Time Soul-1-
オレは、何処から来たのか
何故この男の庇護の元に居るのか
この男とオレはどういう関係だったのだろうか
どんなに考えても思い出そうとしても判らない
遊戯は、どうやって冥界から戻って来たのだろうか
俺を忘れ
全てを忘れ
何処に行こうとしていたのだ
この手に戻って来た貴様をもう二度と手放したりしない
あの悲しみをもう味わいたく無い
だから昔 遊戯が仲間と言っていた連中から隔離した。
自分の弟モクバからも・・・
遊戯が居るのは、山里離れた辺境の地
ヘリが無い限り
俺が信用する部下を遊戯の世話係として配置し
何かあれば連絡させる様にしている
そして自らも週末金曜日の晩から日曜日の晩
まで遊戯の傍に居る
無垢な存在である遊戯に自分の事を教える
遊戯が発見されたのは海馬Co.の社長室だ
しかも遊戯の「お気に入り」のソファの上で
ファラオの格好をしたまま眠っていた。
その時 海馬の胸中を襲った「まさか」と言う
疑念と喜びの複雑な感情
今も尚その時の感情を海馬は、昨日の様に憶えている
目覚めた遊戯に海馬は、いろいろと話し掛けるものの
全くの無反応・・・
それどころか海馬に向かって
「お前 誰だ?」
と尋ね出した。
思っても居なかった言葉に海馬は、ショックを隠しきれず
「遊戯!貴様は、この俺の事を忘れたと言うのか!!!」
脅え震えながら
「オレは一体誰なんだ?オレの事知っているのなら教えてくれ!」
自分の事でさえ憶えて無い
海馬の脳裏に過ぎった思惑・・・
他の連中の事を憶えているのかどうか
海馬は、バトルシティの映像を静止させ遊戯に見せる
映し出されているのは、武藤遊戯と城之内そして本田や杏子の姿
遊戯の仲間だと言う連中だ
「遊戯 この中に貴様の知っているヤツは、居るのか?」
遊戯は、首を横に振りながら
「知らない・・・こいつ等は、誰なんだ?
オレと何か関係あるのか?」
不思議そうに海馬の顔を見つめる
「否 貴様と関係無い連中だ」
「これってお前なのか?」
遊戯は、映像に映し出された海馬の姿に指を指す
そしてその隣に居る人物を見ると
「これ・・・オレに似ている・・・
でも肌の色が違う・・・」
そこに、映し出されているのは冥界に帰る前の遊戯自身
それに対しても遊戯は、判らないでいる様だ
海馬は、内心微笑んだ
遊戯を自分だけのモノに出来る・・・と
もう誰にも邪魔されない
もうこの口から忌々しい名前を聞く事は無い・・・と
「貴様に名前が無いと言うのなら
貴様の名前は、俺が着けてやろう
貴様に似合いそうな名前・・・そうだ『遊戯』と名乗れ」
「オレの名前・・・?
その名前は、さっきからお前が呼んでいる・・・
オレの名前なのか?」
「ああ・・・貴様の名前だ」
優しく頭を撫でられ
優しく微笑まれ
遊戯は、嬉しくなった。
海馬は、その日一日の仕事を全てキャンセルし遊戯を山里の辺境の地
に連れて来た。
その場所は、何時の日にか遊戯を復活させ自分だけのモノにする為に用意
した場所・・・
その想いが実現出来るのだ
こんなに嬉しい事は、無い・・・
「遊戯 ここが貴様の新居だ」
「こんな山里が・・・?」
辺りを見渡すと山ばかり
眼下には、数件の家らしき建物
不安そうな遊戯に
「そんな顔をするな
貴様をあの場所に置いといたら色んな情報に翻弄され大変な目に遭うだろう
ここでゆっくり色んな事を学び
そして学び終えたら俺と一緒に暮らそう・・・俺が住んでいる場所で」
海馬にしてみれば精一杯の告白
その告白が遊戯にどう受け止められたのかは判らない・・・だが遊戯は
「判ったぜ・・・オレお前と一緒に暮らせる様に一日でも早く色んな事を学ぶぜ」
満面の笑みで答えた。
その夜
何も知らない真っ白な心の遊戯を心行くまで味わったのだった。
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