約束-1-

約束−1−

 

-日曜日-

カタ・・・

二つ折りに閉じられる携帯

遊戯から零れる溜息・・・

「海馬君からのメール?」

「ああ・・・」

「もしかしてまたドタキャン?」

コクン・・・

 

寂しそうなもう一人の僕・・・

 

先日海馬からデートの誘いメールが来た

そして今日反故のメールが来た

「海馬からのドタキャンなんて珍しくもないぜ」

そう何時もの事・・・

海馬からのデートの誘いメールも反故のメールも

だから今更何の期待も希望も無い

寧ろそんな感情なんてあったら拷問だぜ

「多分仕事が忙しいんだぜ

海馬の双肩には従業員の生活や子供達の夢と期待が

圧し掛かってるしそれを守らないといけないからな」

 

・・・もう一人の僕・・・

従業員の生活は仕事で守れてもでも心から望んでいるたった

一人の相手の心とかを守らないで子供達の夢とかは、守れないよ・・・

海馬君にとって君って存在は、何なの?

 

「相棒も今日は城之内君とデートなんだろ?」

「うん・・・でも城之内君からメールが来ないんだ」

遊戯同様<遊戯>も携帯の画面を見つめている

「珍しいな相棒達が時間とかの待ち合わせしてないなんて」

「う〜ん・・・夕べ君にも話したでしょ

もしかしたらコンビニのアルバイト急に入らないといけないかもしれないって」

確かに夕べ相棒が『城之内君がバイトしてるコンビニ

この前一人辞めたらしいんだ・・・明日のデートキャンセルになるかもしれないん

だ』言ってた。

♪〜♪〜

急に鳴り出す<遊戯>の携帯

画面を見て一言

「やっぱりダメだって・・・」

そう言って城之内からのメールを遊戯に見せて来る

 

オレは知ってる

オレが海馬からの反故メールを受け取って落ち込んだ時

相棒が城之内君にメール出したの・・・

それは、きっとデートのキャンセルなんだろう

そして城之内君は相棒宛てに自分がキャンセルした様に見せかける為のメー

ルを出して来たのだ。

海馬に逢えないオレに気遣って・・・

気遣いは嬉しいけど折角のデートなのに楽しんでくればいいのに

それなのにオレは「オレに気を使わず行って来いよ」って言ってあげられない

今日一日相棒とデュエルを楽しんだりテレビゲームをしたりして過ごした。

 

-海馬Co.-

休日出勤で会社に来ていたモクバだったがたまたま磯野に逢い

今日兄が出勤していると聞き社長室へ

「兄さま今日って遊戯とのデートじゃなかったの?

もしかしてまたキャンセルしたの?」

「仕方あるまい やらねば為らない事は山程あるんだ」

確かにそうだけど・・・

遊戯・・・楽しみにしていたのに・・・

 

兄には内緒でモクバは時折 武藤家に遊びに行っていたのだ

そこでモクバは遊戯に兄と逢っているのか聞いた事が在ったのだ

海馬に逢えるのを楽しみにしつつも何処か諦めモードの遊戯

海馬に逢えない事を愚痴る事無く『仕方が無い』と言う

そんな遊戯に「我がまま言ったて罰なんかあたらないぜ!」と言ったら

「海馬に迷惑かかるだろ?」と寂しそうな笑顔

遊戯・・・兄さまと逢わなくなって半年近くになるんじゃ・・・

<遊戯>に聞いた話だとメールの遣り取りだけで電話もしてないらしい

「兄さま遊戯に電話とかしたら?」

「メールだけで十分だ」

素っ気無い言葉・・・

本当は海馬だって遊戯に逢いたいのだ

そして声だって聞きたい

だが仕事と遊戯を両天秤にかけたら・・・

俺の事を理解している遊戯なら解ってくれると思うから仕事を選ぶ

 

遊戯の心に潜む寂しさに気付く事無く





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