面壁九年
「ふぅぅ・・・んん・・・」
いきなりだった・・・
クリティウスの部屋に入るなり抱き締められてキスをされた。
しかもディープキス・・・
この男は、相手を確認しないでこんな事をする男だったのか?
否 さっきヘルモスがクリティウスの耳元で何かを囁いていた
からきっと気が付いたのだろう・・・
態度も急変したしな
だが容赦無く抱き締められてキスをされたら苦しくて仕方が無い
それに気になる事だってある
ばっしぃ・・・!!!!!
クリティウスの頬を勢い良く横面を引っ張り叩く
何事かと驚くクリティウスに
「いきなり何をするのです!!
貴族と言えどヤッテいい事と悪い事がありますよ!!」
姫君の怒りにクリティウスは、呆然としていた。
しかし姫君の様子がオカシイ・・・
クリティウスの方を見ないで扉の方を見ている
クリティウスの罵声を浴びせながらもその足は、扉の方に向かう
扉に手をかけた瞬間クリティウスは、姫君が<逃げてしまうので
は?!>と言う思いに駆られるが姫君は、扉を勢い良く開けると
扉の向こう側に居た人物目掛けて思いっきりビンタをしだした。
「東家の長子が盗み聞きですか?
その様な行為をしていて恥ずかしく無いのですか?恥を知りなさい」
そう言うと勢い良く扉を閉めた。
扉が閉まる瞬間に見た兄の顔・・・
鳩が豆鉄砲を食らった様な唖然呆然とした表情
一体何が起きたのか把握出来ないで居たのだろう
自分も言えた義理じゃないが自業自得と言えば自業自得なんだが・・・
クリティウスは、姫君の身体を今一度抱き締めると優しく
「もう打たないでくれよ ティマ・・・」
ヘルモスが耳打ちしてくれた名前<ティマ>・・・
ティマにしか反応しない心が反応した筈だ
一時も離れて居たくない相手
恋に焦がれやっとの想いで手に入れた存在なのだから
「さっきヘルモスが貴方に耳打ちをしたのは、私の名前なのですね?」
フードを取り素顔を現す
男の時とは、違う美しさ
しかも言葉遣いまで・・・
「ティマ・・・俺の前では、何時ものお前で居てくれないか?」
ティマは、首を左右に振ると
「それは、出来ません」
「何故?」
「保身をはかる為にです」
先程の様に誰が盗み聞きしているのか判らないから本当の自分を出さない
と言うのだ
「ティマ・・・何故ココに来たのだ?」
「貴方が幼い頃の私に好意を抱いてくれていたと伺ったので・・・」
ヘルモスのヤツだな・・・
しかし何故ヘルモスには、あの時の姫君がティマだと判ったのだろう?
「貴方と御逢いした時丁度ヘルモスも傍に居ましたのよ?
お気付きになりませんでしたか?
私はあの時あの場に居たのは貴方の兄上様だとばかり思っていました。」
・・・姫君以外眼中に無かった・・・・
まさかあの場にヘルモスが居たとは
だから俺が姫君の話しをした時 不思議そうな表情したのだな
綺麗な蒼い瞳に吸い寄せられそうになる
「貴方の花嫁がこのパーティで決まると知った時居ても立っても居られませんでした
愚かな行為だと思いましたが我慢出来なくて来てしまいました。
何故あの時 教えてくれなかったのです?」
蒼い瞳に浮かぶ疑問
自分の事は、遊びだったのか?
その問いにクリティウスは
「あの時は、お前に心配掛けたくなくて言い出せなかった」
申し訳無さそうに頭を垂れるクリティウスの頬を両手で挟むと
「何も言ってくれない方が余計心配になるのですよ」
オレがどれ程心配した事か・・・
今聞きたいオレの事どう想っているのか・・・
そんな想いが顔に出ているのかクリティウスに強く抱き締められながら
「俺にはティマだけだ・・・
不安にならないで欲しい」
蒼い瞳を大きく見開き
そして嬉しそうに自分からクリティウスに抱きつく
先程から感じる違和感・・・
何時もとティマの抱き心地が違う・・・
何かこう〜柔らかいと言うか抱き心地がイイと言うか・・・
丸身と言うか・・・
・・・そう言えばこの匂いは雌特有のモノ・・・
まっまさか・・・・
「ティマ!ちょっと触らせてもらうぞ!!」
そう言ってティマの胸を触る
「!!!!!」
「!!!!!」
断りを入れられたとしも許可した覚えは無い
しかも優しく触るのならまだしも鷲掴みされたのだから溜まったもんじゃない
「きゃぁ〜!!!!!!!」
ばっしぃぃぃぃぃ・・・・・・んんんん!!!!!!!
気味のイイ音・・・
バタン!!
「姫どうされたんだす!!」
ティマの叫び声と小気味いい音に驚き先程まで扉の前にいた兄上が急いで
入室してきた。
そんな兄上にティマは慌てて
「なっ何でもありません!!
御心配なさらないで下さい!!!」
そう言って急いで兄上の背を押しながら部屋の外に押し出すと鍵をかけ
クリティウスの元に・・・
手の感触に驚いているのか固まっているクリティウスの胸倉を掴むと
「クリティウス!!やっていい事と悪い事がありますのよ!!」
狂気を孕んだ瞳
「ティマ!!そのから・・・・うぐんんん・・・・・」
急いで口を押さえると
「そのまま首を掻き切ってやろうか?」
ドスの効いた声に冷や汗が背を伝う
今 余計な事を言えば本当に切られるかもしれない・・・
ティマイオスは、クリティウスを隣の寝室に連れて行く
「この姿は、西家に伝わる秘薬を用いて本物の女になっただけだ
本来の姿では匂いで直ぐに男だと判るからな」
「もっ・・・元に戻るのか???」
焦るクリティウス・・・
「戻るぜ ただ解毒剤は、2種類あってその内1つは西家に戻らないと作れないんだ
もう1つは、想いを寄せている人物との性行為をする事・・・」
そこでハッとした。
クリティウスの表情が嬉しそうなのだ
「だとしたら俺しかお前を元に戻せないんだな?」
今にも襲って来そうなクリティウスに
「パーティーの為になった姿だ
もしオレの姿が元に戻ってみろ
オレは即刻帰らして貰う」
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