赤くなってないかな?全く場所を選ばないのも困りものね。)

 

図書館を出てジャックの車に向かう。

「何処に行くの?」

「昨日お前がトップスが住む建物に行ってみたいって言ってだろう?」

「言ってたけど・・・」

そんな簡単に行けるとは、思っていなかった。

幾らジャックがそこの住人だかと言っても・・・今の自分は、一般市民なのだ。

本当は、トップスに住む事が許されている身分であっても・・・それは、秘密なのだ。

「私は、一般市民なのよ。セキュリティーに引っかかる。」

「俺が何もしないでお前を招待するワケないだろう?ちゃんとお前が入れる様に手続きをして有る。」

面倒な手続きでも遊星の為にするのは、どんな事でも楽しくて仕方が無い。

それが遊星を喜ばせる事なら尚更。

「ジャックもう少しスピード出せない?」

「ん?出せるが」

「マスコミの車が付きまとっているの振り切って」

流石にマスコミの行動に嫌気がさして来た。

「遊星がそう言うのなら振り切ってやるが俺としては、お前との関係を記事にされもかまわん。」

アクセルを踏んでスピードアップ。

遊星が怖がるかと思いきや至って平然としている。

まるで慣れているかの様な。

(まさか・・・な。遊星がD・ホイールに乗っている姿なんて見た事ないし・・・いやもしかして2年間の間に?)

疑問が過る。

それでも遊星の望み通りジャックは、マスコミを振り切りながら自宅マンションへと向かう。

暫くして・・・

「何とか巻いたようね。ジャック今度からマスコミに気を付けて。私は、面白おかしく書かれるなんて嫌。」

「さっきも言ったが俺は、お前との関係を書かれてかまわん。」

「私は嫌。自由が奪われるなんてゴメンだから。」

少し不機嫌な遊星。

確かに遊星が言うようにマスコミに付きまとわれては、自由なんてものが無い。

しかも記事には、有りもしない事が書かれる事が容易に想像出来る。

遊星とのデートが邪魔される。それだけは、ゴメン願いたい。

自宅マンションの地下駐車場に車入れる。

駐車場に入る際セキュリティーのチェックを通らないといけない安易にマスコミが入る事が出来ない。

ジャックは、遊星を抱き寄せながら奥に有るエレベーターへと行く。

「このエレベーターは?」

「安心しろ俺専用のエレベーターだ。」

キングの住む居住区には、許された者だけが入れる。

押されるボタンも1階と最上階と開閉の4種しかない。

後は、外部との連絡用のがあるだけ。

エレベーターが上昇開始する出入り口を除けば三方は、マジックミラーで出来ており中から外の景色を

楽しむ事が出来るが外から中を伺い知る事が出来ない。

今エレベーター内に居るのは、自分達2人だけ・・・

(遊星と2人きり!!このまま遊星を抱きしめて・・・キス・・・)

いろんな事を考えるジャックだったが行動に移る前に居住区に到着してしまい何も出来ないでいた。

(エレベーターでジャックに襲われたら・・・って思ったけど・・・)

遊星にしてみれば少し期待していたのに期待外れ。

 

エレベーターを降りると広い庭に出た。

「キレイ〜。最上階にこんな綺麗な庭が在ったのね。」

「俺の趣味じゃないけど気持ちを和ませるに丁度良いからな。定期的だが庭師に来て貰い庭の世話を

してもらっている。」

「デュエリストって大変ね。まぁデュエリスト以外にもストレスが溜まって大変な人も多いと思うけど・・・」

庭を見て動かない遊星をジャックは、抱き寄せながら先に進む事を促す。

渋々と言うような感じで遊星は、傍の雨除けの屋根が付いた廊下を通り玄関に向かう。

別に庭を通ってでも玄関に向かえるが庭を通ってだと遊星がなかなか動かないだろうと予測をしてあえて廊下

を選んだのだ。

玄関を入ると広いエントランス。

エントランスを通り抜けるとこれまた広いリビング。

リビングには、数メートルもの最新ガラスが嵌められている。

ドミノ・シティーが一望出来る。

そして先日ジャックと一緒に行ったドミノ・タワーも見る事が出来る。

反対側のガラスからは、綺麗な庭が見る事が出来る。

「こんな凄い所に住んでいたのね。2年前とは、雲泥の差ね。」

「昔の事を言うな。俺は、俺の力でココまで伸し上がって来たんだ。」

少しムス〜とした表情で紅茶を用意しているジャック。

2年間の間でずいぶんと成長したのね。まぁ昔から努力家だったんだけどね」

出された紅茶をソファに座りながら堪能する。

「それをおくびに出さないのがキングらしさだ。」

そう言いながら遊星の膝に頭を乗せる。

当たり前の様にしているがデュエルしている時より無茶勇気が要るのだ。

怒られるかもしれないがやってみたかったのだ。

だが怒られるどころか紅茶をテーブルに置くと頭を撫でてくれた。

遊星自身こんな時間も悪く無いと思っていた。

元々彼女自身ジャックの事が好きなのだ。

ただそれが素直に態度として現れないだけ。

(この光景・・・嬉しい誤算なんだが・・・どう反応していいのか解らない・・・)

目の前に在るのは、遊星の胸。

触ってみたいという思いは、在るが自分達の関係がどういう関係なのかイマイチ解らない。

恋人同士でもないのに触れれば変態だし・・・。

でも2人きりで手も出さないなんて男としどうなのか・・・。

いろいろ考えてしまう。

そんなジャックに

「どうしたの黙って・・・?」

何時も饒舌な男が全く話して来ない。

「お前に触れられるのが気持ち良いと思っていた。このままお前に触れられて居たい。」

「何言ってるの?子供じゃあるまいし。」

「この俺が唯一認めたお前だから触れられていたい。」

「他の女にも同じ事言ってるんじゃないの?」

「疑うのか?そんな事言えるのは、お前だけだと言うのに。」

久しぶりに会った時声高らかに告白して来たのを思い出す。

「遊星 少し眠る。」

「だったらベッドで寝れば?」

「お前の膝の上が良い。」

「風邪引くよ。」

「そんな柔な躰じゃない。」

何を言っても聞いてもらえる状態じゃない事に気が付いて

「だったら寝れば?」

頭を撫でながら優しく言う。

キツク言う雰囲気で無いのでどしても優しく言ってしまう。

目を閉じるジャック。

暫くして微かに聞こえる寝息。

「も・・・寝たの?」

(余りにも早くない?)

何処か安心しているような寝顔。

(そう言えば練習って何時しているんだろう?人に努力している姿を見せるタイプじゃないけど・・・)

何時練習しているのか聞いた事が無い。

(目を覚ましたら聞いてみよう。)

 

 

 

「ん・・・」

一体どれだけの時間眠っていたのか・・・?

もしかしたら数分なのか・・・?

ゆっくり目を開けると見慣れないモノが目に写る。

(ああ・・・そうか俺は、遊星に膝枕をしてもらっていたのか・・・)

よく見ると遊星も眠っている様だ。

(きっと退屈だったんだろう。)

そう思い起き上がると躰に掛けられたシーツがズレ落ちる。

ジャックが眠ってから彼を起さない様に頭を退け風邪を引かない様にシーツを掛けてから自分の膝の上に

再度頭を乗せジャックの寝顔を見ていたのだろう。

そんな遊星の姿を想像するだけで胸がキュンとしてくる。

ジャックは、自分に掛けられていたシーツを遊星に掛け様としたが思い留まり彼女を抱き抱え寝室へと向かった。


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