A happy wish-Vol.9- |
海馬は、ある倉庫の前で立ち止まると何の作戦も立てる事無く 扉を開け様とする 「ちょっ!海馬君!いきなり開けるの? 何か作戦でも立てた方が・・・」 焦る遊戯 だが海馬は無表情のまま《聞く耳無し》といった感じ マリクは遊戯の肩に手を乗せて首を左右に軽く振る 今の彼に何を言っても無理・・・ 確かに海馬君が人の意見に耳を傾けるタイプじゃないけど・・・ こういう時ぐらい聞いて欲しい気がする 海馬にしてみれば先程 非ィ現実的だが脳裏に浮かんだ ビジョンが気になって仕方が無い もしユウギに危害が加えられていたら・・・ そう思うと居ても立ってもいられない 目の前の扉を左右に開く 急に倉庫内に差し込む光り キースはサングラス越しに目を細め扉の方を見る 逆光で見え難いが人影が二つ確認出来た。 一人は長身でロングコート もう一人は小柄で今自分の傍で横たわっている少年と同じ 髪型の少年・・・ 「テメェ等どうして此処に!」 キースは、そこに居る人物が誰なのか直ぐに解った。 そしてこのままだと自分は消される事も キースは靴に隠し持っていたていたナイフを取り出すと ユウギの首元に宛う 海馬は目の前で起きている光景に更なる怒りを感じていた。 ロープに縛られ身動きが取れないでいるユウギ・・・ 更にナイフで脅されている 「貴様!!」 地の底から響く様な声 傍に居る遊戯でさえ寒気と恐怖を感じているのだからその怒り の矛先であるキースは更に寒気と恐怖を感じているであろう ユウギにしてみれば目の前の出来事に驚きと安堵 しかも最後に一目だけでいいから逢いたいと想っていた人物 がいるのだ 海馬・・・ 突き付けられたナイフなんて怖く無い 今の不利な状況にキースは 「近付くな それ以上近付くとコイツの命は無い!」 せっかく手に入れた商品だがこのままでは自分の命が危ない だったらユウギを楯にこの場から逃げ出し次の機会を狙えば いいだけの事 商品はユウギだけでは無いのだから・・・ そうキースの脳裏には海馬の弟のモクバの姿が・・・ その時ユウギに向けられていたナイフが弧を描き中に舞う キースは手首を抑えながら 「誰だ!!」 背後を振り返ると不機嫌丸出しのマリクの姿 今にも人を殺しかねない瞳 「僕の大切な義弟に手を出そうとは命知らずだね」 それ相応の事をさせて貰わないと気がすまない・・・ 「マリク!危ない!!」 遊戯の声にマリクは咄嗟に事態を把握したのかユウギを庇 うかの様に臥せる ドカッ!! 「雑魚ごときがユウギに触れるなど汚らわしい!!」 海馬の側面からの容赦ない蹴りがキースの頭部にヒットし キースは、血まみれになりながら気絶 「ユウギ大丈夫かい?」 ユウギの躯を縛っていたロープを解きながら先程キースに 見せていた表情とは、一転して優しい兄の顔 彼が表情には、表さなかったがどれ程ユウギの事を心配して いたのかその行動から窺い知れる 「マリク・・・ああ大丈夫・・・」 シドロモドロになりながらも自分の身を案じてくれている義兄を 安心させ様とするユウギ 「ユウギ・・・」 「海馬・・・」 海馬の顔見たとたん安心したのかユウギは、そのまま意識 を失った。 「ユウギ!!」 慌てる海馬に遊戯が 「きっと安心したんだよ」 君は、神経を張り巡らせるほど怖い思いをしたんだね 身重の身で味わう恐怖は、きっと並大抵のモノじゃないだろう 海馬は、マリクに抱き締められているユウギを自分の腕に抱き 上げると足早にその場を立ち去ろうとした。 「海馬君もう一人の僕が何故エジプトに帰ろうとしたのか僕には 解らないけど・・・もし彼を泣かせる様な事なら彼をエジプトに帰 してあげて」 その方が幸せかもしれないから・・・ 「こいつは、俺のモノだ 手放す気など無い」 「海馬 ユウギの兄として言わせてもらうけど早くユウギを病院 に連れて行ってあげてくれないかな? お腹の子供の事が気になるんだ」 「言われんでも解っている」 「じゃ頼むね 近い内に君の屋敷に遊びに行くから」 「勝手にしろ」 それだけ言い残して海馬は、立ち去った。 「本当にいいの?エジプトに連れて帰らなくて?」 「いいんだよ 僕は、別にユウギを迎えに来たんじゃない 彼が幸せなのか確認しに来ただけだから・・・」 「もう一人の僕は、幸せなのかな?」 「充分幸せだよ」 だって海馬を見た時のユウギの顔は、僕でも嫉妬してしまうぐら い嬉しそうだったから 「それより童実野町を案内してよ この前来た時ゆっくり観光出来なかったし そうだ遊戯の家に泊めて欲しいんだけど?」 「いいよ ママに電話してマリクの分の晩御飯作ってもらうから ね」 |
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