桜-2-
夕方近くになっても減る様子の無い書類の山
予定では夕方近くにほとんど片付いている筈だった
ただ昼過ぎに来たアポ無しの客さえ無ければ
何時もならアポ無しの客には会わない海馬だが
今日訪ねて来た客は大口先の会長
無碍には扱えない相手なのだ しかも急に訪ねて来て
仕事の話しかと思いきやただの自慢話し
下らない話しを延々30分は聞かされただろうか
そんな会話に終止符を打ち相手を見送り仕事の続きを
始め様としたら新に持ち込まれる書類の山
今夜遊戯と逢うのを楽しみにしていた海馬だったが
この状態では何時終わるのか判らない
遊戯には申し訳無いがキャンセルの電話を入れよう
とした時
コンコン
ノックと共に入って来たのは小学生にして海馬CO.の副社長
であり海馬の弟モクバだった。
モクバは兄が携帯電話を持っているのを見て
「兄サマ もしかして遊戯にキャンセルの電話を入れる気なの?」
心配そうな弟の表情に海馬は
「ああ・・・仕方があるまい」
短く返事をすると
「ダメだぜ!!」
モクバは海馬が持っていた携帯電話を取り上げ
「兄サマは遊戯の事何だと想っているの?
従順なロボット?
都合のいい遊びだけの相手?」
「モクバ・・・?」
何故 自分と遊戯の関係にモクバが口を挟むのか解らない
「キャンセルばかりして遊戯に寂しい想いばかりさせていたら
遊戯が冥界に還るかもしれないぜ」
弟のとんでもない発言に海馬は目を見開き
「遊戯が冥界に還るとでも言ったのか!」
焦っていると
「言って無いけど言う可能性が有るって事だよ
それに冥界には遊戯の還りを待ってくれている人だって
居るかもしれないしこっちの世界でも遊戯の事好きだって言う人も居るし
あ〜見えて遊戯はスキだらけだから横から連れて行かれる可能性だっ
てあるんだぜ」
海馬の耳にはモクバが言った
〔遊戯の還りを待ってくれている人だって居るかもしれない〕
が引っ掛かって仕方が無い まぁ思い当たるふしが引っ掛かるのも仕方が無い
海馬の頭の中には、肌の色こそ違えど自分と瓜二つの男がチラつくのだ
きっとアノ男なら遊戯が戻って来るのを待っているだろう
今は大人しく冥界に居るが遊戯が寂しがっていたり悲しんでいたら迎えに
来るかもしれない
否 今迄の事を思い出せば迎えに来られても仕方が無い
目の前の仕事も片付けないとならないしだからと言って遊戯の事をほったらかしにも出来ない