Aquarium-2-
水族館の前には初老と言うにはまだ早い中年ぐらいの
男が細くて背の高い男と中肉中背2人立っていた。
海馬の姿を見つけ深深と頭を下げている
背の高い男が海馬の前に進みでて挨拶をしている
会話の内容からにしてこの背の高い男の方が水族館の
館長で中肉中背の男が飼育員らしい・・・
見た限りは、反対の様な気がする
館内を案内したいと申し出る館長に海馬は
「プライベートだ 案内は必要無い」
「それではごゆっくり御観覧下さい」
男の笑みは消えない・・・
普通なら自分より年下のヤツに命令されるなんて嫌だろう
きっと仕事だと割り切っているから笑みをたえさ無いのだろう
遊戯の身体を自分の方に抱き寄せ館内へ入ると
入っていきなり目に入るのは小さな水槽が組みこまれた壁
水槽内に居るのは小さな魚達
「海馬 どうして小さい水槽なんか設置しているんだ?」
「小魚だと大きな魚の餌になりかねん
それにその生活環境にあわせねばならん」
それ故に小さい水槽に入れていると言うのだ
小さい水槽には、魚だけでは無くクラゲも展示されている
深海に住む魚なんかは、持って来る事の出来ない種類も
居るのでそういう魚は海馬Co.のバーチャル技術で映像で
再現しているのもある
バーチャルと解っているのに見なれない深海の魚に興味を
示し食い入るように見ている
その行動がまるで子供の様に見える
「なぁ海馬なんで深海魚には目が無いんだ?」
「無いのでは無い
一応在るのだが光を必要としない場所に住んでいるので退化
しているだけだ」
深海まで光が差し込まないのでモノを見る必要が無い
「パズル越しで見た時も思ったけど魚っていろんな種類がいるんだな」
「人間もいろんな人種が居るんだ魚だっていろんな種類が居てもおかし
くはないだろ」
そう言って先を促す
通路には、長細い水槽が両サイドに設置させており中には片方の水槽
に細い筒状の様な物と海草が入っている
中に居るのは細長い魚達
筒の中に隠れるかの様にしている魚
よく見ると岩みたいな所にも隠れている魚が・・・
もう片方の水槽には、蛸が壷に入ろうとしている光景や蛸同士の絡み
更に通路の奥に進むと急に視界が広がりまぶしさを感じる
よく見ると天井が特殊ガラスで円形状に覆われおり天井を泳ぐ魚達の姿
が見える
それはまるで水中に居ると錯覚させてしまう
ただ床は、綺麗なタイルが張られており現実味を帯びていた。
それでも遊戯は、天井に見える魚達に感激している様だ
それは、海馬の気持ちを不愉快にさせるのには十分だった。
遊戯の喜ぶ姿が見たかったから水族館を作りオープン前にどうしても見せた
くて連れて来た。
遊戯の喜ぶ姿が見れて満足だったが次第に遊戯が自分を見ない事が許せ
なかった。
折角一緒に居るのに・・・
魚に嫉妬してしまう
その所為か海馬は、遊戯の肩を抱き寄せるとそのまま柔らかい遊戯の唇に
己の唇を軽く触れる程度に重ねた。
いきなりの行動に遊戯は、抵抗する事なく受け入れてしまい
海馬の唇が去った後 顔を紅潮させながら
「海馬!!!こんな所でキッ・・・・キスなんてするな!!」
「貴様が俺を無視するからだ」
シレッとした表情で自分の行動は当然だと言外する海馬
しかしそれが嫉妬からだと解ると
オレが魚ばかり見てるからって魚に嫉妬するなんて海馬って子供じみてるぜ
でもそれが嬉しいなんてオレも大概だよなぁ〜
「海馬 この通路の先ってどうなってるんだ?」
一応 遊戯なりに気を使いながら海馬に通路の先を訊ねると
「この先には部屋が在る
その部屋は、この水族館のメインとなる場所だ」
そして俺が貴様の為に用意させた部屋なのだ
海馬の考える部屋に遊戯は、不安感を抱かずには居れない
特別に設えた部屋で何度襲われた事か・・・それを思いだしてしまうのだ
遊戯の心中を察したのか海馬が
「クククッ・・・そう警戒するな別に貴様を襲う為に作ったのでは無い」
あくまで貴様の喜ぶ顔見たさなのだ
海馬と一緒に来たメインとも言うべき部屋・・・
その部屋には、天井だけではなく床にまで特殊ガラスが張られており
本当に水中に居る気持ちになれる
目の前をゆったりと優雅に泳ぐ巨大な魚
海馬に魚の名前を聞いたらジンベイサメと言う哺乳類だと聞かされた
海には世界最大級の哺乳類も居るらしいが流石にその哺乳類巨大すぎて
水族館には、収まりきらないらしく断念したらしい
不可能を可能とする男でも出来ない事だってあると証明された事だろう
そして大きなマントを広げて泳ぐ様に見えるのがエイ
通路を歩いている時には見る事が無かった魚達がここで見れるなんて・・・
バランスが悪い様に思える・・・
その事を海馬に訴えたら
「魚が何処をどう泳ごうが魚の勝手だ」
天井をガラスで覆われた通路とここは繋がっているらしく魚は好きな様に
好きな場所を泳いでいるらしい
まぁ・・・何処を泳ごうが魚の勝手だけど・・・
それでも目の前の幻想的な世界には驚きを隠せない
そしてそれを作ったこの男の所業にも・・・
「海馬こんな凄い所に連れて来てくれて嬉しいぜ」
遊戯からの滅多に聞けない感謝の言葉に海馬は、驚きつつも
「貴様との約束を何度も破っているからな」
それの償いだ・・・
「約束を破るにしたって理由があっての事だぜ
まぁ寂しいと言えば寂しいけどその埋め合わせは、必ずしてくれてるじゃないか」
「そんなのは、当然だろう」
「ここオープンしたら人がいっぱい来るんだろうな
そうしたらこんな幻想的な光景味わえなくなるな」
だから海馬はオープン前に見せたかったのだろう
そんなささやかな気遣いが遊戯には、嬉しかった。
「ありがとう・・・」
陳腐だと解っていても言ってしまう御礼の言葉・・・
この後遊戯は心行くまで水族館を海馬と一緒に楽しんでいました。
私自身水族館に行ったのって小学生以来なんだよね・・・