12.二人の時間
遊戯が消滅してから2週間が過ぎようとしていた。
海馬は、遊戯の事を思い出さないように仕事の量を増やし
睡眠時間を削り
たまの休みでさえ何かしら用事を入れていた。
そんな兄を傍で見てモクバは、遊戯が居なくなった事が原
因だと思いつつも(消滅した事は知らされず)遊戯を恨む事
なく只遊戯が戻って来る事を祈りそして兄の身を心配した。
「兄サマ少しは、休んだ方がいいよ・・・」
と声をかけるものの海馬は
「心配するな・・・ちゃんと休んでいるから」
と見え透いた嘘をついていた。

そんな海馬のもとに毎夜ユ-ギが姿を現しては、幼い頃の
遊戯の思い出話しを海馬にした。
最初の頃は、
「俺にそんな話しをするな!!」
って怒鳴られては、いたが最近では、海馬も遊戯と過ごした
2人の時間をユ-ギに少しづつだが話すようになった。
海馬もユ-ギも気が付いていた。
御互いが愛した遊戯の知らない時間を互いが話す事によっ
て知らない時間を埋め尽くそうとしている事に・・・
また、寂しさを紛らわせようとしている事に・・・
そしてそんな時間を共有しているにも関わらず御互いが決
して惹かれ合わない事に・・・

そんなある日
ユ-ギは、どうしても海馬に聞きたい事があった。
それは、海馬が片時も離さないジェラルミンケースの事・・・
そのジェラルミンケースは、海馬が就寝する時でさえベッドに
持込んでいるほどで時折そこから遊戯の気配が感じられた
からなのだ。
「海馬君・・・前々から聞きたかったんだけど・・・
そのケースの中には、何が入っているの???」
海馬に怒られる事は、覚悟の上で聞いてみたら海馬は、ジェ
ラルミンケースを机の上に置き鍵を開けユウギに中を見せた。
そんな海馬の行動に驚きつつも中を見て驚いた。


「海馬君・・・前々から聞きたかったんだけど・・・
そのケースの中には、何が入っているの???」
その言葉に海馬は、ジェラルミンケースを机の上に置き鍵を開
けたが自分で何故こんな行動にでたのか驚いていた。
否むしろユ-ギに尋ねられたら見せてやろうと心の何処かで思
っていたのかもしれない・・・それが行動に出ただけだ。
ジェラルミンケースの中に納まっていたのモノ・・・
それは、遊戯が何時も身に着けていた黒いマントだった。
「海馬・・・く・・・ん・・・これって・・・」
驚きを隠せないユ-ギは、海馬に尋ねると
「遊戯が残して逝った形見のモノだ。」
と答えると
「もう1人の僕が残したモノ・・・」
ユウギが驚くのも仕方が無い
天使は、消滅した際 自分の愛用していた物も一緒に消滅する
からだ・・・
それなのに遊戯が愛用していたマントは、消滅する事無く現存
している
ユ-ギの心に一筋の光が見えたような気がした。
ユ-ギの表情が少し変わったのを海馬は、見逃さなかった。
「そのマントがどうかしたのか?」
と尋ねるとユ-ギは、嬉しそうな顔をして海馬に理由を話した。

「・・・貴様それは、本当なんだろうな!!」
ユ-ギの胸座を掴んで聞くと
「僕は、セラフィームだよ!嘘なんかつかないよ!」
「ヤツは、何処に居る!!」
「僕にも判らないよ〜!!でもきっと彼はココに帰って来るよ〜
それまで待っていてあげようよ〜」
海馬に胸座を掴まれ息苦しくなりユ-ギは、海馬の腕を叩き出
した。
海馬は、ユウギの抵抗を受け離してやるとユウギは、ソファに座
り息を整えながら
(彼の事になると別人になるんだ・・・海馬君の強い想いなら・・・
それにセトが・・・)
ユ-ギは、海馬の後ろ姿を見ながらセトの姿を見たような気が
した。



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