海馬が遊戯を守り傍に置いておきたいと言う気持ちが遊戯を追う者から身を隠し
海馬が抱く恐怖が遊戯を追う者に遊戯の居場所を知らせる
『・・・見つけましたよ・・・様・・・』
遊戯の心に広がる不安
何時まで海馬の傍に居られるのか・・・
毎日 海馬と一緒に居られるのは嬉しい
でも以前 海馬に見せられた映像に写る自分と同じ姿をした少年の事が気になる
もしかしたら海馬が特別な感情を抱いている相手だったとしたら・・・
《遊戯》と言う名前がその少年の名前だとしたら?
その彼に瓜二つの記憶が無い自分に付けたのだとしたら?
自分は彼の身代わり?
もし彼が姿を現したらオレは、捨てられる!
考えれば考える程 不安は増すばかり
遊戯は、その考えを振り払うかの様に首を左右に振ると隣で眠る男を起こした。
「海馬 朝だぜ」
時計の時刻は7時を指している
胸中の不安を顔に出さない様に気を付けながら
「ああ・・・貴様が俺より早く目覚めるなんて珍しいな」
「そっ・・・そうか?オレだってたまには、早く目が覚める時
だって有る事だな」
何だか隠し事でもしている様な歯切れの悪い台詞
それを訪ねる勇気は、今の海馬に無い
何が切欠で遊戯の記憶が戻るのか判らない
それによって遊戯がまた自分の元から離れて何処かに
行ってしまうかも知れない
そんな恐怖があるのだ
遊戯を失う恐怖・・・数ヶ月前迄の自分なら在り得ない感情
恐怖を拭うかの様に海馬は遊戯を抱き締める
「かっ・・・海馬?どうしたんだ?」
急に抱き締められて驚く
「遊戯 貴様は俺のモノだ
何処にも行くな!!」
懇願される様に遊戯の耳元に囁かれる言葉
その言葉は、どれ程 遊戯の心を満たすモノか
オレはこのまま海馬の傍に居ていいんだ・・・
あの映像に映し出された自分そっくりの彼が海馬の元に現れるまで
傍に居ていいんだ・・・
でも彼が現れたら自分は、どうすればいいんだ?
何処に行けばいい?
遊戯には、身内と呼べる相手が居無い
それ故に遊戯は、海馬の背に腕を回し強く抱き着く
オレをこのままお前に腕の中に居させてくれ!!
『・・・様・・・貴方様はその世界の住人では無い』
『しかしあの御方は、あの世界を・・・あの男を選ばれた』
『このままでは、あの方の為にはならないのですよ』
『それは、我々が決める事では無い
あの方自身が御決めるになる事だ
我々は、あの方を唯見守ればいい』
『そんな事 貴方に言われるまでもなく判っています。
でもあの方のあの不安な顔を見て貴方は何も感じないのですか?』
亜空間に映し出される遊戯の姿
その姿を見守る2人の男の姿
「海馬何か食べるか?」
ベッドから降りてキッチンに向う遊戯の姿
童実野町に来てから遊戯は、磯野に頼んで料理の本を買って貰い
料理の事を教わりながら自分で作る様にしていた。
料理が不慣れだった当初は、本当に食べられるのか疑問に思うような
モノばかりが食卓にならんだ
それでも諦める事なく毎日キッチンに立ち料理を作って行く内に上達し
今では、人に食べさせる事が出来るだけの腕前になっていた。
人に食べさせると言っても遊戯の手料理を食べられるのは海馬のみなのだが
一応 海馬には内緒と言う事で磯野も当初遊戯の料理を食べていたのだが
それは、磯野自身が海馬に報告されている事なので全く内緒では、無いのだ