桜
【今夜 予定を空けておけ】
今朝入ったメール
何て素っ気ない内容なんだろう
だがそんな内容のメールでも遊戯にとっては嬉しい内容
「海馬君からのメール?
よかったね でも相変わらず素っ気ない内容だね」
海馬と自分の関係を知っている相棒からの一言
それが照れ臭いのか遊戯の一言も
「アイツらしい内容だぜ」
と素っ気ない内容だ
相変わらず人の予定なんてお構い無しなんだからな
それに仕事が長引いたり急な予定が入ったらこのメールの内容は
無かった事にされる
今迄だってドタキャンにされた事なんてどれだけ有ったか
そんな事上げたらキリが無いけど
一瞬見せた遊戯の寂しそうな表情
「きっと海馬君と逢えるよ! 僕が保証する!」
何の脈絡も無い保証だがどうしても言ってしまう そんな相棒の気遣い
に微かに笑みを浮かべながら
「ありがとう相棒 期待半分無期待半分で待つぜ」
〈遊戯〉は、そんな遊戯を元気付けたいのか
「ねぇ 学校の帰りに公園に寄って行こう」
「新学期早々寄り道か?ママさんに怒られるぜ?」
「君がそんな心配しなくていいの
君が一個人としてこの世に復活して初めての春なんだから」
悪戯っ子の様な笑みに遊戯は 「仕方が無いな」 苦笑せざる得なかった。
相棒のアノ笑みには敵わないぜ
海馬からのメールが有った日は一日中上の空 逢えるのか逢えないのか
そんな気持ちに心が支配されるのだ
お陰で授業に全く集中出来ない
まるで《恋する乙女》ってヤツだ
恋をしているのは当たっているがオレの場合《恋する少年》だぜ
放課後 遊戯と〈遊戯〉は今朝話してた公園に来ていた。
「綺麗な花だぜ」
感嘆の声を上げる遊戯の前には満開に咲き誇る染井吉野の木
それも一本だけでは無い何本も植えられておりそれが見事に咲いているのだ
「何時も公園の外から見ていたからこんなに綺麗だとは思わなかったぜ」
遊戯の嬉しそうな顔を見ながら〈遊戯〉が
「本田君が[今が見ごろだ]って教えてくれたんだ」
ブランキーの散歩中に公園に立ち寄ったらしい親友からの情報
「この分だと見ごろは今週いっぱいだね」
「そうなのか・・・」
海馬と一緒に見られたらいいのに・・・
憂いを帯びた遊戯の表情
「きっと海馬君と一緒に見れるよ」
優しい相棒の言葉に「そうだな」 とだけ言い返す。